「ジムに通えない」悩みを解決--バチェロレッテ黄皓氏が語った鏡型デバイス「MIRROR FIT.」のビジョン

 「常識を再定義するニュービジネスが前例なき時代を切り拓く」をテーマに、2月に約1カ月間にわたって開催されたオンラインカンファレンス「CNET Japan Live 2021」。2月12日に登壇したのは、Amazon Prime Videoの人気恋愛リアリティー番組「バチェロレッテ・ジャパン」でファイナリストにもなったミラーフィット代表取締役の黄皓氏だ。

ミラーフィット代表取締役の黄皓氏(右下)
ミラーフィット代表取締役の黄皓氏(右下)

 同社が開発し、2月に予約販売を開始した鏡型フィットネスデバイス「MIRROR FIT.(ミラーフィット)」は、受付開始からわずか9時間で初回の先行予定台数50台を完売し、オンラインフィットネスへの注目度の高さを証明した。今回のセッションでは、同製品の開発経緯や具体的なコンテンツの中身、今後の計画などを語った。

「ジムに通う時間がない悩み」を解決する鏡型デバイス

 可能な限り多くの人に健康的な運動体験をしてもらうため、サブスクリプション型のパーソナルトレーニング・セルフエステをリーズナブルに展開してきた黄氏。2020年には都内に同様のパーソナルトレーニング施設を内包した賃貸マンションを売り出したところ、家賃込みでサービスを受けられるということもあって、瞬く間に完売となった。

 「ジムに通う時間がない」という、フィットネスを続けるにあたっての最大の障害を解消すべく、黄氏が次にチャレンジするのが鏡型のミラーデバイス「MIRROR FIT.」だ。外出やジム通いが難しくなっているコロナ禍において、気軽にスポーツしたり、パーソナルトレーニングを受けたりするにはどうすればいいのか。あるいは仕事や家事・育児で忙しい人でも運動する時間を作れないか。黄氏の答えは、ディスプレイが埋め込まれた全身が映る鏡型デバイスを各家庭に置き、オンラインを通じてフィットネスコンテンツを提供することだった。

「MIRROR FIT.」のイメージ
「MIRROR FIT.」のイメージ

 既存の動画配信サービスやウェブ会議ツールなどを使ってトレーニングの方法を解説したり、パーソナルトレーニングを提供したりするサービスもある。しかしながら、その場合はPCやスマートフォンの小さな画面を使うため見にくく、パーソナルトレーニングにおいて最も重要な「正しく身体を動かすこと」が自分で確認できない問題もある。1つの画面のなかで「身体の動きを自ら確認でき、トレーナーと自分の動きを照らし合わせながら正しく動ける」ようにするには、姿見のような縦長の鏡型デバイスに勝る物はないと同氏は考えたわけだ。

 MIRROR FIT.で提供するコンテンツは、筋トレ、ストレッチ、ヨガ、ピラティス、ダンスなど多彩。ユーザーのスキルや都合に合わせて初級~上級まで、トレーニング時間としては5種類(5分、15分、30分、45分、60分)を用意した。トレーニングジムの場合、異なるトレーニングをしようとすると別々の場所に通わなければならないケースもあるが、MIRROR FIT.であれば準備時間も通う時間も必要なく、自宅にいながら、自分の好きなタイミングで好きなメニューにチャレンジできる。

多彩なトレーニングコンテンツを用意
多彩なトレーニングコンテンツを用意
時間の都合に合わせられるよう、コンテンツはおおよそ5~60分の長さから選べる
時間の都合に合わせられるよう、コンテンツはおおよそ5~60分の長さから選べる

 さらにコンテンツ提供の仕方としては3つのパターンを用意している。1つは「VOD」で、事前に収録された契約トレーナーの動画レッスンを、ユーザーがMIRROR FIT.の画面で再生しながらトレーニングするもの。すでに300本の動画コンテンツが完成しており、2021年内には最大1000本まで増やしたいとしている。

 2つ目は「ライブトレーニング配信」。同社のスタジオからトレーナーが毎日最大10回ほどのライブ配信を行い、ユーザーはそのトレーナーとチャットなどを通じてコミュニケーションを取りながら運動できる。そしてもう1つがトレーナーとの1対1のパーソナルトレーニングが受けられる「マッチング」機能で、ユーザー1人1人の趣味、嗜好や生活リズムに合ったトレーナーを選び、内蔵されたカメラでリアルタイムに互いの姿を見ながらトレーニングできる。

VOD、ライブトレーニング配信、マッチングの3本柱
VOD、ライブトレーニング配信、マッチングの3本柱

 このうち特にマッチング機能については、ユーザー側だけでなく、トレーナー側にもメリットのあるプラットフォームになりうると黄氏は強調する。現在、一般的なトレーニングジムに勤めているパーソナルトレーナーの多くは、拘束時間が長いにもかかわらず実働がわずかしかないために、十分な収入につながっていないという実情もある。待機時間にMIRROR FIT.のマッチング機能でトレーナーが自らパーソナルトレーニングを提供すれば、そうした問題の解決にもつながると黄氏は考えている。

ライブトレーニング配信ではテキストチャットなどでトレーナーや他の参加者とコミュニケーションできる
ライブトレーニング配信ではテキストチャットなどでトレーナーや他の参加者とコミュニケーションできる

フィットネス以外の活用も--試着コンテンツを開発中

 MIRROR FIT.では、今後契約トレーナーの数を増やしていくのはもちろんのこと、著名人のアンバサダー起用や、トレーニングジム運営会社を含む他社とのコラボレーションなどを通じて、多様なメニューを提供していくという。4月上旬には、先行販売分の50台を含む計100台のMIRROR FIT.のユーザーに対してPoC(Proof of Concept)的にサービス提供を開始し、そこから得られたユーザーの声を元にブラッシュアップしながら、10月にも本格的な販売、プロモーション活動を始める予定だ。

 当初は一般消費者向けとなるが、将来的には不動産、ホテル、介護や医療施設などへの導入も図り、2023年には5万人、2024年には10万人の会員登録を目指すという。黄氏は、2018年時点でトレーニングジムの有料会員が日本国内に514万人いるというデータを示し、10万人という目標はそのうちのわずか2%弱であることから、「十分成長可能性はあり、(目標達成の)ハードルは高くない」と断言する。

 6月頃には、内蔵カメラと映像解析技術を用いたユーザーの姿勢認識機能を実装し、採点するなどしてユーザーの達成感や満足度を刺激する仕組みを導入する予定。加えてトレーニング回数に応じた会員ランクを設定し、上位ランクになればパーソナルトレーニングが1回無料で受けられる、といった特典を得られるようにすることも検討している。

 将来的にはフィットネスに止まらず、アパレル商品の試着、メイクアップやヘアアレンジのレッスン、ミュージックライブの配信、遠隔診療支援など、用途を広げることで「生活にフィットするデバイスにしたい」(黄氏)と意気込む。

 そのなかの試着コンテンツについては、すでに開発がスタートしているという。ユーザーの体型を再現した3DアバターをMIRROR FIT.のなかで生成し、ECサイトのアパレル商品のサイズが自分に合うかどうかをビジュアルで確認したうえで購入できるような機能を実現したいとのこと。黄氏は、ユーザーが適切なサイズの商品を購入できるだけでなく、ECサイト側にとっても返品率を低くできるというメリットが得られると話す。

 価格はMIRROR FIT.本体が14万9800円。初期、運搬費用は3万円、サービス利用料金は1人月額5980円(3人まで利用可能なファミリー会員は7980円)で、本体を分割購入するサブスクリプションプランも用意している。セッション中には、価格、料金については富裕層向け(高額)ではないか、という質問が視聴者から寄せられたが、黄氏は家族でジムに通ったときの料金や、1カ月間に実際に通える回数を考えると、毎日家族で使えるMIRROR FIT.はむしろ割安ではないかという認識だ。

本体価格は14万9800円。そのほかに初期費用と月々のサービス利用料がかかる
本体価格は14万9800円。そのほかに初期費用と月々のサービス利用料がかかる

 何よりも、継続性、習慣づけが、フィットネスにおける最大の鍵だと考えている黄氏。家庭内に置いてすぐに始められるようにすることで、その習慣づけの課題をクリアするのがMIRROR FIT.の狙いでもある。しかし、それでも「飽きは必ずくる」と同氏。そのため、継続性を高めるべく「ゲーム性をもたせることは非常に大事」だとし、フィットネスを毎日楽しく継続できるように「ゲーミフィケーション要素は必ず盛り込みたい」と語った。

アンバサダー起用は「適切な窓口から適切なタイミングで」

 黄氏にとって、本格的なハードウエア開発はMIRROR FIT.が初の試み。海外の工場に製造を委託している部分については、「意図がなかなか伝わらず、出荷直前に不足しているものが見つかることもある」そうで、開発は苦労の連続だったようだ。しかし、それすらも同氏は前向きに捉え、「そこで諦めずに完成させたとき、ものすごく高い参入障壁になる。ハードウエア開発は壁が高ければ高いほど自分たちの競争力が増す」と力を込める。

 「僕の知識、見えている世界は、世の中全体からすればわずかなもの。常識の再定義とは、人の常識を受け入れて、それを自分の知識に入れつつ、自分の常識をしっかりもつこと」という言葉からも、黄氏のビジネス、あるいはMIRROR FIT.という新しいデバイスにかける信念の強さがかいま見えるセッションだった。

 なお、すでに先行販売分が売り切れてしまったため、MIRROR FIT.を購入したくても本格販売が開始するまで待たなければいけない。ただし、東京・代官山にある同社のオフィス兼ショールームでは、製品に触れて使い心地を確かめることができる。各地で体験イベントを開催する予定もあるとのことで、気になる人はぜひチェックしておきたい。

 余談ながら、バチェロレッテ・ジャパンの参加者として争ったほかの男性メンバーとは今も懇意にしているそう。もしかしたら、かつてのバチェロレッテメンバーがMIRROR FIT.のトレーナーとして登場することもあるのかもしれない。

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