Zホールディングス(ZHD)は4月28日、2021年3月期の連結業績を発表した。売上収益は、1兆2058億円で前年比14.5%増と、2年連続で2桁の増収を達成した。営業利益は1621億円(同6.5%増)、当期利益は891億円(同1.2%増)、調整後EBITDAは2948億円(同18.8%増)となった。
2020年のコロナ禍は、ヤフーのビジネスにも少なからず影響を与えたが、最も大きく躍進したのがEC部門。「Yahoo!ショッピング」や「PayPayモール」などのショッピング事業の取扱高は前年比45.1%増、横ばいが続いたリユース事業も、PayPayモールの手数料引き下げなどで前年比5.7%増。結果、同社のEC取扱高は3.22兆円(前年比24.4%増)を突破した。
メディア事業では、広告関連の売上収益が全体で3538億円と前年比3.7%。ディプレイ広告は堅調に伸びたものの、検索広告は、コロナ禍によるクライアントの出稿減の影響を受け、マイナス4.3%とダウンしている。ヤフーでは、4月1日にディスプレイ広告プラットフォームを統合。今後は、オフライン販促ソリューションも統合し、オンライン、オフラインを横断した広告の可視化、最適化、運用自動化を実現するという。
金融分野では、PayPayの躍進をアピール。サービス開始から2年半で年間決済数は20億回(前年比1.6倍)に達し、第4四半期末時点の加盟店数は316万カ所(同1.5倍)、登録者数は3803万人(同1.4倍)。3月に実施した「超PayPay祭」では、キャンペーンの高い認知度も相まって、1日の決済回数が交通系ICに匹敵する日もあったという。また、ZHDの各金融サービスをPayPayブランドに刷新。連携強化で、カード事業や銀行事業など各FinTech事業のKPIを牽引したという。
2021年3月に経営統合したLINEの2020年度第4四半期については、売上収益が683億円(前年同期比15.9%増)、営業利益は106億円(前年同期は43億円の赤字)。LINEのコア事業である広告領域は好調で、ディスプレイ広告およびアカウント広告を含めた広告売上は416億円(同26.0%増)。LINE公式アカウント数も、約1502万件(同26.3%増)に伸びた。一方で、LINEの「旧戦略事業」は赤字を縮小することで、一時損益を除いても下半期で黒字化したとしている。
中期目標としては、2023年度に売上収益2兆円、調整後EBITDA3900億円を目指す。同社では、注力領域のメディア、コマース、戦略事業(FinTech・ヘルスケアなど)について、5年間の追加的な戦略投資を実行。各事業間のシナジーを高めるため、短期的にはプロダクト連携、重複領域の統合といったコストシナジーに加え、中長期的にはヤフーとPayPay、LINEのアセットを生かした事業シナジーを発現したい考えだ。特にECでは、2020年代前半での国内No.1を目指す。
同社代表取締役社長Co-CEOの川邊健太郎氏は、「ヤフーは、(2021年で)サービス開始25周年、私の社長就任から3年が経過している。25年を経過したヤフーだが、インターネットのポテンシャルや組織のケイパビリティからするとまだまだ成長途中」と評価した。
ZHD傘下のLINEでは、モニタリング業務を委託していた中国拠点の社員が、ユーザーの個人情報やトーク・写真(モニタリング業務の一環としてユーザーから通報があったもの)を閲覧できる状態にあったとする一連の問題で、データガバナンスの強化を発表している。
すでに中国からのアクセスを遮断しており、拠点の業務についても3月23日付で完全終了。韓国で保管していたトーク上の画像・動画は、段階的に国内に移転する。また、プライバシーポリシーでデータを保管する国名を明示していない件についても、3月31日に改訂している。さらに、特別委員会を設置し、ZHDグループの今後の対応について議論。グループ内の監視体制の整備や、NISTやCBPRなど国際基準への対応を目指す。4月23日の個人情報保護委員会、26日の総務省からの行政指導についても、より本質的な改善も含め対応していくという。
なお、一連の報道後の利用動向については、ユーザー(メッセージDAU)、ビジネス(LINE公式アカウントのメッセージ送信アカウント数)ともに大きな変化はなく、官公庁・自治体向けの公式アカウントも、一時停止の動きはあったものの、一部自治体からは再開表明も出ているという。画像・動画データの国内移転では年間20億円程度の費用を見込んでいるものの、ZHD全体での業績への影響は軽微としている。
同社は、2021年度の経営方針として、全社領域ではZHDグループ全体でのデータガバナンス・セキュリティの強化、LINE統合とPMIの推進に注力。先述した3分野(メディア、コマース、戦略事業)については、マーケティングソリューションの拡充、物流やロイヤリティプログラムの改善を通したECサービスの品質向上、カード会員や銀行口座数などFinTech領域のユーザー基盤拡大を目指す。
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