アグリメディアは3月10日、三井不動産のCVCファンド31VENTURES Global Innovation Fund II、博報堂DYベンチャーズが運営するファンドHAKUHODO DY FUTURE DESIGN FUND、西日本旅客鉄道のCVC子会社であるJR西日本イノベーションズから、約3億5000万円の資金を調達したと発表した。
同社は、農業領域でさまざまな事業を展開している。農地活用事業の柱であるサービス・サポート付き市民農園「シェア畑」は、農地の維持管理に困っている都市近郊の地権者と、野菜づくりに親しみたい都市住民の架け橋となり、2012年のサービス開始以降、首都圏と関西で98農園を展開。また、農業HR事業の農業求人サービス「あぐりナビ」は、サービス開始6年で登録会員が7万人を超え、取引農家も北海道から九州に至るまで計4800件を突破。このほか、道の駅の運営や農業参入企業を対象にしたコンサルティングや協業なども展開している。
同社によると、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、都市住民の間で在宅比率が高まったことで、気軽に通えて健康増進につながるシェア畑が評価され、新規契約者数は前年同期比2倍となったという。また、雇用環境の変化にともない農業を仕事にしたい人も増え、「あぐりナビ」の登録会員数は通常の4割増になっていると説明する。
こうした事業環境の下、企業や官公庁、シェア畑ユーザー、取引する農業法人などから「街づくり」と「生鮮品野菜の流通」に関する依頼・相談が増えているという。街づくりについては、働き方の自由度が増したリモートワーカーの間で農を取り入れたライフスタイルが広がるなど、住環境に関する意識の変化が背景にあるとのこと。
また、生鮮品の流通については、外食頻度が下がった都市住民の間で鮮度の高い野菜の購買ニーズが増えていることに加え、産地の側も大規模化にともない生産力が上向くといった構造変化が挙げられるとしている。
同社では、単独でこのようなニーズを取り込み、迅速な事業化に限界があることから、三井不動産、博報堂DY、JR西日本という3社グループと資本提携を結ぶことになったと説明。各業界において強固な経営基盤を持つ3社グループのアセットを活用し、新型コロナウイルス感染拡大の影響で価値が高まる農ある街づくりやスマートシティ、都市と郊外をつなぐ生鮮野菜の流通の領域で事業を拡大したい考えだ。
また、経験の浅い「農ある街づくり」および「生鮮野菜の流通」の両領域において高い成長性を示すには、データの活用を通じた施策・商品の開発が不可欠となる。同社は「シェア畑」や「あぐりナビ」の運営を通じて獲得したデータ、取引先や顧客とのリレーション、市場環境や法制度などのナレッジを「AGRI DB」と総称し、コアの競争力と位置づけている。
今回調達した資金は、AGRI DBを起点に新事業の拡張を推進するデータサイエンティストやITエンジニアの採用に充てるほか、道の駅などの販売システムの刷新にも振り向け、業務全般のDXの確立を急ぐとしている。
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