セイノーによる「社会課題解決型ラストワンマイル」4つの取り組み--オープンイノベーションが鍵 - (page 2)

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地域のお届け機能を担う「ハーティスト」を全国展開

 1つめは、買い物弱者対策だ。住民の高齢化や、郊外の大型店出店で街中の商店街がシャッター街化した結果、食料品に簡単にアクセスできない人々が非常に多く発生しているという。2015年のデータでは、日本全国に824万人の買い物弱者がいると推計されているが、現在では約1000万人まで膨れ上がっているという。

 河合氏は、「買い物弱者は、東京都品川区など都市部も含め、47都道府県に満遍なくいらっしゃる。こうした社会課題を2011年の段階で認識し、物流として解決できる手立てはないかと考えて作った事業が、ココネットという会社」と説明した。

 ココネットでは、「ハーティスト」と呼ばれるスタッフが、食料品を宅配するサービスを提供している。「ネットスーパー型」や「御用聞き型」など、ユーザーがさまざまな方法で購入した食料品を、即日お届けするという。「地域に住む方を採用、教育して、地域の方のためのお届け機能を担っていただく。ココネットは、そんな人たちを日本全国に作っていこうという事業だ」と河合氏は説明した。

 ポイントは、「ドライバー」ではなく、「ハーティスト」という新たな職業を定義した点。宅配未経験者でも、道を覚えるのが得意などのスキルがなくても、すぐに地域内で働けるように、AIを活用した輸配送管理システム(TMS)を導入して、ハーティストをサポートしているという。アプリ上に、配送順の指示や時間管理などが自動的に表示される仕組みで、宅配DXを推進した。「ハーティストたちは、北海道から沖縄まで、おじいちゃんおばあちゃんたちの日々の買い物をお手伝いしている」(河合氏)。

DX
DX

置き配のLOCCO(ロッコ)で宅配クライシス解消へ

 2つめは、EC化率の向上によって激増する宅配便への対応について。2017年には「宅配クライシス」が社会課題になったが、いまだ解消されないまま宅配便数は伸び続けている。そして問題は大きく2つあると指摘。働き手が増えなければ荷物の個数に追いつかないという点と、コロナ禍のリモートワークで在宅率は上がったが、会議などで不在になるケースもあり、不在率は15%のまま変わっていないという点にある。

 河合氏は、「2つの問題を構造的に解決していかなければ、今後も増え続ける宅配便は配送しきれない」と指摘し、置き配サービスLOCCO(ロッコ)を紹介。フェリシモ、NLプラスとジョイントベンチャーを立ち上げて、取り組んでいるという。

宅配クライシス
宅配クライシス

 LOCCOの特徴は、ギグワーカーを活用したところ。ハーティストと同様に、誰もがいつでも配達できる状態を目指して、専用アプリを開発。ギグワーカーは、アプリをインストールするだけで配送員として働ける。従来のような対面での接客、ユニフォームや名札の着用がない「非対面非接触での置き配」だからこそ、担い手確保のハードルを一気に下げられる。「現在、政令指定都市を中心に配送エリアを拡大中。ドライバーさんではない方々が請け負うため配送員は増加、かつ置き配なので不在率も下げられる」(河合氏)。

処方薬の即時配送「ARUU(アルー)」

 3つめは、遠隔診療、遠隔服薬指導の促進。2020年4月10日より一部の規制が緩和され、遠隔服薬指導が行われた一部の処方箋を宅配することが許可されている。河合氏は、処方薬配送サービス「ARUU(アルー)」について、「調剤薬局とともに、当日中にお薬がご自宅まで届くというような、機能を整えている」と紹介した。

 それまでは遠隔で診療と服薬指導を受けても、処方薬は調剤薬局まで自ら出向いて受け取らなければならず、高齢者にとっては待ち時間が長いことも苦痛だった。こうした社会課題の解消に取り組んでいる。

過疎地域の次世代インフラ「SkyHub」ドローン配送前提で構築

 4つめは、ドローン配送を活用した過疎地域対策。ドローン技術系スタートアップのエアロネクストとともに、山梨県の小菅村や北海道の上士幌町で、新スマートサプライチェーン「SkyHub」を構築している。

 SkyHubとは、地域に「ドローンデポ」を設立して、地域住民宛に届く荷物やココネットなどの買い物代行サービスを提供して買い揃えた商品をそこに集約。多様な配送手段で個宅に届けていくという、まさに次世代インフラと呼べるもの。配送手段は、共同配送、有償運送、路線バスなどとの協働による貨客混載のほか、ドローンによる無人オンデマンド配送も視野に入れる。いま目を引きがちなドローンだが、あくまで配送手段の1つと位置付けた構想がユニークだ。

 「たとえば小菅村は人口約700人。荷物の個数は少なくとも、トラック1台とドライバー1人を向かわせるため、運送会社にとっても厳しい配送を強いられる。同業での共同配送は各社にとってメリットが大きいはずだ。また、SkyHubの地域実装で生活の利便性が向上すれば、若い方が平日はリモートワーク、週末は家族で大自然を満喫するといった働き方も可能になり、過疎地域の継続的な維持につながる」(河合氏)

