――ヒラヤーアプリを作る上で最も気を配られた点はどこですか。
松山氏 実際にお客様に使っていただき、そのお声を反映しながら今後もバージョンアップをしていく予定なので、まだこれからという感じなのですが、家を買うという体験をアプリ内でしていただけることにフォーカスしています。家という物質ではなく、家を買う体験を重視しています。先程お話したとおり、家を買うには、お客様に多くの負荷がかかります。特にポイントとなるのが「これでいいのか。ほかにもっといい物件があるのではないか」という点です。これが家の購入に踏み切れない最大の要因であることもあります。
これもお客様にインタビューを繰り返す中で、見えてきたことなのですが、そうした決めきれないというポイントに立ったときに「やることリスト」があると、「これでいいのか」ではなく、「これを買うために何をするのか」にフォーカスができます。
細谷氏 ヒラヤーでは、家を買うことによって描けるライフスタイルの提案や、こんな新しい生活が待っているということをアプリ内で、お客様に示せるので、じっくりとコンセプトを理解してもらった上でモデルハウスに足を運んでいただけます。
これには、営業現場におけるメリットもあって、IKIのコンセプトを理解した上で来店していただくため、営業担当者はIKIをより良い家として建てるための部分に全力を注げます。IKIで家を建てると決めたあとも、地盤の調査など、家を建てるためにクリアしなければならない実務は数多い。営業担当者はそのプロとしての仕事に集中できます。
営業担当者が本来の仕事に集中できる環境を整えられるので、人数を抑えられますし、ローコストを維持できます。私たちは無人内覧を早々とスタートしましたが、新型コロナ感染拡大防止による非接触を求めただけではなく、ローコストオペレーションを追求した結果でもありました。当初は、Wi-Fiの電波が届かない、安定的に稼働しないなど、課題もありましたが、そうした問題をひとつずつクリアしながら、安定的に稼働できるまでにシステムを成熟させてきています。
――かなり先進的な取り組みを実践されていますが、競合会社などはありますか。
細谷氏 木造住宅や、アプリによる家さがしという面ではいくつか競合会社がありますが、この価格帯や無人接客といった部分まで考えると完全な競合はいないと思っています。
住宅は質感や手触りなど、最終的に必ず実物での確認が必要になりますが、アプリと無人接客を組み合わせることで、ある意味、実物であるモデルハウスまでもをバーチャルの世界の延長線上に置いている。将来的には、人手不足が深刻化する不動産業界の新たな営業手法として定着させていければと考えています。
――アプリもかなりスピード感を持って開発されたとのことですが、秘訣はなんですか。
松山氏 アプリの企画や仕掛けは私たちで考えていますが、開発部分に関しては外部のエンジニアの方にお願いしています。この手法で開発している会社は多いいと思いますが、私たちでは、ポイントごとにチームを作って、対応していただいています。最優先したのはスピードなので、完全にアジャイルで進めていて、遷移図をアプリの画面から逆に起こすみたいな開発もしています。
細谷氏 まだユーザー数が少ないこともあり、今回はスピード最優先でローコード開発プラットフォームを採用しました。もっとユーザーが増えてくればフルスクラッチ開発も考えますが、できるだけ柔軟に対応できるようにしていることがスピード開発の秘訣ですね。
――今後アプリを使った営業が主流になっていくのでしょうか。
細谷氏 いきなりは難しいですが、私たちでは太陽光電力プランを装備できたり、アプリ化といったことを視野に入れた家づくりを最初からしています。こうした家づくりが成功すれば、アプリというかデジタルをもっと活用する動きは増えてくる可能性があります。
松山氏 私たちが一番やりたいのは、住宅に対してデジタルがどれだけ貢献できるのかというチャレンジです。不動産はIT化が遅れている業界と言われていますが、ケイアイスター不動産は、チャレンジを続けることでスピード感ある形で新たな家の形を提供し続けている。これは他社にはない優位性だと思うので、この強みを活かしながら、住宅のIT化に引き続き取り組んでいきたいと思っています。
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