KDDIは1月29日、2021年3月期第3四半期の決算を発表した。売上高は前年同期比0.5%増の3兆9238億円、営業利益は前年同期比3.2%増の8710億円と、増収増益の決算となった。
KDDI代表取締役社長の高橋誠氏によると、業績の伸びをけん引しているのは、同社が成長領域と位置付けるライフデザイン領域とビジネスセグメントとのこと。いずれも年間目標に対して70%以上の進捗率を達成するなど好調に推移しているという。
ビジネスセグメントに関しては、とりわけIoT向けの累計回線数が2020年12月時点で1600万と、期初目標の1500万回線を上回って達成するなど好調とのこと。そのけん引役はコネクテッドカーやスマートメーカーとのことだが、今後も感染症対策など、IoT回線を活用したさまざまなサービスをパートナー企業と共同で開発していくとしている。
ライフデザイン領域も、決済・金融取扱高が前年同期比1.4倍の6.5兆円に達し、「au PAYクレジットカード」の会員数も610万を超えるなど順調。au PAYのポイント・決済加盟店数も355万カ所を突破するなど大きく伸びており、今後も強みとしている決済・金融サービスを中心に強化を図るとしている。
主力事業であるモバイル通信事業に関しても、au総合ARPA収入、そしてUQ mobileとMVNOの収入がともに年間目標70%以上で推移するなど好調を維持しているとのこと。
今後は「au」と「UQ mobile」ブランドの新料金プラン、そしてオンライン専業でオプションを手軽に追加できることが特徴の料金プラン「povo」を投入予定。1月13日にこれら料金プランを発表して以降「モメンタム(勢い)が戻ってきている。前向きな反応だった」と、市場から好感触が得られたと高橋氏は話す。
とりわけ注目度合いが高いpovoに関しては、2月1日から先行エントリーキャンペーンを実施することを明らかにし、「競争に打ち勝っていきたい」(高橋氏)とのこと。ただpovoに関しては、武田良太総務大臣が料金の仕組みが他社と異なるため「非常に紛らわしい」と発言したことで話題となったことから、高橋氏は「分かりやすく説明しないといけないと思っている」と、他社との料金の仕組みの違いについて丁寧に説明していくとした。
またpovoの競合となるNTTドコモの料金プラン「ahamo」が、「ファミリー割引」のグループの人数カウント対象となるなど一部の仕様を後から変更したことについて、高橋氏は「市場環境を踏まえ適切に、前向きに対応していきたいと思っている」と回答。サービス提供開始の3月までには、同社としての方針と詳細を明らかにするとのことだ。
なお高橋氏によると、新プランによる料金引き下げの影響で今後ARPUが減少傾向に向かうとのことだが、新規契約の増加やデータ通信の利用増加によって成長を目指したいという。現状まだ見直しの方針が明らかにされていない、auブランドの「Netflix」などとのバンドルプランに関しても、3月に新料金プランを発表することを明らかにしている。
ただ新料金による引き下げの影響は、とりわけ来期以降の業績に大きく響いてくると考えられる。高橋氏はテレワークの活用に向け本社の座席数を4割削減するなど、コスト削減を進めるとともに通信以外の領域を拡大することでカバーしていくとしており、来期に関しても「増益を狙ってプランを作っていきたい」と自信を示した。
また同日に発表された楽天モバイルの新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VI」について、高橋氏は発表直後で把握しきれていないと断りつつも、UQ mobileからauへの移行が前年対比3.7倍で増えていることを例に挙げ「小容量だけが重要ではないと思っている」と回答。当面は新料金プランで対抗する考えを示した。
ちなみに今回のKDDIの新料金プラン発表で、相対的に楽天モバイルへのローミング料金が割高となってしまったが、高橋氏はその見直しに関して、楽天モバイル側と「今の所議論はしていない」と話す。
5Gに関しては、3.5GHz帯、700MHz帯といった既存周波数帯の積極活用によるエリア拡大を推し進める予定で、2021年春には山手線と大阪環状線の全駅周辺をエリア化するとのこと。5G対応端末に関しても、「iPhone 12」シリーズの好調などによって累計販売台数が120万台を突破したことを高橋氏は明らかにした。
一方で、現状の5Gは4Gと5Gを一体で運用するノンスタンドアローン運用で、高速大容量通信を生かしたソリューションしか提供できないことから法人契約はまだ限定的とのこと。法人分野での本格活用が広がるには、5G単体で運用するスタンドアローン運用への移行が必要との認識を示した。
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