Adobeは米国時間3月10日、Appleの「M1」プロセッサーを搭載する「Mac」向けの「Photoshop」をリリースした。M1搭載Macシリーズの主要なソフトウェアとなるこの新バージョンの処理速度は、Intelプロセッサーを搭載するMacで実行する場合に比べて50%高速だという。
「当社の社内テストでは、幅広い種類の機能について、同等構成の前世代システムよりも平均で1.5倍高速に実行されることが示されている」と、Photoshop製品マネージャーのPam Clark氏は、M1にネイティブ対応したPhotoshopソフトウェアのリリースに関する10日付のブログ記事の中で説明した。同社のテスト項目には、ファイルのオープンと保存、編集フィルターの適用、領域の塗りつぶしや項目選択のための自動ツールの使用などが含まれ、「すべてにおいて、顕著に高速になったと感じられる」としている。
今回の結果は、Appleの新型Macは性能が高くバッテリー持続時間が長いというこれまでに報告されているレビュー結果を裏付けるものだ。この新しいプロセッサーで、Appleは、製造プロセスの微細化に関して数年分の遅れをとっているIntelに、深刻な課題を突き付けている。コンピューターの製造ラインで使用するチップの移行は大がかりな取り組みだが、これまでのところ、Appleはこの変更をうまく成し遂げたようだ。
Photoshopの高い性能は、Macの中心的なユーザーであるクリエイティブ系のプロフェッショナルにとって重要なものだ。ネイティブ版のPhotoshopがリリースされる前から、米CNETのフォトグラファーであるAndrew Hoyle氏は、M1搭載Macについて「間違いない」と太鼓判を押していた。Photoshopは、写真の編集や合成に広く用いられているが、それ以外にもデザインや出版関連の多くの作業に使用されている。
M1プロセッサーは、新型「iPhone」に搭載されている「A14」チップをベースとしており、それよりも性能が高い。同プロセッサーの生産を請け負っているのは、製造プロセスの微細化でIntelをリードするTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company)だ。
Adobeは、 16GBのRAMと2TBのSSDを備え、「macOS Big Sur 11.2.2」を搭載する13インチの「MacBook Pro」でテストを実行した。Intelモデルとしては「Core i7」プロセッサーが搭載されているものが使用されているが、MacにはIntelの最新プロセッサーは搭載されていない。予算を抑えたいユーザーは、M1搭載の「MacBook Air」でも同等の性能が得られる可能性があることに注意してほしい。ただしMacBook Airは、MacBook Proと比べてバッテリー容量が小さく、画面がやや暗く、負荷が大きくなった場合に動作を持続するための冷却ファンがない。また、ローエンド構成の場合は、グラフィックス処理性能も少し劣る。
Appleはさらに、同社のMシリーズプロセッサーを搭載した、さらに大型で高性能なMacBook Pro、デスクトップコンピューターの「iMac」、タワー型コンピューターの「Mac Pro」を今後リリースするとみられる。M1は4つの高性能コアと4つの高効率コアで構成されるが、これらの新製品にはそれ以上の処理コアを搭載するチップが採用される見込みだ。しかしその市場では、IntelやAMDのプロセッサーの競争力が高い。
Intelは2月、同社の新しい第11世代Coreチップ(開発コード名:「Tiger Lake」)の性能がM1を上回るという、独自の速度テスト結果を公開した(AppleのIntelチップ搭載MacBookには、第10世代のCoreチップが搭載されている)。そこで実施されたテストの1つは、Adobeのテストにも含まれていた、Photoshopのコンテンツを認識した塗りつぶし技術に関するものだ。Intelのテストでは、Intelの3GHzの4コアチップを搭載する「Windows」マシンが、M1 Macよりも1.5倍高速だった。ただしそのテストでは、Appleの「Rosetta 2」変換ソフトウェアを介してPhotoshopがM1上で実行されており、それは、M1向けに構築されたネイティブソフトウェアの実行ほど高速ではない。
Adobeは10日、人工知能(AI)を使って写真サイズを4倍にするPhotoshopの新機能も発表した。この機能は、「Lightroom」にもまもなく追加される予定だ。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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