パナソニック エレクトリックワークス社は10月20日、光の動きなどで人に「回遊」や「滞留」などを働きかける屋外向け照明演出手法を発表した。「アフォーダンスライティング」として、明るく照らすだけでなく、街の賑わいを作るような明かりを提案していく。
アフォーダンスとは、与える、提供するなどの意味を持つ「アフォード(afford)」から付けられた造語。環境の要素が人間や動物に影響を与え、感情や動作が生まれることを指す。アフォーダンスライティングは、照明の光に動きや明暗、色などの変化を加えることで、空間のにぎわい感を演出しながら、人の心理や行動に働きかける照明の演出手法。光の動く方向に歩いたり、明滅を繰り返すことでその場にとどまったりと、人が心地よく感じつつ行動につながる屋外照明を目指す。
今回発表した回遊では、人の歩行速度に合わせて進行方向に光が流れる演出を使用。「光の動く方向に歩きたい」という心理を捉えることで、回遊を促す。滞留では、明るくなったり暗くなったりする明滅をゆっくりと繰り返すことで、心地よさを演出。アフォーダンスライティングを体験した人に実施したアンケートによると、回遊では「光の動く方向に歩きたい」「楽しい」「興味がある」、滞留では、「飽きない」「とどまりたい」「心地よい」と感じる人が、一般的な屋外照明に比べ、多かったという。
パナソニックでは、道路、街路、スポーツ施設などに対し屋外照明機器を提供。昨今ではLEDの特徴をいかし、長寿命や小電力をはじめ、波長のコントロールによって夜間でも見やすい照明を提案したり、点光源を使うことで、さまざまな設備に対して最適な照明空間を届けたりと、新たな特徴を持つ商品を用意している。その中でも伸長しているのが屋外のライトアップ演出事業で、空間全体のプランニングから製品納入、演出プランの提案まで含めて事業を手掛ける。
アフォーダンスライティングは、屋外照明に演出制御技術を組み合わせることで実現するもの。パナソニック エレクトリックワークス社ライティング事業部プロフェッショナルライティングBU屋外・調光事業推進部部長の横井裕氏は「屋外照明は動きのない固定した光が中心だったが、さまざまな演出制御技術を組み合わせることで、いままでにできなかった多様な光の演出ができるようになった。これをいかし、人の行動に働きかける演出事業を目指していこうと考えている」と背景を話した。
一般的な屋外照明に比べ、アフォーダンスライティングでは、心を動かし行動をいざなう光に変えるため、デザイン部門がアイデア出しからプロトタイプの作成、検証までを担当。「『心に働きかける動的な光』を再現するため、ろうそくの炎や焚き火をイメージし、心地よい『ゆらめき』を表現できるよう感覚的なものを起点として、動きや明滅のパターンなどを作り上げた。今回発表した回遊と滞留は、屋外における人の行動は、留まると移動するの2つに大別される。その時にどんな明かりが必要かを考えて作り、検証した」(パナソニック エレクトリックワークス社技術本部デザインセンターライティングデザイン部部長の須藤和哉氏)と開発の経緯を明かす。
パナソニックでは、11月5日から12月12日(12月8日を除く)まで、京都府京都市にある二条城で、クリエイティブカンパニーのワントゥーテンが主催する「ワントゥーテン 二条城夜会」に特別協賛企業として参加。照明機器の提供やライトアップ演出を手掛けるほか、イベントの一部にアフォーダンスライティングを導入し、効果検証を実施する。
会見で公開したアフォーダンスライティングは、屋外照明とコントローラーを組み合わせ、光の明滅や動きを制御。実際に回遊に設定した照明の下を歩いてみると、明るい場所に行きたいという気持ちがわき、逆方向に歩くと歩きづらいと感じた。
パナソニック エレクトリックワークス社では、街づくりをする上で求められる「賑わい」を照明の力で作り出し、ナイトタイムエコノミーを創出する考え。回遊、滞留に加え、今後は任意の方向への訪問を働きかける「誘導」などの新たな演出コンテンツの開発も進め、目的に合わせて活用できるよう順次展開していくとのこと。2025年度に、アフォーダンスライティングを屋外照明販売構成比率の30%以上まで引き上げたいとしている。
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