 そして河合氏は、エアロネクストのドローンが山を超えて、荷物を配送する動画を流した。ドローンは、離陸地点であるドローンデポから自動的に飛び立ち、予め設定されたルート通りに自動飛行し、着陸地点であるドローンスタンドに自動的に降り立つと、荷物を切り離して再び離陸、自動で最初の離陸地点へと戻っていった。機体サイズは横幅約1.2mで、80サイズ・5kgまでの荷物を搭載できるという。

 「まだテストの段階ではあるが、毎日ドローンが飛んでいるのは、日本でも小菅村だけではないか。すでに村の方は、ほとんどドローンを意識することなく生活をしていらっしゃる。小菅村では、村内の8集落に1つずつスタンドを設置して、ご自身で荷物を取りに行っていただくことになるが、上士幌町であれば庭も広いので、個人の庭先に届けるということも実現する見込み。2022年の規制緩和を見据えて、現在はオペレーションの標準化に取り組んでいる。自治体視察も多く、さまざまな検討も進んでいる。実際にやってみて出てきた課題を1つ1つ丁寧に乗り越えて形を作っていくことが大事だと思う」(河合氏)

 最後に河合氏は、「それぞれの取り組みは小さくても、それをまずは実現させて横展開させていきたい。一緒に取り組んでいただけることがあれば、ぜひ積極的にお声かけいただけるとありがたい」と話して講演を締めくくり、視聴者からの質疑応答に対応した。

■質疑応答

 「ドローン、やっぱり映像を見ると違いますね」と、モデレーター藤井の声かけに、「みなさん、好きですよね」と河合氏が笑顔で答えて、質疑応答に移った。まずは藤井からいくつか質問を行った。

――ドローンは、1日何件くらい飛んでいますか?

 現在の規制では、発着地点両方ともに人が監視している必要があるものですから、いまは、1日あたり約10運行をベースにやらせていただいています。

――台風の日はさすがに難しいのでしょうか?

 そうですね。台風の日や大雨の日は厳しいです。現在の機体は風速10m/sくらいまでは飛べると聞いていますが、我々としてはいろんな環境下で飛ばしながら、経験を積んで、耐風性能についても技術開発を進めていければと思っています。

――あと、ドローンの墜落事故はないのか、音もそれなりに大きいのでは、なども気になりますがいかがですか?

 先ほど申し上げた通り、すでに村の方にはほとんど日常の光景になってしまっていて、私の方がよっぽど気にして上ばかり見てるんですけど、ドローンの社会実装において非常に重要な「社会受容性」は、危険性なども丁寧に説明させていただいて、かなり高まってきたなと思います。

 墜落も当然考えられることや、落ちるにしても安全な場所に落ちるようプログラミングされていて、安全性が担保されていることなどをちゃんと説明していくこと。音についても実際の飛行を見ていただいて、どれくらいの音がするのかを感じてもらうことなどは、重要と考えています。

――ドローンをはじめ、置き配やギグワーカー活用など、ユニークで斬新な新規事業をどんどん作って、かつそれを実際に稼働させていますが、実現の秘訣は何でしょうか?

 我々の本社は岐阜県大垣市で、ラストワンマイルなどの新規事業のチームは東京なので、ある意味“出島”で取り組んでいますが、私ども独自でというより、いろいろなパートナー企業さんと一緒に、オープンイノベーションで全ての案件を進めていることが大きいです。そして、アプリを開発しているNLプラスさんしかり、ドローンのエアロネクストさんしかり、業務委託で任せきりではなく、完全にワンチームで、ハンズオンで、一緒に汗をかいて切磋琢磨することで、力をいただいていると思っています。

――今日のカンファレンスのテーマはスマートシティですが、物流と掛け合わせて、今後チャレンジしてみたいことはありますか?

 いま、「フィジカルインターネット」ということが言われていますが、旅客と物流、地域の物流を俯瞰的に見て、誰が物を動かすのがいいのか、誰が人を動かしていくのがいいのか、ニーズにどう答えていくのか、といったことが非常に多様化しているので、業界内での協業はもちろんですが、それ以外にもバス会社さんやタクシー会社さんなど、業界外も含めた協業や物のやり取りを考えていく必要があると感じています。これを2022年にかけてもう少し深く掘り下げてみて、我々が貢献できるか部分を探していきたいです。

 なお視聴者からの質問では、TMSはベテランからルーキーまで使うアプリになるのか、ギグワーカー登録者の信用担保はどのようにしているのか、積荷のシェアリングが進まない理由は何か、ドローン配送は収益化できているのかなど、24問の具体的な問いが寄せられた。

 また当日は、河合氏からの「一緒に取り組んでくれる仲間を募集中」との視聴者へのラブコールを行うところも印象的だったのだが、共創相手に求める条件を問う質問も2問あった。これに対して河合氏は、「我々は物流しかできないので、別の強みを持っていらっしゃるとことと、同じ空気感、温度感でご一緒させていただけるどうかを重視している。何らか誰かの課題を解決できる取り組みを、双方にメリットがある企業様とご一緒することで、継続的に長くお付き合いできるのでは」と答えた。藤井が連絡手段を聞くと、「Facebook messengerでご連絡いただくのがありがたい」と、河合氏はとても気さくに答えていた。

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