あなたがビットコインやイーサリアムなどの仮想通貨に投資しているなら、2つの真実をお伝えしたい。まず、あなたの資産は泥棒の標的だ。そして、盗まれてしまったら取り戻すのは困難だ。
仮想通貨の取引所は驚くほど頻繁にハッキングされている。8月には、中国の分散型金融プラットフォームPoly Networkからサイバー犯罪者が6億1000万ドル相当の多様な仮想通貨を盗むという大規模な事件があった。ハッカーは最終的には資産を返却した。
資産が返却されたのは異例のことだ。日本のビットコイン取引所Mt. Gox(マウントゴックス)は2014年、4億5000万ドル相当のビットコインなどを盗まれ、破産に追い込まれた。ブロックチェーン分析企業CipherTraceの報告によると、1月~7月までにハッキング、盗難、詐欺、不正流用によって生じた仮想通貨関連の損失は6億8100万ドルに上るという。このペースが続けば、2020年の19億ドルよりは少ないが、2021年の損失は11億7000万ドルになる。
たとえ定評のある取引所に仮想通貨を預けたとしてもハッキングされる可能性はあり、失った資産を取り戻すには大変な苦労に直面することになる。取引所大手のCoinbaseは、数千件ものカスタマーサービス関連の苦情を受けたと報じられた後、9月に電話サポートを立ち上げたが、資産を失った不幸な顧客を満足させることはできなかったようだ。
Coinbaseはコメントの求めに応じなかったが、同社のウェブサイトには、ストレージシステム全体で保持しているデジタル資産の一部を、データ侵害を含む盗難による損失から守る「犯罪保険」が適用されると記載されている。
さらに、同社は11月3日、顧客が手数料なしでデジタル通貨を購入、販売、交換できる新たなサブスクリプションサービスのテストを開始したことを認めた。ウェブメディアのThe Blockは、このサービスには追加のアカウント保護機能や「優先電話サポート」などの機能もあると報じた。
もちろん、誰かが交換所ではなく、あなたのウォレット(仮想通貨を保存するためのソフトウェアあるいはハードウェアのこと)をハックしたら、こうした機能は何の役にも立たない。分散型である仮想通貨は誰の管轄でもないのだ。苦情を言いたくても、苦情を言う相手は見つからない。
仮想通貨を奪われるよりもっと悪いことがある。盗まれた資産がブロックチェーン(取引の公開記録を作成することで仮想通貨を支える技術)上を移動するのを指をくわえて眺めることだ。
オンラインIT学習を手掛けるITProTVの共同創業者、Don Pezet氏は「盗まれた資産は目の前にあるのに、どうすることもできない。誰かがあなたの車を盗んで、それをあなたの家の前に駐めているようなものだ」と語った。
最善の方法はもちろん、盗まれないようにすることだ。つまり、なるべく多くの資産をインターネットに接続されていない「コールド」ウォレットに移動しておく。そして、オンラインでホストされている「ホット」ウォレットに残した資産は、可能な限り厳重に守ることだ。
最悪の事態が起きても、希望を捨てないように。専門家からの助言を紹介しよう。
侵入されたウォレットに何か残されているなら、すべて転送すべきだとPezet氏は語る。ウォレットは削除し、新しいウォレットを作成する。
ZeroFoxのシニア脅威インテリジェンスアナリスト、Andrew Gunn氏は「仮想通貨取引用のアカウントに関連するパスワードはすべて、可能な限り早く変更すべきだと語る。メールアカウントも切り替える。アカウントのアクセスに使っている端末が侵入された可能性があるなら、初期化するか、できればもう使わない方がいい。
仮想通貨を預けていた取引所が比較的大きく、著名な場合、助けを得られる可能性は高くなる。迅速に行動しよう。そうすれば、窃盗がどの段階にあるかによるが、取引所は資産を凍結できる可能性があると、Gunn氏は語る。
だが、ほとんどの取引所には顧客を支援する義務があまりないことに注意しよう。仮想通貨を対象とする規制がほとんどない国に拠点を置く取引所もある。仮想通貨を資産とみなさない国もあり、そうした国では当局からの援助を得られる可能性はさらに低いとPezet氏は言う。
盗まれた仮想通貨の奪還に被害届が役立つ可能性は低いが、事件番号や書類を持っていても損はない。参加できる保険請求や集団訴訟があるかもしれないからだ。盗難を深刻に受け止めている証拠があれば、当事者適格が必要になった場合に役立つ。
米連邦捜査局(FBI)と仮想通貨追跡企業が仮想通貨を奪還できたケースもある。例えば、Colonial Pipelineへのランサムウェア攻撃事件では、FBIが仮想通貨追跡の専門家の助けを得て身代金として支払われたビットコイン440万ドル相当分のうち230万ドル分を奪還できた。だが、当局が一般人のためにそこまでしてくれることはなさそうだ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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