BoxBrownie.comは、不動産に特化した画像編集を手掛ける会社だ。オーストラリアに拠点を構え、日本では2020年7月にサービスをスタート。曇りの日を晴れに、何も置かれていない新築物件に家具を合成してバーチャルステージングに、とあらゆる画像編集を施し、不動産の魅力を高める。
高いクオリティを保持しながら、1枚180円というリーズナブルな価格設定は不動産業界内でも注目の的。グローバルに展開するBoxBrownie.comの高品質と低価格、スピードの秘密は何か。BoxBrownie.com ゼネラルマネージャー日本のコンバー朋美氏に聞いた。
――BoxBrownie.comの業務内容を教えて下さい。
一言でいうと不動産写真の編集サービスになります。オーストラリアで2015年に設立しました。現在は、104カ国以上で展開しており、10万人以上の方にご利用いただいています。
創業者であるブラッド・フィリポニは、不動産の写真を撮影してきたプロのカメラマンで、当初は地元のオーストラリアでのみサービスを展開していましたが、不動産イベントなどに参加することで米国にも参入。現在は米国のお客様が全体の60%以上を占めています。
一番ベーシックなサービスとして提供しているのが画像補正で1枚180円~になります。どんなことをしているのかという、曇りの日に撮影した家の外観画像を空の明るさを補正して晴れの日に変えたり、夕方に撮影して暗く写ってしまった室内写真を明るく補正したりと、画像からの印象をよくすることで物件を魅力的に見せられます。
このほか、斜めになってしまった画像を垂直平行に補正したり、レンズの歪みで壁が曲がったように見えてしまう壁をまっすぐにしたりと、さまざまな画像補正に対応しています。
不動産画像ならではの事例では、外観撮影するときに日光の反射が写ってしまうことがあるんですね。それを避けるために日差しを手で遮ると手も写り込んでしまう。しかし後から手の部分を消して空の画像を合成すれば、美しい外観画像が仕上がります。反射が映り込むときは、あえて手を写り込ませてしまう、そういうふうに撮影することもおすすめしています。
――画像加工のクオリティはもちろんですが、やはり気になるのは価格設定ですよね。安すぎる(笑)。
バックエンドはかなり作り込んだシステムを採用しています。自動化も進んでいますが、人間の力が必要になる部分には、惜しみなく人間が対応できるような体制を整えています。発注から納品まで、すべてオンラインで完結できることが特徴で、これによって手間を省き、低価格を実現しています。
料金に関しては、1枚180円~が基本でサブスクリプションにも複数枚注文による割引にも対応していません。これは「使いたいときに使いたい分だけ」使ってほしいという思いを込めていて、多くの方に使っていただけるようできるだけ低価格に提供できるようにしています。
ベーシックな画像加工以外にも、夕暮れの背景を合成した「夕暮れ加工」は450円~、家電や家具などをなくし、空き室のように見える「アイテム除去」が450~900円で請け負っています。仕上がり時間もご依頼から24時間以内を基本にしています。
――画像加工以外にもホームステージングサービスも始められているそうですが。
空室の物件に家具や小物を配置して空間を演出するホームステージングをCG加工で実現する「バーチャルステージング」(2700円、360度画像の場合は5400円)サービスも提供しています。もともと最安値が3600円だったのですが、3月から値下げし、さらに手軽に利用していただけるようになりました。
また、建築中の物件写真に床やキッチンを配置し、バーチャルステージングまで施した「バーチャルリノベーション」(2700円~1万7100円)や、図面からフルCGで物件を描き起こす「CGパース」(3万1500円)、CGパース内を内見できる「360°建築パース・バーチャルツアー」(4万5000円~)といったサービスも手掛けています。いずれも他社に比べて低価格でご用意できるほか、バーチャルツアーでは、制作期間が2週間程度というスピードでご提供できることが特徴です。
――画像の加工をすることで問い合わせが増えるなど、不動産会社からの反響はいかがですか。
ずっと反響のなかった物件が、バーチャルステージングをしたことで、問い合わせが増えたなどのお声はいただいています。
――バックエンドのシステムは自社開発ですか。
創業者の1人であるメル・マイヤーズが担当しています。カメラマンでもあるブラッド・フィリポニがサービスの拡大にあたり、システム開発が必要と考えたときに、システム開発のプロとしてメル・マイヤーズを招きました。
メル・マイヤーズは、大変気さくな人柄なのですが、12歳で大学に入学した天才で、大学入学時の年齢としてはオーストラリア最年少と言われています。そこで統計学とコンピュータープログラミングを学んだ経歴を持ち、BoxBrownie.comのシステムも大変こだわって作っています。そうしたこだわりが、低価格やスピード対応に結びついていると思います。
――現在104カ国以上でサービスを展開されているとのことですが、画像加工に携わるスタッフも世界中にいらっしゃるのですか。
画像編集に携わるスタッフは1000人ほどで、各国にいます。そのため24時間受付が可能になっています。人によって専門性が異なるので、1人が全部をこなすのではなく、得意分野ごとに担当しているという形ですね。
――国ごとに好みの画像加工も違ってきそうですね。
BoxBrownie.comでは、手書きの間取り図を図版として起こす「間取り図の明瞭化」(2700~3600円)というサービスも提供しています。これはオーストラリアで重宝されているのですが、米国ではオーストラリアほど利用されていません。あと、米国では夕暮れ加工を使われることが多く、国ごとに人気サービスは少しずつ違いますね。
――バーチャルステージングなどでは、家具や小物など国ごとの文化の違いも大きく出てきそうですが。
現時点で日本在住の編集スタッフはいないのですが、私が日本向けにアドバイスするなど、対応できるようにしています。そのほか、編集スタッフ全員で各国のスタイルを学ぶようなトレーニングも設けていて、日本であれば、冷蔵庫は小さめサイズにする、和室には座布団を置くといった、日本の生活様式に合わせた家具や小物を学んだり、それぞれの3Dモデルを作って社内で共有していたりとマニュアルを作って対応しています。
――バーチャルステージングやバーチャルリノベーションがさらに一般化されると、不動産会社にとっても助かりますよね。今までは、住んでいる人が退去してから室内の写真を撮影して募集していたのですが、それだと空室の期間が長くなってしまう。退去前に写真を載せられれば、その時点から次の入居者を募集できるので、空室期間を短くできます。このあたりは不動産仲介会社に大きなメリットになると思います。
日本では、大がかりなリノベーションが少ないと聞いていたのですが、需要がありそうで、うれしいです。
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