今回の取り組みの狙いについてENEOS 未来事業推進部 事業推進第1グループマネージャーの吉田貴弘氏は「ENEOSのサービスステーションの拠点を有効に活用しながら自動走行デリバリーインフラを構築したい」と語る。
「サービスステーションをロボットの一時待機や充電を行う運用拠点とし、近距離自動集荷・配送を実現したい。飲食店やスーパーなどから自宅に届けるようなプラットフォームの構築を目指していく。B2CやB2B、C2Cなどさまざまなものがあるが、今回はB2Cの構築を目指す」(吉田氏)
フードデリバリーサービスの現状と課題について、吉田氏は「市場規模が年々大きくなっているだけでなく、コロナ禍の影響もあって急拡大しており、注目度も高い」と語る。
「一方で高齢化社会に向けた人手不足や交通事故など、高い危険性が社会課題として出ている。コロナ禍においては『非接触』というテーマもあり、世界に遅れることなく日本でもロボット配送を実施していくニーズが高まっていくと感じている。その課題を解決するためには、自動走行ロボットが一つの解になるのではないかと思う。安心・安全・非接触の宅配サービスをお客様に提供すべく、ここにたどり着いた」(吉田氏)
今回の実証実験では、主にビジネス検証と技術検証を行う。
「まずは事業のビジネス性を検証する。ロボットが運ぶため、価格はどれくらいまで許されるのか。配達までどれくらい時間がかかるのか。価格と時間を合わせた許容度をお客様に問いたい。ロボットを動かすためには稼働率も重要になるため、採算性も検証できればと考えている。もう1つは技術の可能性だ。今回はエニキャリ、ZMPの2社と連携するので、そこがうまく連携できるか、満足いただけるようなシステムになっているか。ロボットが公道を走行することに対する可能性を示しながら、規制緩和に向けた提言ができればと考えている」(吉田氏)
2月8日から3週間にわたって実証実験を行いながら顧客の反応を確認しつつ、システム連携や公道で走行する上での技術的な課題をあぶり出しながら、「ビジネスとして成り立つことを目指して実施する」と吉田氏は語る。
「今回は万が一に備えて一緒に歩いて行かなければならない状況だが、遠隔監視をすることで、より多くのロボットを運行できるようになる。今回は域内の一部だが、それを全域に広げていきたい。2021年度は課題を解決する提案をしながら再度お客様のご意見を伺い、22年度には月島エリアで先行的にビジネス展開を行いたい。23年度以降になるが、新たな場所に展開していきたいと考えている」(吉田氏)
ZMP ロボライフ事業部長の龍健太郎氏はデリロについて「歩行補助車としての認定を受けて実施する」と語った。
「昨年度はデリバリーロボットをどう公道で走らせるかを協議し、警察庁からはサイズ的にも原動機付き自転車で始めようと言われた。しかし歩道を走るためには道路運送車両法の保安基準に合わせてナンバーやライトなどを付けなければならず、非常に厳しかった。現行法規の中でいかにロボット走行を実用化させるかを検討する上で、われわれもパイオニアとしての情報をインプットして協議した結果、ZMPのロボットは『歩行補助車』としての実績あるため、そこで認定を受けられた。人を近くに付けて行う『近接監視・操作型』としてスタートし、この先さらに遠隔型(遠隔監視・操作型)へと進んでいく。さらに法規制の整備が進むか、新しい法規制が出る可能性があるが、そこに対してもわれわれが情報をインプットしていきたい」(龍氏)
実証実験の実施に当たっては、数多くの対象住民の利用が重要になるが、エニキャリ 営業企画本部 執行役員の大石平氏は「私有地や公道などが混在するため住居の方々の理解が必要になるので、事前に調整した」と語る。
「参加するマンション3棟の管理組合理事会の了承を得て、対象の約1000戸に対してポスティングによる実証実験の告知を行った。今回は(エニキャリのサービスとは別に)特設サイトを用意しており、そちらでの注文はすべてロボットで行う仕組みになっている」(大石氏)
ユーザーの利用は「現状ではまだ1日2~3件」(吉田氏)とのことだが、「ユーザーにアンケートを取ったところ、全体的に『いい体験だった、またこのサービスを利用したい』という声が多数だった」と吉田氏は語る。
「ロボットがかわいい、防犯面・衛生面で安心感があるといった意見があった。子供たちから手を振られるなど、非常に溶け込んでいる感じだ。ロボットが街に溶け込むというのはこういうことなのかなと感じている。移動スピードは時速4km程度と制約があるが、注文して届くまでの時間としてはこんなものかなという意見をもらっている。この意見を踏まえて、できる限りスピードを上げていくことも検討したい」(吉田氏)
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