ノンデスクワーカーの働き方を耳からアシスト--現場主義で開発した「BONX BOOST」

 音声コミュニケーションデバイスで遊びと仕事のコミュニケーションを変えてきたBONXが、「今できることすべてを詰め込んだ」新モデル「BONX BOOST」を発表した。第1号機「BONX GRIP」の発売から約6年。スノーボードをしながら話せるデバイスとして出発したBONXは、遊びの場でのツールとして活用されつつ、医療や建設、小売店といったB2Bでも欠かせないアイテムになっている。ハードウェアスタートアップとして、数々の苦難を乗り越えながら、着実に市場を広げてきた背景をBONX 代表取締役の宮坂貴大氏に聞いた。

BONX 代表取締役の宮坂貴大氏
BONX 代表取締役の宮坂貴大氏

 BONX BOOSTは、複数人と同時にやりとりができるコミュニケーションデバイスとしての機能をそのままに、小型軽量化と長時間駆動を実現した最新モデル。現在、GREEN FUNDING(グリーンファンディング)でクラウドファンディングを実施中で、税込価格は2万800円~。

「BONX BOOST」
「BONX BOOST」

 「2016年の第1号機から、ずっと積み上げてきた知見やユーザーからのフィードバックを詰め込んで、今できる一番いいものができた」と宮坂氏はBONX BOOSTを表現する。

 特に力を入れたのは、どんな現場でも使える使い勝手の良さだ。従来の「『BONX GRIP』に比べ、重さを15gから10gへ軽量化したほか、サイズも縮小。加えて、左右の耳どちらにもつけられる形にしている。BONXは勤務中ずっと装着していることが多いため、途中で耳を付け替えて使う人も多い。上下対称のデザインにしているため、反転させることでどちらの耳でも使用でき、上下についたボリュームボタンも、重力センサーが方向を認識し、本体が反転しても操作性が変わらない」と徹底する。

「BONX GRIP」(左)と「BONX BOOST」(右)のサイズ比較
「BONX GRIP」(左)と「BONX BOOST」(右)のサイズ比較

 この形は、装着試験を繰り返し、試作機を重ねることでたどりついたもの。そのため、常に現場に寄り添うことを念頭に置く。「BONXは、スノーボードで仲間と連絡をとることが出発点になっているが、当初からユニバーサルで、グローバルに使えるものを目指していた。現在は、医療、建設、空港などさまざまなところで使っていただいている。しかし、その現場を見ると、多種多様な使われ方がされているし、求められるものも違うことがわかる。そうした現場のニーズをBONX BOOSTではできる限り盛り込んでいる」と宮坂氏は開発の背景を話す。

 徹底した現場志向は、オプションパーツの開発にも生かされている。BONX BOOSTでは、口元まで伸びる延長マイクや強風対策のマイク風防、一度に8台まで充電できる集中充電器など、豊富なオプションパーツを用意する。

 「延長マイクは、屋外で使う建設現場などで音声をしっかり届けるため、マイク風防も同様に風が激しくてもきちんと聞こえることをイメージして用意した。集中充電器は、小売店では1カ所で充電していることが多く、1台1台からケーブルが出ると管理が煩雑になってしまい必要以上にスペースも取ってしまっている。それを解決するために作った」と明かす。

口元まで伸びる延長マイクや激しい動きでも落ちにくい耳掛けフックなどのオプションパーツをそろえる
口元まで伸びる延長マイクや激しい動きでも落ちにくい耳掛けフックなどのオプションパーツをそろえる
8台まで充電できる集中充電器
8台まで充電できる集中充電器

 そのため現場には足繁く通い、インタビューなども重ねる。「カスタマーサポートのチームが中心になって、お客様の声を集めているが、現場には私もいくし、エンジニアもデザイナーもそれぞれが出向く。実際につけてもらって、フィードバックをもらう。これを徹底することで、開発が続く」と言い切る。

 現場で培ったアイデアはB2Cのニーズに応える。左右どちらの耳にも付け替えられるデザインは、車道側だと音声が聞こえにくいロードバイクに乗る際に左耳につけられるし、マイク風防は雪山でも役立つ。

 また、BONX BOOSTでは、独特の形状をしたイヤーピースを採用しているが、こちらもオリジナルで作成したもの。「イヤホンなどでは密閉性が重視されるが、このイヤーピースは逆に音が抜けることがポイント。これによって耳が疲れにくくなり安全性を確保できる。もちろんノイズのある現場では密閉性の高いものに付け替えてもらえればいいし、選べるようにしている」と気を配る。

 BONXがここまで現場にこだわるのは、ノンデスクワーカーの業務を変えていきたいからだ。「医療、建設、小売りなどに従事するノンデスクワーカーは現在日本に約4000万人いると言われており、日本における就業者の7割以上にあたる。リモートワークやコミュニケーションツールなどが普及し、デスクワーカーの業務は、時間や場所の制限が少なくなってきているが、ノンデスクワーカーの業務は改善できる余地が大きい」と業務改善を見据える。

 「例えば医療現場ではナースコールやベッドセンサーが入っていても、すぐに気付けないケースもある。その時にもBONXのグループトーク内で、音声によるアラートが出せれば、近くにいる人が対応できたりと効率もよくなる。そうしたことに一歩でも近づけるよう、現場で働く人が使いやすい形にしていきたい」と今後を描く。

 2016年に発表したBONX GRIP、2020年の「BONX mini」に続き、クラウドファンディングは3度目。「BONXはチームがあってこそ続けられてきた製品で、GREEN FUNDINGの方もチームの一員だと思っている。支援者の方からフィードバックをいただいたり、一緒にページ構成を考えてもらったりと、ユーザーとつながるための大切な場所。もちろんユーザーの方もBONXのチームも一員」と位置づける。

 今できることすべて詰め込んだBONX BOOSTだが、さらなる進化もすでにイメージしているという。宮坂氏は「ユニバーサルとしての進化を続けつつ、グローバルにも目を向けていきたい。将来的には、耳に装着しただけでつながるような世界にしていきたいと考えている。まだやりたいことは多い。音声を切り口にして、働き方の未来を作っていきたい」とした。

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