爆発的な成長を遂げる中国の新エネルギー車市場だが、新エネルギー車やEV用バッテリー自体も文字どおり爆発している。
原因の多くは車両設計やバッテリーの品質にある。猛暑日が続いてバッテリーが熱を持ったり、何かのはずみで電装部品やバッテリーが傷ついたために後日ショートしたりするケースが多い。とはいえ根本的な原因は、新興メーカーゆえに技術レベルがまちまちであること、経営状況が悪いために十分なアフターサービスができないこと、あるいはすでにメーカーが倒産してしまい点検やアフターサービスが行われなくなったことなどが挙げられる。
最近大きく報じられた発火・爆発事故では、5月に広西チワン族自治区百色市にある大学構内でEVバスが爆発炎上し、隣に並んでいた他の3台にも燃え広がった。詳しい原因は明らかでないものの、シャシー下部のバッテリーから出火したと報じられている。同じく5月には河南省鄭州市で、EVトラックが爆発している。製造元のメーカーはすでに倒産しており、長期にわたって車両の点検やメンテナンスが行われていなかったという。
バッテリーに端を発する事故は、何も無名の新興メーカーだけではない。現在IPOを準備している威馬汽車(WM Motor)は、2020年10月にSUV型EV「EX5」がわずか1カ月の間に4台も相次いで発火したことから、1000台以上をリコールしている。同社は発火の原因について、バッテリーセル内の汚染物質が原因である可能性を示唆している。
また2019年には、大手国産自動車メーカーの比亜迪(BYD)のEVでも発火事故が起きている。当時BYDは、発火したのはトランクの内部からで、バッテリー自体は壊れていないとコメントを発表したのだが、ドライバーにしてみれば火元の無いトランクから発火するようなクルマなんて勘弁してほしいだろう。
先に紹介したNIOも2019年の4月に陝西省西安市で修理中に、5月に上海市で、6月に湖北省武漢市で、いずれもSUV型EV「ES8」が立て続けに発火したことから約4800台をリコールしている。バッテリーモジュールの配線が不適切なためにショートしたと説明しており、リコール費用は約5億元と報じられている。
ちなみに米テスラも中国国内で繰り返し発火・爆発事故を起こしている。直近大きく報道されたケースでは、2021年1月に上海市のマンション駐車場で「Model3」から煙がでて爆発、炎上している。
中国政府は新エネルギー車分野でならば世界の市場で戦えると意気込むが、現実と向き合えば、そこには技術の壁に加えて、人材の壁、法制度の壁が立ちはだかる。現在のところ新エネルギー車領域の専門人材は華南地域に集中しており、なおかつ人材の需要と供給に大きなズレが生じている状況だ。産業の更なる発展には、メーカーが必要とする人材をいかに多く育成するかがカギとなり、この方面での政策調整が急がれる。
また法制度の面では、中央の各省庁が2021年6月に新エネルギー車に関する政策や規定、通知を一斉に発表しており、その数は15を超える。工業情報化部からは2021年の重点作業対象として、新エネルギー車に関する各種標準規格の新規制定や見直し計画が出されている。まずは一定の技術レベルに達しないメーカーをふるいにかけることで、最低限の安全性を担保する狙いがあるとみられるが、新エネルギー車とも関係の深いコネクテッドや自動運転の領域に関わる法整備も火急となっている。
新興メーカーはこれらの政府の動きに加えて、世界的な市場の動向にも遅れず対応することが求められる。新興メーカーの挑戦に終わりはないが、このさき新規参入のハードルが上がることは間違いないだろう。
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