新規参入が絶えない中国の「新エネルギー車」市場--次世代モビリティでは3つの優位性 - (page 2)

秀山 斌(クララオンライン コンサルティング事業部 部長)2021年06月25日 09時00分
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中国における「次世代モビリティ」の現状

 新エネルギー車と同様に中国で目覚ましい成長を遂げているのが、次世代モビリティ技術の自動運転とコネクテッドだ。コネクテッドとは、自動運転のベースとなる技術で、自動車に搭載された通信機器を通じてネットワークと接続し、遠隔で車両を制御したり、車両の状態や道路状況などのデータを収集・分析したりするテクノロジーだ。特に中国が開発を進める自動運転技術は、常にネットワークに接続してさまざまなデータを取り込みながら走行する方式であるため、自動運転はもはやコネクテッドが実現する機能のうちの1つに過ぎない。

 すでにテレマティクスサービスや事故発生時の緊急通報サービス、盗難車両の追跡、走行距離に応じた自動車保険などのサービスで活用されており、次の段階となる「V2X(車車間通信・路車間通信)の開発も進んでいる。

 日本ではホンダが世界初の自動運転レベル3を搭載した新型「レジェンド」を3月に発売したが、中国でも新興EVメーカーの理想汽車(Lixiang)や蔚来汽車(NIO)が全モデルに自動運転レベル2相当の機能を搭載しているほか、華人運通(Human Horizons)がレベル3の機能を搭載したEV「HiPhi X」の量産化を始めている。さらに通信機器大手の華為(Huawei)が開発したレベル4の技術は、北京汽車グループの新エネルギー車ブランド「極狐(ARCFOX)」への搭載が決まり、2021年4月から公道での実用化試験がスタートしたところだ。

 政府は2025年をめどに、販売される新車の50%をレベル3相当の自動運転車にするとの目標を打ち出している。自動運転タクシーに限れば、百度が5月から北京市内の一部エリア限定でレベル4の無人乗用車を使った正式な有料運行を始めている。

 実用化のスピードにおいては海外メーカーと肩を並べる中国だが、自動運転に関連する特許出願数では諸外国に大きく溝を開けられているのが実情だ。特許庁が2021年2月に公表した調査結果によれば、2014〜2018年に出された自動運転関連技術の出願数では、日本が最も多い2万8件で、中国は5位の4965件にとどまる。米国は2位で1万1311件だった。

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アライアンスで勝負する中国のコネクテッド戦略

 しかしながら中国は、コネクテッドのアライアンスで圧倒的な強みを持つ。中国のテックジャイアント「BAT(Baidu:百度、Alibaba:阿里巴巴、Tencent:騰訊)」の3社が、率先して世界中の自動車メーカーらとパートナーを組み、コネクテッドサービスの開発に取り組んでいるからだ。

 たとえば、百度が主導する自動運転車向けオープンプラットフォーム「Project Apollo」には、トヨタ、ホンダ、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ、フォード、吉利汽車、長城汽車、奇瑞汽車などの大手自動車メーカーが参画している。さらに音楽配信サービスの「QQ音楽」や音声メディアの「Himalaya(喜馬拉雅)」といった車内向けコンテンツサービスのパートナーも含めれば、世界中の300を超える企業が集結している。実際、BATが開発したコネクテッド機能を搭載したモデルは、2020年だけで合計119車種を数える。

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中国の次世代モビリティにおける3つの優位性

 世界各国が新エネルギー車の開発や自動運転、コネクテッドの技術開発を急いでいるが、中国には他国にはない優位性がある。

 1つ目が、中国の体制的・政策的な優位性だ。先に触れたように、中国政府は新エネルギー車と関連領域を長期成長戦略の重要課題に位置付けており、その予算は1000億ドルに上る。先端技術の研究開発を資金と人材の両面から支援しており、海外メーカーとの技術協力や外商投資の受け入れにも積極的だ。地方政府も公道を使った実証実験に柔軟に許可を出しており、消費者向けの購入促進政策も市場の状況に合わせて弾力的に運用されている。中央と地方のいずれも政策的な判断は早く、行政と企業の連携も強い。

 2つ目が、AI領域での優位性。膨大な人口、99%を超えるモバイルインターネットの普及率、個人情報やプライバシーに対する鷹揚な国民性、世界の工場と呼ばれるほどの幅広い産業構造などにより、世界のデータの20%超が中国にあると言われる。BATが自動運転やコネクテッドの領域にビジネスチャンスを見出しているのも、ビッグデータの収集に適した巨大な市場があり、すでに膨大な量のデータを有しているためだ。2017年から始まったAI国家戦略「AI2.0」に基づく政府の各種政策的支援により、AI領域では今や米国と共に世界をリードする存在となっている。

 3つ目が、中国企業が得意とする「二番手戦略」による優位性だ。模倣やパクリと揶揄されながらも、中国企業が国内外の人気サービスをそっくりそのまま真似て大成功した例は枚挙にいとまがない。しかも、中国のモノづくりのスピードは速い。最初は二番手にいながら、市場やユーザーの反応に応じて高速で調整を繰り返し、最終的に市場競争を勝ち抜いてしまう様を何度も見ているのではないだろうか。国内産業のすそ野が幅広く、海外経験を持つ高度人材も豊富にいるため、国内で開発から設計、部品調達、組立・製造までを完結できるスピード感も次世代モビリティの発展にとって大きなアドバンテージといえる。

 最終回となる次回は、中国の新興新エネルギー車メーカーの挑戦について紹介する。

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