全国小中学生プログラミング大会実行委員会は3月25日、「第5回全国小中学生プログラミング大会」の最終審査会・表彰式を2月28日に開催し、グランプリ・総務大臣賞をはじめとする受賞作品を決定したと発表した。
この大会は、小学生・中学生(日本在住の、6歳以上15歳以下)を対象とした全国規模のプログラミングコンテスト。テーマの指定はなく、PC・スマートフォン・タブレットで動作するプログラムやアプリ・ゲーム・ムービーなどのソフトウェア、ロボット、電子工作などのハードウェアであれば使用言語や作品形式を問わないコンテストとなっている。応募は、個人または3名以下のグループで、今回の募集期間は2020年7月1日〜11月3日だった。
主催は、角川アスキー総合研究所、CANVAS。共催は朝日新聞社。後援は総務省、超教育協会。協賛は、日本HP、ユニティ・テクノロジーズ・ジャパン、Kano Computing。
同大会は2016年より開催しており、5回目となる今回は合計785作品の応募があったという。応募作品の中から、一次・二次審査を経て、入選11作品を選定。オンライン(Zoomのウェビナー形式)で開催した最終審査会で、グランプリ・総務大臣賞に「太陽系シミュレーションゲーム」(尾崎玄羽さん・小5年)、準グランプリに「Color Overlap」(宇枝礼央さん・中1年)が選ばれた。
また、優秀賞作品の中学校部門では「Birds AI ぴーちゃん」(水谷俊介さん・中1年)、小学校高学年部門では「点体望遠鏡」(越智晃瑛さん・小6年)、小学校低学年部門では「Back 2 Back」(千葉紫聞さん・小2年)がそれぞれ選ばれている。
それでは各受賞作品を紹介していこう。グランプリ・総務大臣賞に輝いた太陽系シミュレーションゲームは、小学5年生の尾崎玄羽さんの作品。北海道・余市市の道の駅「スペース・アップルよいち」にある宇宙記念館で、軌道エレベーターを登って月や火星に行く映像を見たのが開発のきっかけだという。
同ゲームは、惑星・衛星の自転・公転速度や、引力、大きさ、距離などの比率を、すべて実際のデータを使ってシミュレーションできるもの(太陽は大きすぎるので、小さく変更)。太陽系の星々のデータをインターネットで調べて集めたという。宇宙船を操作し、星の周回軌道にのせるなどして楽しめるという。天体に関する計算だけでなく、画面構成もシンプルでデザイン的に美しい点も評価された。
Color Overlapは、中学1年生の宇枝礼央さんの作品。光の三原色(赤・緑・青)の3つを重ねて合わせていくパズルゲーム。光の三原色は重ねること色が変わり、またすべて重ねると白になる原理が、そのままパズルを解く仕組みとなっている。
2020年にScratchで開発したものを、基本となるアイデアはそのままに改めてUnityで制作。ストーリーを付けるなど内容も一新したという。「声が小さくて小人としか話せない王様」という設定や、絵本のような可愛いだけでなく深みのある絵、市販ゲームを思わせるゲーム画面の完成度が高い点も評価された。なお、音楽もオリジナルだという。
中学校部門に選ばれたBirds AI ぴーちゃんは、中学1年生の水谷俊介さんの作品。スマートフォンに搭載されたAIの画像認識とGPSの速度測定により、自転車走行時の危険を警告してくれるシステムだ。道路標識や危険個所を2032枚の画像として学習させている。開発のきっかけは、自分自身の自転車事故だったという。
同委員会によると、AIによる画像認識を活用した作品は少なくないが、ここまで本格的に取り組んだものは多くないという。自転車の交通事故を減らし、マナーの向上につながりそうな実用性も評価された。
小学校高学年部門に選ばれた点体望遠鏡は、小学6年生の越智晃瑛さんの作品。第3回大会でも点字について調べ、それを題材にしたハードウェアを組み合わせた作品で準グランプリを獲得。今回は、ひらがな、カタカナなどで書かれた文を点字に翻訳(点訳)できるソフトで応募した。
翻訳だけでなく、点字ディスプレイなどで表示する点字ファイルへの出力や、3Dプリンターでの点字印刷をできるようになっている。点字の3Dプリンターでの印刷時の問題点を解消するため、3Dプリンターの開発会社にも相談。実際に視覚に障害を持つ人にも試してもらい、修正を繰り返して完成させたという。
小学校低学年部門に選ばれたBack 2 Backは、小学2年生の千葉紫聞さんの作品。トレーニングサポート、ストップウォッチ、クイズゲーム、シューティングゲームといった機能からなる「バスケットボールプレイヤーのための本格マルチアプリ」(略称はB2B)。開発環境として使ったUnityのほか、PhotoShop、Illustrator、Blender、Visual Studio Code Insidersなどを活用している。
「Back to back」は、連続という意味で、NBAで連続シュートがきまったときなどに使われる言葉とのこと。同委員会では、小学校低学年でもこうしたコンセプトワークやプレゼンテーション、質疑応答ができるのかと、審査員を驚かせたという。
なお、グランプリには賞状と盾、副賞の「OMEN by HP 15 ハイパフォーマンスモデル」、準グランプリには賞状と副賞「HP ENVY 15 パフォーマンスモデル」、優秀賞には賞状と副賞「HP ENVY x360 15 スタンダードモデル」、奨励賞には賞状と副賞「ギネス世界記録2020(書籍)」がそれぞれ進呈された。
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