ソニーグループは、2022年3月期上期(4~9月)の連結業績を発表した。売上高および金融ビジネス収入は、前年同期比13.7%増の4兆6262億円、営業利益は11.5%増の5985億円、調整後営業利益は10.9%増の6048億円、税引前利益が1.0%減の5663億円、当期純利益が34.8%減の4249億円となった。
ソニーグループ 副社長兼CFOの十時裕樹氏は、「第2四半期は、売上高と営業利益が過去最高を更新した。コロナ禍ではアジアでの生産や物流の影響が大きく、苦慮したが、うまくマネージできた。ゲームビジネスは巣ごもり需要の影響が薄らいでいる」などとした。
セグメント別業績は、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野の売上高が、前年同期比13.3%増の1兆2612億円、営業利益は633億円減の1659億円となった。
「第2四半期は、『PlayStation 5』のハードウェアのほか、自社制作以外のソフトウェアが、巣ごもり需要があった2020年をさらに上回り増収。だがハードウェアと周辺機器の損益が悪化した」述べる一方、「プレイステーションユーザーの総ゲームプレイ時間は前年同期を17%下回っている。そのなかでアドオンコンテンツの売上げが2020年実績を上回ったことは、ユーザーエンゲージメントの質の高まりを示すものと、ポジティブに捉えている」と総括した。
下期には、自社制作ソフトウェアの「Horizon Forbidden West」や「グランツーリスモ7」に加えて、自社制作以外にも大型タイトルの販売が予定されており、「これらの魅力的なタイトルを、より多くのゲームファンに楽しんでいただき、ユーザーエンゲージメントがさらに高まることを期待している」と述べた。
2021年度のPlayStation 5の1480万台を上回る販売計画に変更はないとしながら、「全世界的な物流の混乱や半導体を中心としたデバイスの供給制約などの影響が大きくなっている。PS5のモメンタムを維持し、PS5を待っているユーザーの期待に添えるように、引き続き最大限の努力を続ける」と述べた。
第1四半期のPlayStation 5の販売台数は230万台に対して、第2四半期は330万台。「デバイスの供給不足などの影響もあり、第2四半期は想定よりも台数が少なくなっている。努力で克服し、さまざまな施策を打ちながら、1台でも多く販売できるように最善の努力を続けたい」と述べた。PS5の発売以来の累計販売台数は1340万台となっている。
同社では、約1億人のMAU(Monthly Active Users)を想定しており、PS5は1割強の水準となっている。「ユーザーエンゲージメントという観点では、PS5の売上が即座に影響を及ぼしているとは考えにくい」とも述べた。
また、ファイヤースプライトおよびブルーポイントゲームの買収により、PlayStation Studiosは、16スタジオに増加。開発人員数は2割程度増加。「PlayStation Studios全体の開発力の底上げと、PCやモバイル向けへの展開に必要なノウハウの横展開を進める。今後も開発力強化のための積極的な投資を進める」とした。
音楽分野の売上高は前年同期比29.0%増の5265億円、営業利益は161億円増の1060億円。「第2四半期はストリーミングサービスが高い成長となり、増収となった。モバイル向けゲームアプリや、アニメを含む映像メディアプラットフォームからの利益貢献は2割台半ばになっている」とした。
ストリーミング需要の成長は、海外市場が顕著であり、それを束ねるソニーミュージックグループの2021年度の売上高および調整後営業利益は5年連続で過去最高を更新することになるという。
「アーティストの発掘、育成を強化してきたことで、継続的にヒットを創出できている。第2四半期は、Spotifyのグローバル楽曲ランキングの上位100曲のうち、平均38曲がランクインしている。ADELEが6年ぶりにリリースした「EASY ON ME」は、Spotifyでの1日あたりのストリーミング再生回数が過去最高を記録した」という。
また、「アーティストの幅広いニーズに応えることができるグローバルなエコシステムがあること、ソニーグループの一員であれば、ゲームや音楽の領域においてもクリエイティビテリィを発揮する機会を得られることが強みである。さらにアーティストの財務的支援など、アーティストコミュニティに支持されるさまざまな施策も強化してきた。これが好調な業績を支える基盤になっている」と述べた。
映画分野の売上高は前年同期比28.7%増の4654億円、営業利益は29億円減の570億円。 「第2四半期はテレビ番組制作やメディアネットワークが増収。だが、劇場再開に伴う広告宣伝費の増加により減益になった」という。
米国を中心に、大型作品の劇場公開が徐々に再開されており、10月に公開した「ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ」は、公開3日間での米国興行収入が約100億円(9010万ドル)と、コロナ禍では最大となるオープニング成績を達成。今後も「ゴーストバスターズ/アフターライフ」や「スパイダーマン:ノーウェイ・ホーム」などの劇場公開を予定している。
「その一方で、『ホテルトランシルバニア』や『トランスフォーマニア』といった、コロナ禍で多くの観客動員が見込みにくいファミリー向け作品は、動画配信事業者へのライセンスに切り替えて、2021年度に収益化する。各作品の長期的な価値の最大化を考慮した柔軟なリリース戦略により、環境変化に適切に対応する」とした。
