住宅でもあり、ホテルでもある、新たな住まいの形「NOT A HOTEL」が登場した。手掛けたのは、SaaS型Eコマースプラットフォームを展開していたアラタナの設立者で、ZOZOテクノロジーズ取締役も務めた濵渦伸次氏が率いるNOT A HOTEL。建設予定地の選別から、パース制作、販売、アプリの開発までを担う。
NOT A HOTELは、自宅や別荘として購入した住居を、旅行や出張など、家を空けるタイミングで、別の人にホテルとして貸し出せるというもの。民泊のようなサービスをイメージしてしまうが「民泊は、オーナーが運営までを担うが、予約受け付けや清掃、アメニティの用意など、宿泊に必要な業務はすべてNOT A HOTELが引き受ける。オーナーは、アプリで日付と『HOTELにする』を選ぶだけ」とNOT A HOTEL 代表取締役の濵渦伸次氏は、違いを示す。
濵渦氏は、ECやアパレル業界に長く携わっており、不動産、ホテル業界への参入は初めて。「シンプルにホテルや建築、家具が好きで、自宅も好みの形にリノベーションしてきた。2007年にアラタナを起業し、2015年にZOZOに売却。以降も数年間はアパレル業界に携わってきたが、次は好きなことをと考え、NOT A HOTELを設立した。元ボスである前澤友作さんの仕事ぶりを間近に見ていたことも影響していると思う(笑)」(濵渦氏)ときっかけを話す。
物件は2021年夏の販売開始を目指しており、現在、第1号となるNOT A HOTELを予定。SUPPOSE DESIGN OFFICEが設計を手掛けたパースデザインが出来上がっており、今後は宮崎県や栃木県にも物件を計画中だ。
「初期の段階では自然豊かな土地を探し、作っているので、別荘のような使われ方を想定している。別荘を購入したけれどあまり活用できていない人は意外と多い。ホテルとして使い分ける提案をしていきたい」(濵渦氏)とオーナー像をイメージする。
各物件は、パースデザインを見せ、購入の意向があれば建築に取り掛かるという流れ。そのため内見などはなく、販売もオンライン。アプリ上で「カートに入れる」を選択すると購入できる。
現在、全国7カ所約30部屋の取り扱いを計画しており「30人のオーナーを獲得し、年間で1万泊程度の規模でやっていきたい。オーナーと宿泊客の両方を集めるビジネスモデルだが、まず、オーナーの獲得を優先している。オーナーはほかのNOT A HOTELを相互利用でき、宿泊費は清掃費用などの実費を除いて無料。世界中に自分の家が増えていくような感覚を味わってもらいたい」(濵渦氏)と、オーナーならではの特典も用意する。
濵渦氏が見据えるのは、宿泊体験の変化だけではない。NOT A HOTELでは、航空券の手配や宿泊先でのアクティビティなど、旅行に関する全てを一気通貫で用意するシステムも整える。「チェックインとアウトの時間を決めるだけで、その間に何をするかAIがおすすめしてくれる。おすすめ内容にOKすると、航空券の手配やアクティビティの予約が可能。旅行前、中、後とすべての工程をサポートできる」(濵渦氏)と宿泊サイトとの違いを説明する。
建設地として予定するのは「メジャーすぎない場所。絶景地を見つけて、良い建築を立て、そこを観光地にできたらいいなと考えている。いいところはあるのに、ホテルがなくて宿泊ができない場所は結構多い。そういう場所にもNOT A HOTELであれば作ることができ、いろいろな地方を知ってもらうきっかけになればいい」(濵渦氏)と、基準は明確だ。
宿泊費は物件によって異なるが、1泊10万円前後を予定する。「10万円と聞くと高く感じるが、各物件は100平方メートル以上のスペースがあり、平米単価から見るとインパクトがある。予約も自社アプリを使うことで、料金を抑えられるようにしている」と競争力も確保する。
自らもNOT A HOTELのオーナーになるという濵渦氏。「一般的にホテルは画一的なフォーマットであれば効率がいいし、不動産を投資商品として考えると利回りの良さなども求められる。NOT A HOTELはそういうものではなくて、『エモさ』が加わっていることが重要。それが1つの魅力になると思う」と話す通り、濱渦氏自身も大好きというサウナを全室に設置するなど、単なるホテルにとどまらない遊び心も取り入れる。
全室にはオーナー専用の部屋を設け、貸出時は私物を保管しておけるとのこと。濱渦氏は「地方の宝物みたいな場所を見つけて、そこを広く紹介していきたい。大事なのはユニークさ。ユニークなホテルを作っていきたいと思っている」と濱渦氏はNOT A HOTELの将来像を描く。
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