NTTは9月28日に記者会見を実施、NTTグループの経営スタイル変革と新たな環境エネルギービジョンを打ち出した。
NTTの代表取締役社長である澤田純氏はまず、経営スタイル変革の考え方について説明。デジタルトランスフォーメーション(DX)による業務変革や、労働環境の整備と見直しを進め、リモートワークを基本とする業務スタイルへの変革を図るとしている。
その具体的な取り組みとして澤田氏は10の項目を挙げている。主なものとしては、業務面ではクラウドベースシステムやゼロトラストシステムの導入、紙使用の原則廃止、制度面ではオフィス環境の見直しや女性の管理職、役員登用の推進、ジョブ型人事制度の拡大、そして環境面ではリモートワークを基本とすることでの転勤や単身赴任を不要とする働き方、大都市圏への一極集中から地域へ組織の分散化を図ることなどが挙げられる。
またNTTは、年初に利害関係にある総務省幹部への接待や大臣との会食などが報じられて問題視されたこともあり、170件以上のリスクを洗い出し、ステークスホルダーとの適切な関係を構築するといった「コンダクトリスクなどを考慮したガバナンスの充実」も、取り組みの1つに挙げている。そのリスクの中には「会食の問題は当然入っている」(澤田氏)とのことだ。
さらに澤田氏は、NTTグループの新エネルギービジョン「NTT Green Innovation toward 2040」についても説明。同社は2020年5月に「環境エネルギービジョン」を掲げているが、新たなビジョンではさらなる環境負荷削減とイノベーションによって、環境負荷をゼロにしながらも経済成長を実現するという、相反する目標の達成を目指すとしている。
具体的には2030年までに温室効果ガスを2013年度比で80%削減するとともに、データセンターやNTTドコモのモバイル事業でのカーボンニュートラルを達成。2040年にはグループ全体で完全なカーボンニュートラルを実現するとしている。
その温室効果ガス排出量の削減方法として、継続的な省エネへの取り組みで10%、再生可能エネルギーの拡大で45%を削減するとのこと。再生可能エネルギーは2040年に、2020年対比で約7倍に拡大していくとのことで、そのうち半分は、再生可能エネルギーの発電などを手掛けるNTTアノードエナジーなど、NTTグループが所有する電力で賄うとのことだ。
また、NTTが実現に向けて取り組みを進める光技術を主体とした次世代ネットワーク「IOWN」を2020年代中ごろより導入して排出量をさらに45%削減し、カーボンニュートラル達成を目指す方針のようだ。澤田氏は通信以外の分野にもIOWNの拡大を進めることにより、国内で4%、海外で2%の温室効果ガス削減に貢献できるとも話している。
そして澤田氏は、一連の取り組みが2023年度の業績に与える影響についても説明。経営スタイルの変革で2000億円以上のコスト削減を見込む一方、新たな環境エネルギービジョンのコスト影響は軽微としている。ただし2030年度には再生可能エネルギーの開発や設備運用コストが上乗せされ、約100億円のコスト増が想定されるとのことだ。
記者会見ではさらに、NTTドコモのカーボンニュートラル実現に向けた取り組みについて説明した。
同社の代表取締役副社長である廣井孝史氏は、まず携帯電話事業と環境の関係について説明。携帯電話はリモートワークの実現などで環境負荷の低減に貢献する一方、基地局やキャリアショップなどさまざまな場面で消費する電力が大きく、その分多くの二酸化炭素(CO2)を排出しているとのこと。具体的にはスマートフォン1台で年間88kgのCO2を排出する計算となり、国内の携帯電話端末1億8000万台が排出するCO2は、年間で自動車1000万台分に達するという。
それだけ通信業界は環境問題に対する責任が大きいことから、NTTドコモも積極的にCO2削減に取り組み、環境問題解決に向けた支援を進めていくとのこと。その具体的な取り組みは大きく3つあり、1つ目はIOWN技術の活用。2つ目はネットワークの省電力化で、基地局のエリア内に利用者がいない時にスリープさせる機能の高度化などを図っていくとのこと。そして3つ目は再生可能エネルギーの調達拡大で、NTTアノードエナジーと連携して調達を図っていくとしている。
また今後は、販売代理店の協力を得てドコモショップに太陽光パネルを設置するなど、パートナー企業と協力してさらなる再生可能エネルギーの拡大やCO2削減を図っていくとのこと。それら一連の取り組みにより、2030年のカーボンニュートラル実現を目指すとしている。
だが廣井氏は「一般の人の環境問題やCO2削減に対する認識は不十分」と話し、NTTドコモのサービス利用者などにも環境問題解決に向けた活動を求めていく必要があると説明する。その取り組みの1つ目として挙げたのが「グリーン5G」である。
これはNTTドコモが消費する再生可能エネルギーの割合と、総回線数の5G回線比率を一致させていく取り組み。少ないエネルギーで大量のデータを伝送できる5Gのネットワークを再生可能エネルギーで運用することにより、カーボンニュートラルへの取り組みを加速することになると廣井氏は話している。
2つ目の取り組みは「ドコモでんき」を2022年3月に提供開始し、電力事業に参入するというもの。具体的には主に地域電力会社から調達した電力を主体に提供する「ドコモでんき Basic」と、NTTアノードエナジーなどから調達した再生可能エネルギーを用いた「ドコモでんき Green」の2種類の提供、「dポイント」との連携などを明らかにしたものの、詳細は後日改めて発表するとしている。
NTTドコモの電力事業参入は競合他社から大きく遅れる形となったが、このタイミングでの参入について廣井氏は、「生活インフラとなる電力事業への参入検討を続けていたが、環境問題への取り組み拡大を契機として、ドコモでんき Greenと合わせる形で環境問題(の解決)を促進する意味合いを含め、スタートしている」と回答。NTTアノードエナジーとの連携で再生可能エネルギーの安定供給体制が整ったことも、参入には大きく影響しているようだ。
そしてもう1つ、廣井氏はカーボンニュートラルに向けた取り組みとして「カボニュー」を打ち出している。これはカーボンニュートラルに向けた活動などに参加しやすくするプラットフォームであり、CO2を削減する行動を見える化するなどして、ゲーム感覚で楽しくカーボンニュートラルに向けた取り組みを実現できるものにしたいとしている。
また、カボニューはプラットフォームとしている通り、取り組みに賛同する企業や団体などの参加を募り、提供するコンテンツの検討も進めていくとのこと。パートナーと連携して環境問題への積極的な取り組みを進めていきたいと、廣井氏は話している。
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