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土木とITをつないだプログラミングコンテストという選択肢--鹿島建設とAtCoderの新たな挑戦 - (page 2)

加納恵 (編集部)2021年03月02日 08時30分
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鹿島建設のイメージが「どうして」から「面白そう」に変わる瞬間

――エンジニアにとっていい環境をどうやって整備されていったのですか。

三浦氏 A4CSELの開発に関しては、これまでにない建設生産システムを創り出そうと、コンセプト作りの部分から意見を出し合って決め、現状技術では難しい部分が出たら、今の作業のやり方自体を変えられないかなど、工夫の範囲や余白を多く残しているつもりです。建設現場で使うものですから、適用する時の制約はいろいろありますが、そこを自分たちで考えながら、少しずつでも前に進むという文化にしています。

 また「期限は◯◯まで」ではなく、目標で管理する形にしています。研究的要素も多いので、日常の進捗よりも、目標設定をして、そこにどうやって到達していくか、最新技術が開発されたときにどの部分を取り入れるのか、一人ひとりが考えながら仕事をしていける環境にしています。

高橋氏 こういうお話を聞いているだけでも、楽しそうな職場だと感じるんですよね。

三浦氏 全体的に保守的だと思いますよ。会社自体も大きいですし、そう簡単に変われない、過去に踏襲してきたやり方も多く残っています。今までは次々に新しい人が入ってきて、それで現場を回すことができた。しかし、建設業界で働く人がどんどん少なくなる中、過去のやり方ではもうやっていけない。新しいやり方を考えた結果、今があります。

――今回「鹿島建設プログラミングコンテスト2020」として、オンラインプログラミングコンテストを実施されました。成果はいかがでしょうか。

高橋氏 プログラミングコンテストは、AtCoderが企画、運営して、その後のことは鹿島建設の方におまかせという形です。募集を開始した時点では「なぜ、鹿島建設が」という戸惑いも参加者の中に見られましたが、募集ページ内で「なぜ鹿島はAtCoderユーザーを必要としているのか?」に触れたり、土木をコードで書き換えろ。の動画を流したりすることによって、印象が「鹿島建設って面白そう」に変わったんですね。

 これはAtCoderがやったからというよりも、鹿島建設の面白さがきちんと伝わったからだと思っています。私たちの役割はありのままの姿を伝えること。それがエンジニアから見ていいものだったら、きちんとしたフィードバックが得られるのだと思います。

三浦氏 AtCoderさんのコンテストを受けて鹿島を知ったという人もたくさんいて、コンテストを実施させていただいて良かったと思っています。ただ、そうしたありがたい状況だからこそ、われわれの実態を正しく理解してもらって、ITエンジニアの方のイメージとの間に差を生じないようにと心掛けています。一番嫌なのはミスマッチなんです。これは私たちにとっても、エンジニアの方にとってもお互いが不幸なので、できるだけ避けたい。実際、プログラミングコンテスト開催後に、問い合わせをいただいた方がいるのですが、先日、開発現場に来ていただいて何をどんな感じでやっているかを見てもらっています。

「一番嫌なのはミスマッチなんです。これは私たちにとっても、エンジニアの方にとってもお互いが不幸なので、できるだけ避けたい」三浦悟氏
「一番嫌なのはミスマッチなんです。これは私たちにとっても、エンジニアの方にとってもお互いが不幸なので、できるだけ避けたい」三浦悟氏

高橋氏 やはり、ITエンジニアが就活しようと思ったとき、最初に見るのはゲーム会社やIT企業、メガベンチャーだったりするんですよね。建設会社はまず探さないし、「仕事の内容がわからない」と感じている人も多い。ITでゲームは作れると思っても、ダムが作れるとは想像ができない。それが自動化まで見据えた話になると道のりはさらに長い。でも、鹿島建設ではすでにA4CSELがあり、設備が整っている。こうした現状にITエンジニアが触れることによって「すごくおもしろそう」と感じてもらえたと思います。ITとは遠いと思われていた業界でも、その入口に来ている企業は多い。鹿島建設もその一つなので、ITエンジニアが目を向けるべき方向だと思っています。

