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【事業開発の達人たち】試作機を作って役員に直談判し異動を実現--AIoTクラウド・廣澤慶二氏【前編】 - (page 2)

永井公成(フィラメント)2021年04月14日 09時00分
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廣澤氏:ホームランを打ったりすると応援コメントが出たり、あとは試合がない時には毎時いろいろな選手の情報を手首に出たりします。こちらは2017年に発売したんですけれども、最終的に11球団まで広げることができました。

角氏:すごいですね。セ・リーグ、パ・リーグほとんどの球団が出したということですよね。ちなみにほかの商品についても教えていただけますか。

廣澤氏:「ペットケアモニター」という猫ちゃんのトイレを作りました。猫ちゃんのおしっこの量や回数で泌尿器トラブルの兆候が分かるので、トイレの度に毎回計測することによって健康を管理するIoTのデバイスの技術の一部を担当させていただきました。


角氏:不調になる前に体調の変化を判定して、アラートが出るというデバイスですか?

廣澤氏:そうですね。はい。

角氏:ユーザーの気持ちに非常に肉薄したような、そういう製品を多くつくってこられたんだなというのが分かりました。

廣澤氏:そうですね。そこがシャープの文化でもあるのかなとは思っています。

角氏:なるほど。失敗した製品についてもお聞きできたら嬉しいなと思うんですけど。

廣澤氏:funbandの前に同じようなウェアラブルをつくっていました。そちらのほうは「気持ちを伝え合うウェアラブル端末」でして、離れたところにいる家族や恋人がギュっと握るとそれが伝わるというものをつくっておりました。いかに握った手の感触を再現するかというところで、いろいろなことを試しました。たとえば、航空機の尾翼を曲げるために、何千ボルトという電圧をかけるというやり方があり、それを使おうとしたのですが、手首に何千ボルトをかけるのは厳しいということになり、採用しませんでした。

角氏:面白いですね。

廣澤氏:あとはエアですね。空気で手の形状を再現してギュッと握るということも考えました。しかしエアだと感触がちょっと違うということで不採用になりました。あとは低周波治療器のビクンとくることを広く解釈すると「つながっている」ということじゃないかと考えて、低周波治療器を改造して握るとビクンビクンとくるようなものもつくったんですけど、ちょっときつすぎることになりまして。再現がしきれず終わってしまいました。

角氏:面白いな。今はコロナもあって人とのつながりみたいなものが、より注目される時代になってると思うので当時よりその製品のニーズが高まってるかもしれないですね発売されたらニュース性とかもすごいあるんだろうなと思いました。ただ、再現の難しさというのもなるほどなという感じがしました。

廣澤氏:そういったものを毎週のようにつくっては役員に試してもらって、「これは違う」って言われてまたつくりなおすというような日々を送っておりました。

角氏:それは毎週試作するんですか?

廣澤氏:そうなんです。なにか違うと言われると「なにくそ!」と思って新しい方法で試作をして持っていくというようなことをおこなっておりました。

角氏:なるほどね。そこでへこたれないところがやっぱりすごいですね。

廣澤氏:そこは楽しくやっていました。

辛い時こそ笑顔で乗り切る

角氏:廣澤さんは今までさまざまな事業開発をされてきましたが、事業開発を担当している方に対してアドバイスをいただけますか。

廣澤氏:アドバイスとしては、2点あります。1つ目は、やはり既存の事業とは違うところを担当するので、スキルやマインドも違うものを求められることがあるということです。そのためにはいろいろと自己開発をしていかなければいけないんですけれども、その自己開発も自分の成長をすごく実感できるものになりますので、そこの喜びを感じていただければと思います。

 2つ目は、事業開発は新しいことなので、自分も答えを持ってないし、組織の役員も答えを持ってないし、市場も答えを持っていません。そのためなかなか判断が難しく「本当にこれをやっていいのかな?」と自分でも思ってしまうところがあると思うんですね。そこで不安になって悲壮感を持って仕事をするのが一番良くないことだなと思っています。新規事業って楽しいことなので、仲間と、つらいときこそ笑顔で乗り越えるということが2つ目のポイントかなと思っております。

角氏:含蓄がありますね。

廣澤氏:失敗ばかりなので。

角氏:ちなみに廣澤さんが取り組んでこられて製品化したものと製品化されずに終わったものの打率でいうとどれくらいになりますか?

廣澤氏:プロ野球の平均打率ぐらいで2割ぐらいでしょうか(笑)。

角氏:製品化したものの影には、それだけの失敗があるということですね。

廣澤氏:そうですね。でも、いろいろな知識やスキルや仲間が増えてきたことで、かなり打率は上がってきていると思います。

角氏:上向きだということですね。自らの成長プロセスの中で、ご自身がスキルアップするようなさまざまなチャレンジをされ、その結果、打率もどんどん向上してこられていると。そしてそのプロセスも楽しんでいく、それが大事だということですね。ありがとうございます。

 次回は、現在AIoTクラウドで廣澤さんが取り組まれていること、かつて事業開発でぶつかった壁とその解決方法、そして廣澤さんが考える事業開発で必要なことについてお届けします。

角 勝

株式会社フィラメント代表取締役CEO。

関西学院大学卒業後、1995年、大阪市に入庁。2012年から大阪市の共創スペース「大阪イノベーションハブ」の設立準備と企画運営を担当し、その発展に尽力。2015年、独立しフィラメントを設立。以降、新規事業開発支援のスペシャリストとして、主に大企業に対し事業アイデア創発から事業化まで幅広くサポートしている。様々な産業を横断する幅広い知見と人脈を武器に、オープンイノベーションを実践、追求している。自社では以前よりリモートワークを積極活用し、設備面だけでなく心理面も重視した働き方を推進中。

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