さらに、ソニー・ピクチャーズ エンタテインメントが、インドのメディアコンテンツ企業であるジー・エンターテインメントとの合弁に向けた取り組みを開始。「インドは若い世代を中心にした経済基盤が急拡大している。有料テレビ放送が成長を続けている世界最大の市場でもあり、通信インフラの整備により、デジタル配信サービスでも急速な成長の機会が見え始めている」と前置きし、「第2四半期は、インドでの事業がメディアネットワーク売上げの4割弱を占めている。2021年度の成長領域として、インド放送事業の収益基盤とコンテンツ資産を生かして、デジタル配信サービスを強化していくことを戦略の柱に据える」と述べた。
音楽分野と映画分野にまたがるアニメ事業については、アニメ配信のCrunchyrollの買収を完了したことを報告。「200以上の国と地域で1億2000万人を超える登録ユーザーと、500万人以上の有料会員を持つ世界最大級のアニメ専門DTC(Direct to Consumer)サービスである。日本アニメの海外市場は2014年以降、年平均約20%の成長率を維持している。FunimationとCrunchyrollとの経営統合により、さらに充実した配信サービスを通じて、魅力的なコンテンツを届け、世界中のアニメファンに最も支持される配信事業者になることを目指す」と述べた。
エレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)分野の売上高は前年同期比29.4%増の1兆1582億円、営業利益は999億円増の1445億円となった。
「第2四半期は、為替やスマホの増収がプラスに影響。製品ミックスの改善も利益に貢献した。東南アジアでのコロナ感染の再拡大により、当社工場の稼働や部品供給に制約が発生し、一部の製品では十分に需要に応えることができなかった。だが、価格維持と高付加価値モデルへのシフトにより、高い収益性を維持した」という。
テレビでは、製品価格は維持できているものの、今後はパネル価格の急激な下落による製品価格への影響が表れると予測。市場の推移を見極めながら、在庫と粗利のコントロールに力を注ぐという。また、半導体を中心としたデバイスの供給制限が顕在化していることから、「そのリスクを、今年度の通期見通しに反映していくことになる」と述べた。
イメージング&センシング・ソリューション(I&SS)の売上高は前年同期比3.3%減の4963億円、営業利益は32億円増の802億円。
「モバイルセンサーは、軟調な中国スマホ市場や、半導体の供給逼迫、東南アジアでのスマホの完成品および部材の生産遅延などの影響はあるが、為替の好影響と費用の抑制効果が出ている。ファウンドリー各社から調達しているロジックウェハーの数量制約と、価格上昇についても、業績への影響を最小化できるように対策をとっている。顧客基盤の拡大は着実に進捗しているが、2022年度に向けては数量の拡大と高付加価値化の実現に必要なロジックウェハーの確保が大きな課題となっている。ファウンドリー各社との交渉を継続しているが、逼迫する需給状況は、2022年度も継続すると予想される」と述べる一方、「AVや産業機器向けイメージセンサーはデジカメ市場の回復や、工場の自動化ニーズの高まりを受けて、想定を上回るペースで市場が拡大している。今後も、イメージセンサー全体の収益安定化に貢献する事業になると期待している」と語った。金融分野の金融ビジネス収入は前年同期比3.5%減の7828億円、営業利益は60億円減の671億円となった。
一方、2021年度通期業績見通しを上方修正。売上高および金融ビジネス収益は8月公表値に比べて2000億円増の前年比10.0%増の9兆9000億円、営業利益は600億円増の前年比8.9%増の1兆400億円、税引前当期純利益は350億円増の前年比0.8%減の9900億円、当期純利益が300億円増の前年比29.1%減の7300億円とした。
セグメント別では、売上高では音楽分野で300億円、映画分野で600億円、金融分野で900億円の上方修正したのに対して、EP&S分野で400億円の下方修正。営業利益では、音楽分野で100億円、映画分野で180億円、EP&S分野で200億円、I&SS分野で100億円の上方修正とした。
なお、2020年までの3年間で実行した1兆4000億円の戦略投資のうち、事業買収に約1兆円を投資したことを振り返り、「これらは2023年度までの3年間で約1800億円の営業キャッシフローが得られると見込んでいる」と述べた。さらに、「これらの成果を、キャピタルアロケーションの原資の一部として投資に振り向け、投資リターンと成長投資の循環を加速する。エンターテインメント領域を中心に投資機会が増加しており、2023年度までの第4次中期計画期間中には2兆円以上の戦略投資を計画しているが、これまでに2800億円を投資。加えて意思決定した案件の総額は約1200億円になっている」とした。
今回の決算会見では、TSMCの日本における半導体工場建設についても言及。「ソニーは、ロジックウェハー生産のほとんどを外部委託しており、長期に渡る世界的な半導体不足が予想されるなか、ロジックウェハーの安定的な調達は重要な事業課題となっている。TSMCの工場建設は、この課題の解決策になることから、TSMCおよび経済産業省と協議し、日本の新工場を、ロジックウェハーの調達先に加えること、ソニーが持つ日本での半導体工場の運営ノウハウを生かし、新工場の立ち上げに協力していくことなどについて検討を進めている。世界最先端の半導体生産技術を持つTSMCとのパートナーシップをより強めていくことにも意義がある。半導体の安定供給は日本の産業界全体にプラスになる。協力できることは協力したい」と語った。
だが、出資の可能性などについては、「現在、協議中であり、決定していることはない」として明言はしなかった。
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