Facebookは10月6日、世界中への公平なインターネットアクセスの提供を目指す「Facebook Connectivity」の最新状況を発表した。
Facebook Connectivityでは、2013年からさまざまなパートナーとともに、通信接続容量の拡大、高速化といった技術革新に取り組んでいる。
同日には、大西洋を横断する同社初の24ファイバーペア光海底ケーブル、光ファイバーケーブルを電線に巻き付けるロボット「Bombyx」、光ファイバー並みのインターネット接続を無線で提供する「Terragraph」などの情報をアップデート。Facebook Connectivityのバイスプレジデントを務めるDan Rabinovitsj氏は、「(現在は)3億人以上へ高速インターネットアクセスを提供してきた。3億人のさらにその先の10億人のため、安価で高品質なインターネットアクセスを実現していく」と語る。
ほかの通信と比較して1000倍以上の帯域幅に対応できる光ファイバーケーブルは、敷設に多額のコストが発生する技術でもある。強風や砂漠の熱風といった厳しい気候条件に耐えうる安価な素材も不足しており、2019年時点では世界の70%以上の人々が光ファイバーから10キロメートル以上離れた場所で生活していたという。
光海底ケーブルの改良と敷設地域拡大への投資を続ける同社は、従来2~8ファイバーペアの光ファイバーケーブルで構成していた大西洋横断ケーブルを強化。アフリカとアジア、欧州を結ぶ世界最長の海底ケーブルシステム「2Africa Pearls」を基盤に、24ファイバーペアの光海底ケーブルシステムを敷設した。
2000年代初めに敷設された大西洋横断ケーブルと比較すると、200倍の毎秒0.5ペタビット(50万ギガビット)の通信容量で欧州と米国を結べる。最大30億人へインターネットアクセスを提供する一方、従来の銅導体の代わりにアルミニウム導体システムを活用するなど、構築にかかるコスト削減にも配慮する。
海底ケーブルの電力供給方法の改善にもアプローチしている。海底ケーブルの通信容量は、海岸から約50マイル(約80.5キロメートル)ごとに設置する中継機が供給できる電力量に制限される。ケーブルに設置したすべての中継機へ海岸からの電力供給が必要のため、欧州から米国まで7000キロメートル以上の距離を結ぶ大西洋横断ケーブルの場合、非常に長い電源コードが必要だった。
この課題解消に向け、海岸から遠く離れた海上から中継機へ電力を供給できるブイの研究を進めている。波力エネルギー変換装置とソーラーパネルを組み合わせるなど、環境に配慮した手法で電力を供給する方法を模索中だ。
また、不測の事態が起きてもネットワークの可用性を確保できる海底ケーブルルートの予測モデリングツールの開発など、ケーブルの敷設方法や場所へのアプローチも続ける。大西洋間全体の通信容量の70%拡大を目指すという。
海底ケーブルが海岸に到達したあとの、回線をコミュニティへ引き込む部分とも向き合っている。
現在のファイバー敷設方法にある、多くの人手とコストがかかるという課題を解決すべく、架空ファイバーロボットのBombyxを開発。世界の多くの道にある鉄塔の最上部を通う、中圧線へのファイバーの巻き付けという敷設方法を模索する。
重量や強度、自律的な移動への改良を重ねており、最終的には多数の障害物を自律的に避けながら、1キロメートルを超える長さのファイバーを1時間半ほどで敷設できるようにする予定。取り組みはまだ初期段階ながら、エンジニアたちはその潜在的な効果を楽観視していると伝えている。
各コミュニティにファイバーを届けたあと、各家庭などへの送信に貢献する技術が、2015年から開発する同社のTerragraphだ。人口が密集した都市部や光ファイバーの敷設が難しい地域向けの技術で、街灯や屋根に取り付けたノードでマルチノードネットワークを構成し、必要に応じて信号の経路を変更可能な回復力の高いメッシュを構築する。建物の足場などの障害物があっても、提供する通信容量が減らず、ギガビットの速度かつワイヤレスでインターネットにアクセスできる。ファイバー網構築よりも短期間で導入可能で、光ファイバー並みのインターネット接続を、家庭や企業へ無線で提供できるというものだ。
現在では5社のパートナー企業が、TerragraphのOEM製品を3万基以上出荷している。例えばアラスカ州アンカレッジでは、CambiumNetworksと提携したAlaska Communicationsが、ダウンロード速度1ギガビット、アップロード速度100Mbpsのネットワークの6500世帯以上への提供に活用している。
FacebookでCTOを務めるMike Schroepfer氏は、「接続性を持てていない人が世界中にたくさんいる。何十億の人々がブレイクスルーを待っている」とコメント。昨今話題の新しい仮想空間「メタバース」を始めとするこれからのデジタル体験向上のため、より高速で高信頼性、かつ安価なインターネットアクセスを増やし、すべての人々が利用できるようにする必要があると話した。
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