【事業開発の達人たち】北海道の元公務員が行政の「請求業務DX」に挑む--AmbiRise田中寛純氏 - (page 2)

永井公成(フィラメント)2021年06月29日 09時00分
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地域情報化には「小さな失敗」を許容する文化づくりを

角氏:地域の活性化について、今面白いと思っているのは、地方のデジタル通貨で支払いができるツールです。「さるぼぼコイン」が面白いと思って注目しているんですけど、たとえばコロナの時に地域振興券の代わりにさるぼぼコインを配ったりとか、BtoBでの支払いにも使えるようになってるんです。

 PayPayなんかはもうそうなってますが、ゆくゆくはさるぼぼコインみたいな地域の金融機関が運営する電子地域通貨でも、税金の支払いもできるようになっていくと思います。税金を払うときに「現金ですか?さるぼぼコインですか?」みたいに選択できれば、地域内で回っているお金が市外に流出しにくくなっていって、その結果、頑張っている地域は経済が豊かになるはずだと思っているんですよね。先進的な自治体が地域の金融機関と組んでそういうのをどんどんやり始めると、地域からお金が東京に吸い出されずに回ると思うんです。

田中氏:そうですね。そういう取り組みが地域主体でできればいいのですが、そこに対して共通の接点を持つプラットフォームが必要だと思うんです。そういうところに、たとえば弊社のサービスが普及していった先に接点が持てるようになったりすると、いろいろなやり方ができると思っています。

 Haratteは、地域活性化や地域のデジタル化にも役立ててもらいたいと思っているので、単純にお金を払うのが便利になるとか、効率的になるということだけにはしたくないんですよね。ただ、そうしないと使うモチベーションが上がりつらいので、最初の入り口としてはそうしたところからスタートする必要があるとは思います。市役所職員だったとき、20年前から電子政府と言ってやっていますけど、全然進んでこなかったのを見るに、そこを段階的に、バランス良くやっていくことが普及するポイントなんだと思います。

角氏:素晴らしい。自治体でやると何か失敗があったらつつかれるとか、何かできていないところがあったら怒られるとか思っちゃうじゃないですか。だから100点とれた自信がつくまで自分が書いている答案を誰にも見せないみたいなところがありますよね。そうなると、何の前進もないまま何年も経っちゃうんですよね。

 
 

田中氏:そうなんです。失敗も小さく失敗すればいいし、失敗を許容するのも政治だったり世論だったりはするので、そういう機運づくりも大事だと思うんですよね。あと100点満点の話で言うと、公平性の観点から外部の有識者の意見を聞いたりするといったこともあると思いますが、そこで目指すべきは理想だと、現実離れした話になって、結局着手できない、進まないという話もよくあります。

角氏:公務員はクビにならないし、すごく批判にさらされやすいところがあり、それゆえに忖度しなくちゃいけない部分がたくさんあるんですよね。そのままでいようとする組織内の「慣性の力」がすごく強い組織だというのはかつて自分も感じてました。

田中氏:分かります。

角氏:別に公務員が悪いわけではなく、そういうカルチャーや環境があって、その環境に自分たちの心理が影響を受けていることに気づきづらいんですよね。そこを変えるためには、人の心を考えることがすごく大事なんだと思います。だから、僕が田中さんのお話を聞いていて、外の方と仕事をする機会がたくさんあったことで、俯瞰して見ることができ、そこで得た気づきを自分のものにされたことがすごく大きいのかなと思いました。

田中氏:そうですね。役所の方はいろいろなスキルを持っていたり、地頭が良かったりとすごく優秀な人が多いと思うのですが、自己肯定感がものすごく低いんですよね。「自分はどこにいっても通用しない」と思っているところがあるじゃないですか。私は役所人生のあるタイミングから「何かあったら別にやめれば良いし、どうにでもなるから言いたいこと言わせてもらう」という感じで仕事をするようになりました。そうすると怖いものがなくなって思い切った提案もできますし、客観的な意見も言うことができました。すると、プロフェッショナルとしての意識が出てきて、充実して仕事ができるようになりました。どうしても公平性と安全性に傾いてしまいがちな職場で、どう前向きに舵を切るかというところが大事なのだと思います。

 役所は決められた配分の中で、一見相反する利便性と安全性のバランスを考えるような仕事が多くあります。その際に、どちらかを犠牲にするのではなく、どうやったらうまく融合させることができるかをを考え、そこに道具として、たとえばITをどうやって使うと良いかということを考えるのが行政の職員の仕事なんだと思います。どうやったらその相反するものを融合させるか、みたいなところを組織として考えられるようになると、役所に対しての不満も職員の不満も減っていくんじゃないかと思います。

モヤモヤするなら手を動かせ

角氏:ありがとうございます。最後に、公務員でこれから起業や転職に挑戦したいとか、あるいはまだモヤモヤしている人に向けてアドバイスいただけますか。

田中氏:モヤモヤして考えてばかりいないで、とりあえず何かできることから手を動かしてみようということですね。そこから霧が晴れていくこともあります。準備はどれだけ準備したところで確信に変わることはないです。準備が終わるまでやらないというのは、間違いなんじゃないかなと思いますね。私も結局タイミングがきて流れるように押し出されたところもあります。辞めた人にもいろいろ聞いたけれど、やっぱりみんな決め手があるわけじゃなくてタイミングみたいなところもあったりしますし。

 
 

角氏:そうですよね。そこにつきるよなと思いました。「とりあえずレモネード売れ」と僕は言っているんですけど。

田中氏:そうですね。別に起業や転職せず残るとしても、いろいろとやったことはその中で生きていきます。人材としてものすごく価値になるし、もし外に飛び出るとしても役に立つはずなので、どっちに転んでも損はないんだから、やってみればいいじゃない?と思います。年齢は関係なく年齢に応じた戦い方があると思います。

角氏:年齢は関係ないですね。素晴らしい!すごくいい話を聞かせていただきました。ありがとうございました。

【本稿は、オープンイノベーションの力を信じて“新しいことへ挑戦”する人、企業を支援し、企業成長をさらに加速させるお手伝いをする企業「フィラメント」のCEOである角勝の企画、制作でお届けしています】

角 勝

株式会社フィラメント代表取締役CEO。

関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。

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