「メルカリなどのフリマアプリでは、お得に安くていいものが手に入る。もう普通の店で買う気がしない」という女性を知っている。「農家の人が直送で野菜を売っていたりするし、高級コスメが安く手に入ったりする。口紅とか使いかけでも色が気に入らなくて売る気持ちは分かるし、特に問題ない」と言い切る。
しかし、実際は問題あるものが売られていることがあるようなのだ。どのような問題があり、どのような点に注意すればいいのだろうか。
2020年10月、フリマアプリで偽の化粧品を販売していた少年(18)が書類送検された。少年は、高級化粧品SK-IIの空き瓶、空き箱を購入した上で、瓶に100円ショップの化粧水を詰め替えて、本物としてフリマアプリに出品、販売していたのだ。
少年はフリマアプリ4種類を使って70件ほど同じ手口で販売したことを自供している。少年は化粧品を新品あるいは中古品などとして販売しており、容器や箱が本物であれば、騙されてしまう人も多いだろう。しかしSK-IIは特徴的な匂いがするので、偽物とすぐに気付けたというわけだ。
フリマアプリを調べると、ブランド化粧品、ブランド香水、高級酒などの空き容器が大量に出品、落札されている。化粧品や香水などは容器の見た目もきれいなので、飾ったりコレクションしたりというニーズもあるだろう。売る側としても、空の容器などただのゴミにしかならないのに売れるというのだから売りたいのは当然だ。しかし、明らかに挙動がおかしなユーザーもいる。
フリマアプリのある化粧品欄を見ていたところ、ただの空き容器を「○○様専用」と取り置きしてもらってまで購入しているユーザーがいた。取り置きとは、手持ちの現金やポイントがないけれど買いたい時などに、出品者にお願いして売らずに取っておいてもらうというものだ。
不審に思ってさらに見ていくと、同じブランドの他の空き容器に対しても、コメント欄で値下げを依頼、購入している。どうやら、同じブランドの空き容器を大量に落札しているようなのだ。そのユーザーの出品を見ると、何と空き容器を購入した同じブランドの化粧品を大量出品していた。しかもすべて、「新品未使用だが箱はない。ボトルに傷があるため格安で出品」としている。
売るほどあるものの空き容器を落札する意味はないだろう。これだけで偽物を出品しているとは断定はできないが、少なくとも怪しんだ方がいい事例と言っていいのではないか。ちなみにその空き容器は1本600円前後で販売されており、同じブランドの「新品傷あり」の方は4600円前後で販売されていた。
冒頭でご紹介した女性は、「コスメは高いから安くお試しして気に入ったら買いたい」派だ。サンプル品のようなつもりで気になるコスメを手に入れ、お試ししているという。
一方で、フリマアプリで偽物を手に入れてしまったと感じているユーザーは少なくない。「フリマアプリで買ったら、口紅の色味がデパートで買った時と違っていた」「お金がないけどお気に入りの化粧品が買いたくて、フリマアプリで見つけて喜んで落札したら、箱と容器のシリアルナンバーが違っていた。傷もついていたし、騙されたと思う」という声は実際にあるのだ。
さらに、化粧品などは開封すると雑菌が入ることがあり、健康被害や肌トラブルなどにつながる可能性もある。そもそも化粧品は薬品と同様、厳しい衛生基準で製造・販売されるものだ。特に中古のコスメなどは、どのように利用され、どのような保存状態だったかもわからないことを考えると、避けたほうが安心だろう。
フリマアプリで不用品を販売して、お小遣いにすることは当たり前となっている。ゴミを減らすこともでき、賢い行動だ。しかし一方で、個人間取引なのでこのようなトラブルや問題も起きている。
偽物や品質が劣化したものなどをつかんで肌トラブルなどにつながるリスクを考えると、少なくとも化粧品など直接肌につけるものは、正規店で購入したほうが良いのではないだろうか。少なくとも万一のときに返品・返金対応してくれるようなプラットフォームを利用し、レビューなどから相手が信頼できる人物かを確認した上で、細心の注意を払って購入すべきだろう。
高橋暁子
ITジャーナリスト、成蹊大学客員教授。SNS、10代のネット利用、情報モラルリテラシーが専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育に詳しい。執筆・講演・メディア出演・監修などを手掛ける。教育出版中学国語教科書にコラム 掲載中。元小学校教員。
公式サイト:https://www.akiakatsuki.com/
Twitter:@akiakatsuki
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