沖縄電力、2050年にCO2排出ネットゼロへ--30年後のために今やるべきこと

コヤマタカヒロ2021年04月05日 08時30分

 沖縄電力は2020年12月8日に「沖縄電力 ゼロエミッションへの取り組み ~2050 CO2 排出ネットゼロを目指して~」を取りまとめた。現在、沖縄県では電力のほとんどを火力発電に頼っている。最も多いのが石炭を使った火力発電で、続いて、LNG(液化天然ガス)、石油が使われている。当然、化石燃料を使った火力発電ではCO2の排出が避けられない。そこで沖縄電力では、再生可能エネルギーの開発やLNGの利用を促進。そして、2050年にCO2排出ネットゼロを目指して行くとしている。

 この取り組みの1つとして2021年1月に発表されたのが、ユーザー宅にソーラーパネルと蓄電池を無償設置する新サービス「かりーるーふ」だ。グループ会社の沖縄新エネ開発株式会社と連携、すでに事前申し込みが応募者多数で終了している。

 ただし、CO2排出ネットゼロは、かりーるーふだけで実現できるものではない。そこで、沖縄電力が手掛けている、環境負荷の低い発電所や再生可能エネルギーによる発電施設を見学させてもらった。

環境負荷の低いLNGを採用した吉の浦火力発電所

 CO2発生量を低減するために、2012年3月から稼働しているのが。中頭郡中城村に位置する吉の浦火力発電所だ。LNG(液化天然ガス)を使ったコンバインドサイクル発電を採用。ガスの燃焼によりガスタービンを回すとともに、その熱を利用して蒸気タービンも回して発電するため、非常に発電効率が高いのが特徴だ。

中城城跡近くから見た吉の浦火力発電所
中城城跡近くから見た吉の浦火力発電所

 現在、25万kW出力の1号タービンと2号タービンが稼働しており、さらに3号、4号の建設が計画されている。そして災害対策及びピーク対応電源として使われる吉の浦マルチガスタービン発電所も併設されている。

 LNGによる火力発電は、石炭による火力発電と比べて、CO2排出量を約6割まで抑えられる。CO2ネットゼロを目指す上で、非常に重要な発電所となる。

 さらに吉の浦火力発電所に貯蔵されたLNGは商業施設や病院などに向けてローリー車で配送する仕組みも実現。例えば、イオン沖縄ライカムのそばに設置されたアワセ天然ガス供給センターからはイオンとその近隣にある病院、スポーツ施設などにLNGを安定的に供給。各施設で必要な3日分のLNGを貯蔵しているため、災害時にも電力が供給できる仕組みだ。

イオンモール沖縄ライカム近くに設置されたアワセ天然ガス供給センター
イオンモール沖縄ライカム近くに設置されたアワセ天然ガス供給センター

2種類のパネルを採用した沖縄初のメガソーラー

 吉の浦火力発電所と同じく、2012年3月から稼働しているのが、沖縄県名護市にある阿部メガソーラーだ。カヌチャリゾート施設内の約2万6730m3の敷地に、8748枚のソーラーパネルを配置。約1000kWの発電規模で、年間想定発電量は105kWh。約300世帯分相当の電力を生み出しているという。

沖縄唯一のメガソーラー。取材日は70kWh発電していた
沖縄唯一のメガソーラー。取材日は70kWh発電していた

 日差しが強いイメージのある沖縄だが、実は海に囲まれているため雨雲が発生しやすく、日照時間は全国平均より低い。このため太陽光発電の効率はそれほど高くはないという。

 そこで、阿部メガソーラーでは、薄曇りでも電圧低下しにくい「CIGS型薄膜太陽電池」と、高温でも高い発電量を生み出せる「アモルファスシリコン+多結晶シリコン多接合型太陽電池」という2種類の性質の異なるパネルを採用。天候や気温などに左右されにくく、安定的に電気が生み出せる仕組みを作り出している。阿部メガソーラーを利用することにより、年間約1000tのCO2を削減した計算になるそうだ。

風力で安定した電力を生み出す実証研究も進む

 そして2014年より、沖縄県北部の大宜味村で稼働しているのが、「大宜味風力発電実証研究設備」だ。敷地内には高さ70m、ローター直径83.3mで、定格出力2000kWの風車が2基設置されており、発電を行うとともに、さまざまな研究が行われている。

山の尾根に直径83.3mの大きな風車が2台設置されている。風速25m以下で発電を行う仕組み
山の尾根に直径83.3mの大きな風車が2台設置されている。風速25m以下で発電を行う仕組み

 風車による発電は、風速の影響を直接的に受けるため、非常に不安定だ。さらに突風や風向きが変わることにより、ローターの回転速度が急に変わると、出力は大きく変動する。これに対応するため、沖縄電力では電気設備建屋内に4500kWhの鉛蓄電池を設置し、さまざまな制御方法を検証している。

 例えば「出力変動抑制制御」はローターの回転で生み出された出力に対して、蓄電池から充放電を行うことにより、変動幅を緩やかにするもの。例えば20分間での出力変動幅を10%以下に維持するといった制御を行っている。また、風速から平均出力を算出して出力を調整する「出力一定制御」という方法もあり、それぞれの制御方法での安定化効果や変動幅を評価しているという。

 沖縄電力によると、「大宜味風力発電実証研究設備」はあくまで研究設備のため、現在は最大効率での発電は行っていないそうだ。しかしそれでも、年間想定発電量は800万kWhと非常に高く、一般家庭2200軒分になる。この場合、年間7000tのCO2削減効果が期待できる。

 比較的安定的に電力が得られる水力発電がない沖縄電力がこの先、30年でCO2排出ネットゼロを実現するためには、さまざまな取り組みが必要となる。ベースとなる火力発電所を環境負荷の低いLNGに切り替え、さらにはソーラーや風力など、再生可能エネルギーの比率を上げていく必要がある。

 しかし、再生エネルギーにさまざまな課題がある。メガソーラーの建設には莫大な土地が必要で、さらに天候に左右されるため発電効率が高いとはいえない。さらに風力発電はローターの回転音など、周辺への影響が大きいため、一部離島では商用運転が始まっているが、本当ではまだ、実証研究の段階で、実用化の予定はまだないそうだ。

 沖縄電力はグループ会社の沖縄新エネ開発とともに、再生可能エネルギーの導入、実用化を目指していくとしている。

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