三浦氏 ただ、ここまで来るには10年かかっていますからね(笑)。建設現場の自動化を考え始めたのが10年前。当時はまだ形もなくて、自分たちで作るところからはじめました。2020年には鹿島が考える「土木の未来」を体感できる施設として「KAJIMA DX LABO」もオープンしています。こうした取り組みは、10年前はもちろん、現時点でも切実なニーズではなく、さらに労働人口が減ってしまう10年先を見据えてのもの。先のニーズに投資するのは、旧来の建設業では難しい選択でしたが、鹿島建設では、常に10年後の状況を見据え、取り組んでいます。

宇宙にも広がる現場の自動化、ともに成し遂げるITエンジニアを

――ITエンジニア採用に向け、コンテストという新たな入り口が見つかりました。今後の課題はいかがでしょう。

三浦氏 先程、ITエンジニアを受け入れる環境が整っていると高橋さんに言っていただきましたが、それが社内全体かというと、やはりそうではないんですね。構造改革しなければならない部分もたくさんあります。それを変えるという意味では、A4CSELの開発を広げていくことが大切だと考えています。核となる技術からいろいろな展開が生まれ、それが日常になり、さらに優秀なIT人材が参加してくれて、もっと面白いことを生み出していける好循環を作ることが重要だと思っています。

 例えば、小惑星探査機「はやぶさ」は、宇宙や星が好きな人だけではなくて、ロケットやエンジンが好きな人も開発に数多く関わっていますよね。そういう多くの人に望まれるプロジェクトを作っていくことが、使命だと思っています。

高橋氏 正直、かなりうまくいっていると思います。ITエンジニアの中に鹿島建設の認知が広がれば、もっと人を惹きつけられるはずです。三浦さんのお話を聞くと、当初4~5人で始めた自動化施工推進室も現在の規模にまで大きくなって、受け入れ体制も整っている。これは理想的な環境で、DXしようと考えている企業の見本だと思います。AtCoderは、エンジニア人材をご紹介するのが仕事ですが、環境が整っている企業はまだ少ないという印象ですね。

「ITエンジニアの中に鹿島建設の認知が広がれば、もっと人を惹きつけられるはず」高橋直大氏
「ITエンジニアの中に鹿島建設の認知が広がれば、もっと人を惹きつけられるはず」高橋直大氏

――今後の取り組みについて教えて下さい。

三浦氏 ダム工事に対する自動化はA4CSELとして形にしていますが、一方で危険な現場の自動化も進めていきたいと思っています。山岳トンネル工事などではダイナマイトが必要な現場はまだ多いですし、そうした現場の作業は、特殊な技能を持った職人の方に限られてしまう。そうした作業を機械が肩代わりすることで、現場の危険というのは大きく減らせると思います。

 私たちの現場は地球上だけでなく宇宙にも広がっていて、月面に拠点を作るという構想もあるんです。そうしたときにも自動化は必須です。この自動化をともに成し遂げてくれるITエンジニアの方を今後も積極的に採用していきたいと思っています。

高橋氏 鹿島建設の中には面白そうな、興味深い仕事がたくさんあるので、どんどん人を送り込まないとだめですね。ただ、面白いなと感じても、実際に就職してみようとなると不安を抱える人は多いと思います。そうした人たちに対するアクションとして、最初はインターン的に働いてもらったり、実際に先に就職した人に話しをしてもらったりする機会があるといいと思います。単なる一過性のものではなくて、ITエンジニアを獲得する動きを継続的にやることが、最終的な成果につながってくるのではないでしょうか。

 また、仕事を探している人に対しては、視野を狭くせず、あらゆる手段を検討してもらいたいと思います。関係ないと思っていた業種でも、ぴったりとした仕事がみつかるかもしれませんし、情報を狭めずに取り組んでいただきたいですね。

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