【事業開発の達人たち】北海道の元公務員が行政の「請求業務DX」に挑む--AmbiRise田中寛純氏

永井公成(フィラメント)2021年06月29日 09時00分
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 企業の新規事業開発を幅広く支援するフィラメントCEOの角勝が、事業開発やリモートワークに通じた、各界の著名人と対談していく連載「事業開発の達人たち」。今回は公務員を退職後起業し、行政の請求業務のDXをサポートする「Haratte(ハラッテ)」を開発した、AmbiRiseのCEO兼CTOである田中寛純さんです。


AmbiRiseのCEO兼CTOである田中寛純さん

 行政の中にいたからこそ気づけた課題や、それを解決するための行政DXソリューション「Haratte」の開発経緯を語っていただきました。また、行政で情報システム担当を経験してから起業した田中さんが考える地域情報化の進め方や、起業を考えている公務員へのアドバイスなども伺いました。

行政にいたからこそ「気づけた課題」

角氏:もともと公務員だった田中さんがなぜAmbiRiseを作ったのか、そして今そこでどういうことをされているのかをお聞かせください。

田中氏:役所が税金でシステムを作ると、どうしても公平性や安全性を重視することを求められます。そうしたものに配慮すると、誰にとっても使いやすいように作ったはずが、結局使いづらくなったり、着手や完成が遅くなったりしてしまいます。また、そもそも役所のことを全部役所でやる必要もないとも思っています。行政がやることと思われがちなサービスを民間側が提供したり、役所と連携してサービスを作るべきです。今のところ、そういったことに取り組む企業は日本全国でも数少ないですが、特に北海道にはそうした会社がありません。なので自分は北海道からそういうことをしていく会社を作ろうと思ったのが、AmbiRiseを作ったきっかけです。

 AmbiRiseでは、特に法人や住民と市役所の接点といった、役所が苦手な部分を補完するようなことをやりたいと思っています。また、自治体はオンライン申請のサービスを作っても役所の中で紙に印刷するという従来通りの準備を平気でしたりします。なので、役所の中にいた人間として、役所が書類を受け取る時にどうしたら仕事の効率が上がって手間が増えないか、合理的になるかということを前もって考えたサービスを提供したいと思っています。ですからコンサルティングもやりますし、サービスも提供します。一気通貫・垂直統合でサービスを提供したいと考えています。


 第1弾のサービスとして、行政宛の請求書を発行するHaratteというサービスを開発しました。開発のきっかけは、私が札幌市の会計室で財務会計システムの再構築に関わっていたときの経験です。当時、会計室では、紙でもらった情報を一生懸命転記しており、そこを効率化するためには外からくるデータをデジタルで受け取ることが必須だと感じました。また、役所が便利になるだけではなく、いまだに請求書が手書きだったり、ゴム印を使っていたりする地元の中小企業も、電子化によって便利になる必要があると思っています。

 それらを解決するサービスとして考えたのがHaratteのコンセプトです。たとえば、札幌市に請求書を出す事業者さんに対しては、請求書発行サービスを無料で提供します。発行した請求書にはQRコードがついていて、受け取った自治体側がそれを読み込みます。これにより自治体側はデータをデジタル形式で受け取り、会計システムに自動入力できます。自治体はセキュリティ上ネットワークから分離されていますが、QRコードに請求書の情報が全部入っているため、ネットワークを使わなくてもQRコードの中から100%正確に請求書のデータを取り出せます。


 自治体はこれまで請求書を手作業で入力していた部分を自動化できますので、行政からはその対価としてサービスの利用料をいただいています。開発費や導入費といった初期費用は不要で、利用料は年間の使用数に基づく契約型でお金をいただくようなモデルです。横須賀市さんとの実証実験では、これまで手作業で伝票処理すると1枚あたりだいたい5分ほどかかっていたのが、このツールによって1分半で終わるので、手作業時間が7割ぐらい削減できることがわかりました。


 地域の活性化やデジタル化のようなことを事業化しようとすると、なかなか予算はつきません。一方で業務効率化で業務量を削減できると予算がつきやすいという現実がありますので、そこでお金をいただく形にしていてます。このツールをいれると、自治体だけでなく事業者向けのサービスもついてきて、地域活性化のための予算を考えずに地域の活性化やデジタル化にもつながるので、そういったことを事業化する際にも合意が取りやすいんです。

角氏:すごく面白いと思いました。会計システムが外部接続していないとか、自治体の中の人だからこそ分かっている急所やその解決方法など、会計室にいたときの知見が生かされていますね。

田中氏:スタートアップ企業というと、最新のテクノロジーを使うと思われがちです。それはそれでアリだと思いますが、私の場合、自治体の中のことをわかってるというアドバンテージを生かして、枯れた技術を組み合わせて行政の人たちが「やらない理由」「できない理由」を取り除くことに注力しています。

角氏:枯れた技術を生かせばコストも下げやすいし安全性も検証されている。自治体向けにはうってつけだし、これからすごく伸びるだろうなという感じがしました。

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