オンライン診療で医療の質は上がる--メドレーが実態調査、サービス開始から5年

 メドレーは4月19日、オンライン診療システム「CLINICSオンライン診療」における利用実績データおよび、アンケート調査結果から、オンライン診療の利用実態や医師の利用意向などの調査結果を発表した。

 調査対象は、CLINICSオンライン診療を利用している医師。調査期間は、2021年1月25日〜1月31日。調査方法は、ウェブアンケート。有効回答数は、315件。

 同社の「CLINICSオンライン診療」は、離れた場所にいる医師と患者をビデオチャットでつなぐオンライン診療をスムーズに実施するための各種機能を備えたオンライン診療システム。2016年2月に提供を開始した。

 同社では、CLINICSオンライン診療の実績をもとに、オンライン診療の利用実態について診療科や登録患者層の分布など各種データをまとめた。

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 現在は約2300の診療所・病院でCLINICSオンライン診療が利用されており(2020年12月末時点)、かかりつけ機能を担う診療所やクリニックを中心に導入が進んでいるという。なお、地域医療の基本的な単位である二次医療圏の約70%をCLINICSオンライン診療を利用する診療所・病院でカバーしているという。

 また、オンライン・セカンドオピニオンでの利用を中心に、全国各地の大学病院や中核病院でも導入が進んでいる。

 2020年4月以降は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための時限的な特例措置により、これまで存在していた疾患制限等の規制が大幅に緩和。医師の判断をもとに、オンライン診療の利用が急速に広がっている。結果として、規制緩和後はCLINICSオンライン診療を利用した診察のうち約74%が保険診療での利用となっており、それまでは規制によって利用が叶わなかった臨床現場の潜在的ニーズの高さが明らかになった。

 診療科については、内科領域、小児科、皮膚科、歯科領域や産婦人科領域などを中心に、幅広い診療科での利用が進んでいる。

 オンライン診療は、20〜40代で多く利用されているという。その理由としては、仕事が忙しく通院時間を確保しにくいこと、子育てや介護により通院の負担が大きくなっていることなどが考えられる。また、産婦人科領域や皮膚科などにおいて女性の利用が進み、結果として女性患者の割合が多くなった。

 登録者の最高齢は90代だが、CLINICSアプリでは家族アカウントが作成できるため、高齢の患者に代わって家族が診療の予約などが行え、通院介助の負担軽減にもつながっている。

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 現在、オンライン診療の特例措置の恒久化に向けてさまざまな議論が行われているが、その中ではオンライン診療に対する懸念点も挙げられている。しかし、懸念点に対する臨床現場の声について、まとまったデータは存在していなかった。

 そこで同社は、今後の議論が臨床現場の実態にあったものとなることを期待し、代表的なオンライン診療に対する懸念点として(1)コンビニ受診等の不必要な診療が増えるのでないか、(2)地域の医療圏が壊れるのではないか、(3)医療の質を落とすのではないか」――の3点について、オンライン診療を活用する医師にアンケートを行った。

 (1)については、「オンライン診療を実施することによって患者の利便性が著しく上がり、コンビニ受診などの不必要または不適切な診療が増えるのではないか、ひいては医療現場や医療費を圧迫するのではないか」という懸念から生じたもの。

 しかし、オンライン診療によってコンビニ受診が増減したかについて聞いたところ、95%の医師は「減った」「どちらかといえば減った」「変わらない」と回答。オンライン診療がコンビニ受診などを助長する可能性は低いと推察される。

 背景としては、予約を前提とした運用により飛び込み患者がいないこと、患者が処方薬を入手するまでに郵送などのタイムラグがあることから、突発的な受療行動ではなく、主に計画的な受療行動に使われていることが考えられる。

 (2)については、「オンライン診療により都市部等の医療機関に遠方からの患者が集中し、地域の医療圏が壊れる可能性があるのではないか」という懸念から生じたもの。

 オンライン診療の実施によって、遠方患者の割合が増加したかについて聞いたところ、73%の医師が「変わらない」との回答した。また、「増えた」「どちらかといえば増えた」と回答した医師は27%だった。

 増加傾向であると回答した医師に遠方患者の受診理由について尋ねたところ、「近隣にオンライン診療を実施しているところがない」「専門性が高い診療を行っている」ことが大半を占めた。

 そもそも、定期通院の多くは検査や身体診察などの対面診療と組み合わせることが前提。アンケート結果からも、現時点でオンライン診療が医療圏に与える影響は小さく、今後オンライン診療に対応する診療所・病院が増えることで、その影響はさらに小さくなっていくと考えられる。

 (3)については、オンライン診療の普及が始まって以来「オンライン診療の利用は医療の質を落とすのではないか」という懸念がつねに言及されてきた。

 そこで、自身の診療にオンライン診療を取り入れることによって、患者に提供する医療全体の質はどう変化すると感じるか聞いたところ「悪くなる」「どちらかといえば悪くなる」と回答した医師は1割に留まり、9割の医師は医療全体の質は落ちないと考えている。

 さらに、医療全体の質は「良くなる」「どちらかといえば良くなる」と回答した医師は約半数にのぼる。オンライン診療と対面診療を比較すると、医療の質が落ちるのではないかという懸念が生じがちだが、オンライン診療は「より良い診療を提供するための選択肢」として医療現場で活用されているとしている。

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