U-NEXTは5月25日、VODサービスにおけるテレビデバイス戦略について説明する勉強会を開催した。スマートフォンやPCに比べ、テレビデバイスでの視聴が促進されると、視聴時間が増加するほか、解約率の抑制につながっているという。
U-NEXTは、2007年6月に「GyaO NEXT」として動画配信サービスを開始。現在、Netflix、Amazonプライム・ビデオに次ぐ市場シェア3位を獲得しており、国内事業者においてはナンバーシェアを維持する。有料会員数は2021年第2四半期時点で217万人。「コロナ禍における巣ごもり需要など、直近でもユーザー拡大が続いている状況」と、U-NEXT マーケティング部部長の前田弘之氏は現状を話す。
サービス開始当初はセットトップボックスを通して、テレビで視聴できるスタイルを提供していたが、2010年にはソニーのテレビ「ブラビア」のネットチャンネルに対応。テレビでの視聴を推し進めながら、2012年にはPCブラウザ、iPhone、iPad、Androidに対応。2014~2015年にかけて、Apple AirPlay、Chromecast、Amazon Fire TV、Fire TV Stickといったストリーミングデバイスでの視聴もサポートし、マルチデバイス化に取り組んできた。
視聴デバイスを拡大する中、テレビにおいては2017年にテレビリモコンにはじめて「U-NEXTボタン」を搭載。2021年の現在、主要メーカーの最新モデルにおいて、U-NEXTボタンが搭載されるまでに至った。
「ユーザーの手元にあるリモコンにU-NEXTボタンがついていることによって、広く私たちのサービスをしっていただける認知効果の高い取り組みであること、サービス加入への接触機会の最大化につなげられること、テレビという大画面サイズでの視聴によりライフタイムバリューの増加につながること、この3つがリモコンボタン搭載を推し進めている理由」と前田氏は説明する。
U-NEXTによると、視聴する画面サイズが大きくなるにつれ、視聴時間が長くなり、視聴時間の増加はユーザーのサービスに対する満足度向上につながるとのこと。これにより、サービスに価値を感じ、継続して利用するという結果がでているという。
一方、昨今テレビの大型化が進行し、出荷台数に対する40V型以上の割合は、2017年に50%程度だったものが、直近では70%に迫るほどになっている。加えて、テレビをネットにつなげて使用するスマートテレビの普及も進行。2020年6月には、テレビをネットに接続している割合は50.7%にまで達した。
「2019年12月時点では41.6%だったテレビのネット接続率が、半年後には9%増と驚異的に伸びた。これは新型コロナウイルス感染拡大防止による生活様式の変遷を経て、大幅に増加したものと考えられる」(前田氏)と分析する。
U-NEXTが注目するのは、動画配信サービスの利用者の80%弱がまだテレビを使っていないという現状だ。「テレビ未使用者の6割以上がテレビの利用に興味を持っているという調査結果もある。テレビを使っていない理由は『見る方法がわからない』『設定・接続が大変そう』というもの。この課題を解決できれば、テレビで動画配信を視聴するポテンシャルは大きくあると捉えている」(前田氏)と話す。
こう話す背景には、テレビ利用ユーザーにおける視聴スタイルと大きくかかわる。前田氏は「テレビ利用者はテレビだけでなく、別の部屋ではPC、外出先ではモバイルとシーンに合わせてデバイスを変えて視聴する傾向が出ている。一方、コンテンツのジャンルで見ると、韓流・アジアとアニメジャンルはテレビよりもモバイルで視聴されているケースが多く、これらジャンルは個人で楽しむコンテンツジャンルと捉えている。それに対し、キッズコンテンツはテレビでの視聴が高い傾向にあり、家族で楽しむコンテンツは明らかにテレビの利用が伸びている」と解説した。
デバイスごとの視聴時間を比較すると、PCとモバイルはほぼ同等だが、テレビはほかのデバイスに比べ視聴時間が約1.5倍との調査結果も出ており、「大幅に視聴時間が増やすデバイスがテレビ。利用時間が伸びれば解約率も下がる。1つのデバイスのみを利用しているケースでも、モバイルとPCの解約率は同等だが、テレビだけを見ている人はモバイルやPCに比べ解約率が28%低いことがわかった」とし、テレビでの視聴に今後も力を入れていくとした。
勉強会の後半では、ソニーマーケティング ホームエンタテインメントプロダクツビジネス部統括課長の福田耕平氏を迎え、前田氏との対談が実施された。福田氏は「テレビでVODサービスを視聴する際、以前は起動に時間がかかっていたが、ここ数年で発売したモデルはレスポンスを改善している。ユーザーはスマートフォンやタブレットでのサクサクとした操作になれているので、テレビとしてもユーザビリティに寄り添って開発している」とコメント。VOD視聴の快適さを追求しているとした。
福田氏によると、テレビを購入する時の重視点として「ネット動画が楽しめる」を選択した人の割合は年々増えており、テレビ購入時の検討要素として急速に関心が高まっているとのこと。
前田氏が「ネット動画が楽しめないテレビは購入しづらくなっているか」と問いかけると、福田氏「ネット動画機能が1つのスタンダードになっている。加えてAndroid TVを搭載したテレビは高い確立でネットに接続されている」と答えた。
また「直近2年間のネット動画の視聴時間は、年代に関わらず増加している。画面サイズが大型になるほど視聴時間が高い傾向が出ている」(福田氏)と、U-NEXTの調査結果を裏付けた。
「スマートフォンはパーソナルなデバイスで一対一の関係になる。テレビは一対一もあるが、一対一以上にもなりうるデバイスだと思う。テレビはリビングにおいてあるのが一般的。家族がリビングに帰ってくるきっかけになって、一人で見ていたコンテンツを家族で会話しながら見たり、リビングで過ごす時間が長くなり、家族の絆が深まればうれしい」(福田氏)とコメントした。
U-NEXTについては「4Kコンテンツやドルビービジョンなどに非常に積極的に取り組まれている印象。付加価値のあるコンテンツを続々と配信いただき、非常に心強いパートナーだと思っている。特にオンラインライブへの取り組みが非常に早く、バリエーションも豊富。コロナ禍における対応が早く非常に驚いた」(福田氏)と、さまざまな取り組みを高く評価。それに対し前田氏は「オンラインライブは、一昨年の時点で配信するとは微塵も考えていなかった。しかしアーティストの音楽ライブが中止や延期になる中、できることをいち早く取り組んでいこうと考えた。U-NEXTの強みはスピード感であり柔軟性があること。時代の変化にいち早く対応していくという意味で、先駆けて取り組みをしている」(前田氏)とコメント。配信において積極果敢な姿勢を見せた。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
住環境に求められる「安心、安全、快適」
を可視化するための“ものさし”とは?
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス