女子がインターネットを利用できないと、政府にとっては巨額の経済損失につながる。これまでは推測の域を出なかったその正確な額が、算出された。
現地時間10月10日、Tim Berners-Lee氏のWorld Wide Web Foundationと、その下部組織であるAlliance for Affordable Internetが、新しいレポートを発行した。そのレポートの計算によると、過去10年間に、低所得および中所得の32カ国では、女性のインターネット利用を促さなかったことによる損失が1兆ドル(約113兆円)にのぼるという。該当する国としては、インド、ナイジェリア、フィリピンなどが挙げられている。
デジタルデバイドは世界的な問題になっているが、インターネットにアクセスできる可能性が低いグループは、今も間違いなく存在する。そうしたグループは、地域、性差、人種、またはその3つすべてで定義することができる。低~中所得国の女性がインターネットを使える可能性は、同じ地域の男性と比べてさらに低くなる。
「このレポートで、性による不平等が人類全体にとって、いかに高くつくかが明らかになった」。世界銀行のデジタル開発担当ディレクターを務めるBoutheina Guermazi氏は、声明でそう述べている。「コロナ禍からの復興を図る計画の一環として、回復力のある経済を築こうとする政府は、デジタルのジェンダーギャップを埋めることを最優先事項の1つにすべきだ」
World Wide Web Foundationのレポートで挙げられた32カ国の中でインターネットにアクセスできるのは、男性では全体のほぼ半数に達するのに対して、女性では3分1をわずかに超えるにすぎない。デジタル接続は、私たちの生活でますます中心的な役割を果たすようになっているが、こうした格差が時間とともに縮まっている気配はない。新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行によって、リモート学習や遠隔医療などあらゆる物事にとって、家庭からインターネットを利用できることがいかに重要かが明らかになった。World Wide Web Foundationのレポートによると、過去10年の間に、インターネットを利用できる男性と女性の格差はわずか0.5%しか縮まっていない。
女性がインターネットを利用できないということは、その多くが教育や雇用の機会を奪われているということだ。その結果、女性は貧困などの劣悪な状況に置かれがちになり、医療をはじめとする各種支援も受けられない。これだけでも、政府がジェンダー格差の解消を試みる理由としては十分なはずだが、実際には必ずしもそうなっていなかった。
今回のレポートでWorld Wide Web Foundationは、デジタル上のジェンダー格差がもたらすコストを、遠慮のない経済用語で指摘している。各国政府にこの問題を真剣に考えてもらう後押しになるのを期待してのことだ。レポートの計算によれば、今後5年間にデジタル上のジェンダーギャップを埋められれば、調査対象となった国々の経済に5240億ドル(約59兆円)もの経済効果を見込めるという。
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