会社やサービスを立ち上げた時、その内容を伝えるため必要になる企画書。その中にはどういった情報が盛り込まれ、どんな思いが詰め込まれているのか。ここでは、数多くのプレゼンをこなす起業家、ビジネスパーソンらが手掛けた企画書の中身を公開。企画書を作る上でのこだわりや気をつけていること、アイデアなどを紹介する。
今回は、不動産投資スコアリングサービス「StockFormer」を展開するZIRITZが、ベンチャーキャピタル、投資家に向けに作成した企画書を紹介する。2月に5000万円の資金調達を実施しているZIRITZは、競合がほぼないと言われる事業内容をどう企画書に落とし込み、伝えているのか。プレゼンのコツとあわせて紹介する。
ZIRITZは、2019年に設立。自ら不動産投資経験を持つ島崎(漢字は立つ崎)怜平氏がパーソナルデータを活用することで、誰もが魅力的な不動産投資物件に出会えることを目指し立ち上げた。国内初の不動産投資スコアリングサービスStockFormerは、個人が保有する資産や収入を登録してスコア化することで、自分の資産レベルに合った不動産投資ができるというもの。現在の登録会員数は約1800人を数え、平均年収は約1900万円かつ平均純資産約5400万円以上の富裕層をユーザーに持つことが特徴だ。
資金調達を実現した今回の企画書は「不動産の投資分野に明るくない人にも伝わること」を目的に作成。「そもそも、不動産投資に対してデジタルでサービスを提供していることをご存じない人にも、リアル以外での取り引きが成立しており、さらにデータのやりとりがされているので、それを貯めて活用していく、というStockFormerのサービス内容を説明しやすいような資料にしている」と、島崎氏は話す。
StockFormerは、投資家、エージェント、金融機関と関わる人の多いサービス内容。「サービスに関わるプレーヤーを全員登場させて、各プレーヤーが享受できるメリットと、その中で生じる流れを、企画書の序盤に盛り込むことで、その後の説明をしやすくしている」(島崎氏)とのこと。全29ページ中の5ページ目に登場する「StockFormerの目指す姿:『ハイクラス投資家向けデータバンク』」には、ほかに類を見ないサービスを展開するStockFormerというサービスの内容の理解を促し、デジタル化することによって業界がどのように変わるのかを的確に落とし込んでいる。
StockFormerには、投資の資産レベルをスコアリングする「SCORING」、不動産売買、融資の経験ログを共有する「SHARING」、保有資産の市場価値を見える化する「VALUATION」、専門家から不動産提案を受けられる「MATCHING」、不動産売買手数料をキャッシュバックする「PRICING」と5つのサービスがあるが、それを1枚の資料に集約。その後に続くページで各サービスの詳細を説明している。
「サービス1つ1つは、詳細ページを見ていただくことでわかるようにしている。実際、ベンチャーキャピタルへは、担当者の方1人にプレゼンをして、企画書をチームに持ち帰って共有していただくこともあるので、資料が独り歩きしてもわかるような内容にすることが大切」とのこと。
プレゼン時には、プロダクトの画面を見ながら説明し、各サービスの詳細ページは省くが、資料だけ見てもサービス内容が理解できるように詳細ページも用意する。島崎氏は「企画書は大体独り歩きするので、直接説明できても、できなくてもわかるように、組み合わせて作っている。気をつけているのは、文章から何がしたいかがきちんと伝わること。通常、文字数の少ない企画書のほうが、プレゼンがしやすかったり、イメージ図が多いほうがわかりやすいと言われたりするが、きちんと文章でできることを示しておくのは大事。プロダクトの説明は画面がないと伝わりづらいので、資料上では表現しづらい。そこを補うための文章は必要」と、資料だけ見ても、役割を果たせるように企画書を組み立てる。
ベンチャーキャピタルへのプレゼン時に「もっとも気にされる部分」となるマネタイズポイントについては、13ページで説明。「マネタイズポイントは数多いほど良いとされるので、投資家と不動産会社の両方のプレーヤーからマネタイズができて、成約すればするほどメリットがあること、サイクルとしてきちんと回るようなビジネスモデルにしていること」を図解する。
ただし、図解しているだけにこの部分に割く、説明の時間は短め。「プロダクトの説明に最も時間を割けるようにしている」という。それは、StockFormerという新しいサービスならではの苦労があるからだという。
「プレゼンはマーケットの説明から入り、ソリューションの話をして、最後にプロダクトを紹介するという流れが一般的だが、StockFormerについては全く逆の説明の仕方にしている。プロダクト自体の馴染みが薄いため、まずプロダクトの説明をして、それを頭に入れてもらいながら、ソリューション、マーケットの話をすると、伝わりやすい。このサービスを始めたときからこの流れで説明しており、自分でもやりやすい」と、独自の方法を採用する。
プレゼン時間は大体20分程度。その後40分程度が質疑応答の時間になっており、1時間が目安。「普段からコンサルタントにプレゼンをしている関係で、このためだけに練習はしていない。資料作りの段階から、プレゼンの様子を常に意識して作っているので、資料ができた段階で、かなり話しやすい内容にしている」と資料作りの段階から話すことを念頭においているとのこと。
プレゼンを前提した資料作りでは、流れを意識していない資料は話しにくいとのこと。「接続詞がなかったり、突然プロダクトの説明に入ったりすると、唐突感がどうしても出てしまう。無理に内容を入れ込んだりせず、話しやすさを意識したほうがやりやすい」と、プレゼンの流れを心がける。
ブルーやネイビー、グレーを基調とした資料のカラーリングは、StockFormerのサービスに合わせて作成。「会社のカラーを決めていて、資料のフォーマットも用意している」とのこと。
最近、オンラインでのプレゼンが増えていることについては「実はオンラインの方がやりやすいことも多い。対面では資料を読むスピードが人によって違うが、オンラインでは、こちらのペースで画面を移動できるので、見せたいポイントを逃さず話せる。また、人の顔が一覧できる点も説明しやすいと感じる」とオンラインでのプレゼンが増えたことについては、歓迎すべき点も多いという。
「プレゼンで重要なのは誰に説明するか、ということ。決済権のある人に説明できれば、話しの進みも早い。その段取りがもっとも大事。2月の資金調達も直接ベンチャーキャピタルの代表の方にプレゼンして決めていただいたもの。誰に話せるのかは、その後の動きにも大きく関わってくるため、そこを重視している」と、資金調達を実現した背景を説明してくれた。
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