近年における自然災害の頻発、激甚化は、住まい探しにおいても大きな影響を及ぼしている。LIFULLでは、安全な住まい探しをサポートするため、6月に新築一戸建て物件で「洪水・土砂災害・地震ハザードマップ」の提供を開始。住まい探しの検討段階から自然災害リスクを知る環境を整えた。提供開始から2カ月半が経ち、どんな反響が出ているのかという現状とあわせ、海外の不動産におけるハザードマップの提供状況や気候変動のリスクについて、メディアセミナーを実施した。
LIFULLの洪水・土砂災害・地震ハザードマップは、物件エリアの地図上に洪水、土砂災害、最大震度、液状化のシミュレーション結果と、避難所情報を表示するというもの。住まい探しを検討段階から物件エリアにおける、自然災害リスクを知ることで安心した住み替え情報を提供する。
LIFULL LIFULL HOME'S事業本部プロダクトプランニング1部の蔭山亜由美氏によると「住み替えの際、災害時に強いエリアかどうかを調べた割合が、賃貸でも売買でも、この3年間毎年伸びている。売買ではもっとも上昇した項目になっている」と関心の高さを裏付ける。
LIFULLでは、サイト内で物件情報とあわせてハザードマップを確認できるため便利という声が上がっており、地図の利用率もサービス開始前に比べ向上しているという。
利用率向上にも寄与するハザードマップだが、先行する米国でも注目度は高いという。LIFULL LIFULL HOME'S事業本部プロダクトプランニング1部部長の大久保慎氏は「不動産情報検索サイトの中では、全米第3位『Realtor.com』が2020年8月に、ハザード情報の提供を開始している。その後2021年5月にはオンライン仲介で全米2位の『Movoto』、2月にオンライン仲介で全米1位の『Redfin』も洪水リスクと気候リスクの掲載を開始した。こうした情報の提供に対し、消費者が、敬遠してしまうのではないかという物議もあったが、現在はこの対応を称賛する声も多くなっている」とここ1年の動きを説明した。
大久保氏は「6月には『ニューヨーク・タイムズ』誌に住み替え時のチェックリストにハザードマップを加えようという記事も掲載され、関心は高まりつつある。ただ、黎明期のため、提供方法も試行錯誤している。ビジネスへの影響から踏み切れないところもある」と米国の状況を話した。
LIFULLが提供する洪水・土砂災害・地震ハザードマップは、物件情報のページ内に表示されているため、価格や物件スペックとあわせ、まとめて検討できるのが特徴。蔭山氏は「災害リスクを知ると、日頃どんな防災対策を施せばいいかにもつなげられる」と話す。洪水、土砂災害、液状化、最大震度など、災害ごとにタブで表示切替ができるため複数の災害リスクを網羅的に確認できる。
発表会では、京都芸術大学教授/Earth Literacy Program代表の竹村眞一氏による「猛威をふるう気候変動の最新動向と気候変動への創造的『適応』」をテーマにした講演も実施。竹村氏は「街が壊滅したり、国がだめになってしまったりと全体のリスクを本気で考える時代が始まっている」とし、「温暖化の兆候は脱炭素で抑えることが結構できる」と訴える。
また「根本的に東京の街づくりを考えないといけない。伝統に学ぶと、水害を前提とした街づくりという考え方があり、家屋が2階部分まで冠水しても、その上に逃げ込める場所を作っておいたり、家から船で脱出できるなどの工夫があった。水没を前提とした街づくりをしないといけない。水害のリスクは高まっているが、やれることはたくさんある。ハザードマップの掲載もその一つ。LIFULLの取り組みには敬服する」とコメントした。
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