NTTは2月5日に2020年度第3四半期決算を発表した。営業収益は前年同期比1.4%減の8兆7380億円、営業利益は前年同期比3.6%増の1兆5023億円と、減収増益の決算となった。
同日に実施された決算説明会で、同社の代表取締役社長である澤田純氏はその詳細を説明。新型コロナウイルスの影響によってNTTドコモ(以下ドコモ)の端末機器収入が減少したり、海外での会計処理が変更されたりしたことなどで減収となった一方で、ドコモのスマートライフ事業の増益や、海外での収支改善により増益になったとのこと。また当期利益はドコモの完全子会社化による利益取り込み影響が190億円あったことなどから、343億円増益の8312億円と過去最高の値になったという。
また同日の決算会見では、ドコモの代表取締役社長である井伊基之氏も登壇。同社はNTTの完全子会社となったことで上場廃止となったが、NTTの決算説明会の中で同社の決算内容について説明することとなったようだ。
それによると、営業収益は前年同期比0.1%減の3兆5131億円、営業利益は前年同期比4.3%増の8218億円とこちらも減収増益の決算となったが、井伊氏は「年間業績予想に対して順調に進捗している」と説明。主力の通信事業は新型コロナウイルスの影響や、「ギガホ」「ギガライト」などによる顧客還元などの影響もあり減収減益だが、スマートライフ領域は増収増益と好調で、通信事業の落ち込みを支えている。
同社の基準指標となる「dポイントクラブ」の会員数は7967万に達し、「間もなく8000万に達する見込み」と井伊氏は説明。dポイントの利用も順調に拡大しているほか、5Gの契約数も141万と順調に拡大しているとのこと。一方で、携帯電話回線の解約率は0.47%、ハンドセット解約率は0.39%と一層低下しており、番号ポータビリティ(MNP)に関しても2020年12月は2009年1月以来、約12年ぶりにプラスに転じるなど、非常に好調だという。
その要因について井伊氏は、1つに「ahamoの登場で流出がかなりストップし、転出が抑制された」ことを挙げる。そしてもう1つ、2020年10月以降ドコモショップや量販店での販売促進を強化し、既存プランの契約が伸びたこともMNPの転入超過には作用したとしており、2021年1月もMNPでの転入超過に自信を示している。
またそのahamoに関して、井伊氏は3月26日にサービスを開始すると発表したほか、対応端末も3月1日に発表するとのこと。さらに事前エントリー数も決算発表会同日時点で100万件を突破、非常に大きな伸びを示したことを明らかにしている。
あくまで事前エントリーの数とはいえ、井伊氏もこの伸びについては「全くの想定外。年間で100万(契約に)行けばいいなと思っていた」と驚いている様子だ。その内訳は「若干ドコモユーザーが多い」とのことで、他社からの流入も多いと見られるほか、年齢層についても「ほぼ半分が20、30代」と、若い世代を狙ったという同社の想定通りだと井伊氏は説明する。
一方で、ahamoなど携帯大手が低価格の料金プランを相次いで投入したことはMVNOの危機感を高めており、テレコムサービス協会MVNO委員会が総務省に要望書を提出、データ通信の接続料や音声の卸料金の大幅な引き下げなど緊急措置を求めている。この点について井伊氏は「音声卸料金は引き下げを年度内に進める」と回答したほか、データ通信に関しても卸による提供を検討しており、MVNOが回線を借りる際に卸と接続料、どちらで契約するかを選べる仕組みを年度内に用意する考えであることを明らかにした。
スマートライフ領域に関しては、金融・決済事業が積極的な加盟店開拓やプロモーションなどで堅調に伸びており、取扱高は前年同期比33%増の5兆の800億円に達したとのことだ。ドコモはahamoなどの投入で今後通信事業の一層の減収が見込まれており、それを支える上でも非通信事業を伸ばすことが求められているが、とりわけ今後注力していくのは金融事業になると井伊氏は話す。
その具体的な策として、井伊氏は1つに決済事業の強化を挙げており、「dカードやd払いはまだまだ強化する余地が残っている。加盟店が増えても決済の利用回数や金額などで負けているところがあり、強化していかないといけない」と話す。そしてもう1つ、パートナー企業と連携して金融関連の商品自体を増やしていくことも明らかにしている。
また終了を発表した「dデリバリー」などコンテンツ・サービス関連の事業については、「負けているものは撤退も含めしっかりした方針でやっていく」と再編の可能性も示唆。一方で、サービスをパートナーに依存するだけでは競争に勝てないことから、自社とパートナーが提供するサービスのバランスを取って採用し、強化を図っていきたいとしている。
なお、NTTはNTTコミュニケーションズやNTTコムウェアをドコモの子会社化にする予定であることをすでに打ち出しているが、その進展について澤田氏は、関連企業とワーキンググループを作って検討を進めている最中と説明。一方で、競合他社はこの子会社化に関して公正競争上の懸念を訴え、総務省で議論されている最中だが、澤田氏は「NTT東西とNTTドコモ、NTTコミュニケーションズの間の公正競争条件は現在も担保できていると考えているが、議論の状況を見ながら検討を深めていきたい」と答えた。
またNTTは2020年、ドコモの完全子会社化に加えNECへの出資も実施し、同社が掲げる「IOWN構想」などによって日本の情報通信産業の競争力を強化しようとしている。2月3日にはその一環として、ドコモが海外での事業展開に向けた「5GオープンRANエコシステム」と「海外法人5Gソリューションコンソーシアム」を発表している。
澤田氏は通信産業の国際競争力強化について、「各社の値下げが市場を活性化することになると思うし、その中でも5Gには積極投資しようとしている」と、競争を通じて国内産業が強化されることが競争力向上につながると認識しているとのこと。通信設備などの製造業に関しては、IOWN構想や、ドコモが力を入れるオープンRANへの取り組みが拡大することで、「日本の通信機器メーカーが海外の顧客から受注したり、(受注を)検討されたりしている」と、競争力強化の兆しが出てきていると説明する。
そのドコモによる海外での展開については、これまで幾度となくチャレンジが続いたものの大きな成果を得るには至っていない。そうした中、5GオープンRANエコシステムなどで再び海外での事業展開を積極化することについて、井伊氏は「オープンRANはNTTドコモに蓄積した技術がある」と、同社が積極的に取り組み多くの技術的知見を獲得していることが強みになると説明。ドコモが力のある分野で海外展開していく点が、従来とは異なるメリットになるとの考えを示した。
さらに澤田氏は、オープンRANをはじめとしたオープンな技術を他国にも広げ、その上で信頼できるパートナー獲得することで、オープンRANだけでなくその先の6G、そしてIOWN構想の実現に向けた素地を作っていきたいとしている。
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