U-NEXT、HBOとHBO Max作品配信へ--VOD国内トップランナーへの2つの戦略

　USEN-NEXT GROUPのU-NEXTは3月30日、動画配信サービス「U-NEXT」において戦略発表会を実施した。HBOとHBO Maxオリジナルの新作を日本初独占見放題で配信開始するほか、動画から雑誌、書籍なども取り扱う「オールインワン・エンターテイメント」戦略を突き進める考えを示した。

左から、U-NEXT 代表取締役社長の堤天心氏と株式会社U-NEXT COOの本多利彦氏

　HBOとHBO Maxオリジナルの取り扱いは、米ワーナーメディアとの、独占パートナーシップ契約をSVODにおいて結んだことによるもの。U-NEXTでは、オールインワン・エンターテイメントとともに「U-NEXTでしか観られない」作品の配信に注力する「ONLY ON戦略」を敷いており、今回の契約締結はその一環となる。

HBOとHBO Maxオリジナルの新作を日本初独占見放題で配信開始

　米国のプレミアムチャンネルとして高い人気を持つHBOは、現在、世界78カ国で視聴ができ、契約数は1億4200万。1話あたりにかける莫大な製作費や放送コードに縛られない大胆で過激な描写などが受け、「バンド・オブ・ブラザース」「ビッグ・リトル・ライズ」「トゥルー・ディテクティブ」など数々の人気作を生み出している。

　スティーブン・スピルバーグやマーティン・スコセッシといった映画監督や、トム・ハンクス、ニコール・キッドマンなどの映画俳優が作品に関わり、ドラマ進出のきっかけにもなっているという。

　今回の日本初独占見放題配信では、リドリー・スコット製作総指揮「レイズド・バイ・ウルブス／神なき惑星」、新作ドラマ「The Nevers（原題）」に加え、タイガー・ウッズのドキュメンタリー「タイガー・ウッズ／光と影」などをラインアップする。

　U-NEXT COOの本多利彦氏は「U-NEXTらしい人気声優の方を起用した日本語版吹き替えもプロデュースする。いままで海外ドラマには出演していなかったようなキャスティングで、アニメは見ても海外ドラマは縁遠かったという人に積極的に海外ドラマを楽しんでもらいたい」と日本語吹き替えにも力を入れる。

　U-NEXT 代表取締役社長の堤天心氏は「今までのU-NEXTは、扱うジャンルや品ぞろえ、圧倒的なカバレッジに注力していた。これは一定の評価をいただいたと考えており、今後さらなる戦略としてオールインワン・エンターテイメント、ONLY ONという2つの方向性を打ち出す」と説明する。

U-NEXTの戦略

　オールインワン・エンターテイメント戦略は、動画に加え、ビデオ、ブック、音楽、ライブとあらゆるエンターテインメントコンテンツを、ジャンルを超えた横断検索と、タイトル詳細から遷移することで、1つのアプリでシームレスなエンタメ体験ができるというもの。

　「作品のIPを軸に原作、主題歌、ライブ、映像作品などを、1つのアプリで有機的につながるコンテンツデザインを促進する。先行してブックと映像作品を統合しているが、映像コンテンツを楽しんだ人が原作を購入するなどの体験につながっている。アプリ内で体験するエンゲージが高まり、利用意向も高まる。ここを強化していきたい」（堤氏）と、現状を踏まえ話す。

オールインワン・エンターテイメント戦略

　動画配信市場は右肩上がりに成長しており、2025年には6500億円を上回ると予測されている。映画興行収入やパッケージの売上と比較としても市場規模は大きく、配信がエンターテインメントのメインサービスになっていくとのこと。

　日本においては、テレビ局やキャリア系など複数のプレーヤーが存在するが、独立系サービスであるU-NEXTはNetflix、Amazonプライム・ビデオに次ぐ3位のシェアを持つ。2020年度は有料会員数が200万人を突破し、さらに会員数は増加傾向にあるとのこと。しかし、動画配信サービスを「利用したことがない」人は72％にのぼり、「市場浸透度はいまだ低く、成長の余地が大きい」とU-NEXTは分析する。

　堤氏は「早期に250万のユーザーを獲得し、国内の動画配信におけるトップランナーの地位を名実ともに確立させ、市場全体の伸びを加速したい」とコメントした。

U-NEXTのプラン内容