毎年数百人が応募するNTT Comの新規事業創出社内コンテスト「DigiCom」--運営チームが語る舞台裏 - (page 2)

コロナ禍の「完全オンライン」でも成長しつづける

——2020年度はコロナ禍での実施となりましたが、教育プログラムなどもオンラインで提供されたのでしょうか。

片山氏:はい。セミナーのライブ配信や、都合が合わないメンバー向けのアーカイブ配信、また毎月のメンタリングについても、今回はフルオンラインで実施しました。

——前回まではリアルで実施していたんですよね。

片山氏:そうですね。前回まではすべてリアルで実施していました。

——リアルで教えてもらったほうが熱量が高まることもあるかと思うのですが、リアルとオンラインの違いや、オンラインで工夫したことなどを教えてください。

片山氏:オンラインにして一番いいなと思ったのは場所を選ばないことです。われわれは全国に支店がありますので、地方の支店はリアルだと受講しにくいという面があったのですが、そこをカバーできます。オンラインを活用すれば、社内のみんなが同じ条件で教育を受けられます。逆に難しかったのは、オンラインだと長時間のプログラムは受講者がしんどいという点です。これに対しては、コンテンツを長くても2時間くらいに細切れにして、宿題を出して確認をするなど、進め方を工夫しました。

テ氏:DigiComもBI Challengeもそうですが、コミュニティを重視しています。というのも、新規事業という誰もプロではない道に挑む皆さんは仲間であり、切磋琢磨しながら取り組んでもらいたいと考えているからです。今回は、このコミュニティ形成もオンラインになったため、夜ではなくランチ会を実施する、ワンクリックで入れるなど、「すぐに参加できる手軽さ」を追求しました。

オンラインを活かした気軽に参加できるイベントを企画したテ氏
オンラインを活かした気軽に参加できるイベントを企画したテ氏

——続いて、イベント本番ですね。私も視聴させていただきましたが、ライブ配信専用のページやリアクション機能などをしっかりご用意されていた印象が強いです。完全オンラインに切り替えたこと、振り返ってみていかがでしたか?

斉藤氏:DigiComは7月の予選会と11月のDemodayを、オンラインに切り替えて実施しました。実は9月くらいまでは、オンラインと対面の両方の可能性を視野に準備を進めていましたが、盛り上がるからといって皆さんの危険を犯してまで対面でやるという選択肢はなかったですね。オンラインでも、あまりお金をかけず知恵を絞って工夫することで熱量を担保する方策を検討しました。

——具合的には、どのような工夫をされたのでしょうか。

斉藤氏:プレゼンの方法も教育プログラムで教えてはいましたが、DigiComで大切にしたいのは、上手に発表することではなく、そのチームが何をやりたいのか、なぜやりたいのか、根底にある想いが視聴者に伝わると良いなと思っています。そのため、オンライン開催でも発表を録画して流すことはせず、リアルタイムで発表してライブ感を出すことにこだわりました。ライブ感を出す上で重要なのは映像を配信するプラットフォームです。発表者、審査員、幹部の方々にはTeamsに参加いただき、その様子を自社の超低遅延映像配信プラットフォームを使ってライブ配信をしました。

 これまでも、東京以外から参加しているDigiCom参加者の同僚や上司向けに限定的にオンライン配信は行っていたのですが、今回はもっと多くの人に見ていただけるように社内全体に広げて配信できる環境が必要でしたし、私たちイノベーションセンター内の技術メンバーに当日サポートいただいたので心強かったです。

 また、オンラインだからこそのインタラクティブ性も大切にしました。Teams内ではチャット機能を活用し、審査員以外の幹部の方々も発表に対してリアルタイムにコメントできるようにしましたが、各発表ごとに沢山のコメントをしてくださいました。当初は幹部の方に「チャット打ってください」と気軽にお願いしていいのかな?とも思ったのですが、実は役員から「オンラインなんだから、チャットにどんどん打てばいいじゃない」と言っていただいて。講評時間の短縮にもつながり、テンポよく進行することができたと思います。

——社内の反響はいかがでしたか。

斉藤氏:視聴者アンケートの回答では、「長丁場なので視聴しながら仕事しようと思っていたけれど、発表に集中してしまって、いい意味で仕事に手がつきませんでした」「オンラインでも熱意が伝わってきました」といったコメントをいただけて、オンライン開催でも熱量を伝えることができたのではと手応えを感じました。

「個人の原体験」から「社会課題」への昇華

——最後に2020年度に見えてきた課題と、2021年の展望についてお聞かせください。

渡辺氏:2020年度は「ビジネスイノベーション」をテーマに舵を切ったなか、幹部の方々からは「レベルが上がった」と言っていただきましたが、イベントとして盛り上がっても、求められている「事業化」というところにはまだまだです。今後も引き続きBI Challengeで支援していきたいと思います。

 2021年度は、事業化のスピード感や規模感をさらに加速させたいです。視座を高めつつも、それだけだと細部がぼやけてしまったりするので、「精度を高めつつもどうやって大きいビジネスを早く実現していくのか」を検討し、DigiComをBI Challengeのステージ1、2、3まで入れるなどの具体策も含めて改善していく予定です。

大貫氏:言葉は適切でないかもしれませんが、現在のDigiComは運動会みたいなものだと思います。目標があれば皆さん、それに向かってしっかり取り組む。だから運動会としてはそれなりの盛り上がりを見せる。しかし、それが終わるとみんな学業やバイトに戻ってしまう、みたいな。DigiComが終わったあとも、そこで高まったマインドや鍛えられたところをさらに高めていくことが必要です。「イベントにて承認されて満足し、そこで終わってしまう傾向があるのはなぜなのか?」を、われわれ事務局もそうですし、参加していただく方にも問いかけていきたいと思います。

 また、予選会では審査員として全てのチームのアイデアを審査しましたが「個人の原体験」みたいなものからくるアイデアがまだまだ多いですね。もちろんそれは是ですが、「個人の原体験」をいかに「社会課題」まで昇華できるかが大切です。そして、その課題をどう解決し、どう事業化に結びつけていくのを、2021年度はさらにトライしていきたいです。

斉藤氏:何か新しいことを始めてそれを続けていくためにも、DigiComの「ワクワクするような非日常感」と、BI Challengeでの「日常的な地道な支援」のバランスを取りつつ、新規事業創出の流れをうまくバトンタッチしていけるよう取り組んでいきたいと思います。

——新型コロナウィルスの状況にもよると思いますが、2021年度のDigiComの開催方法について、現時点で考えていることはありますか。

テ氏:コミュニティ形成に関しては、手軽に参加できるというメリットを感じた反面、1人が話すと場がそちらに傾くというの課題もあるので、もう少し気軽に喋れる環境を作りたいです。また、参加者同士だけではなく、外部から新規事業のプロの方をお招きして質問したりアイデアをぶつけるようなことも、今後は考えていきたいなと思っています。

片山氏:2020年度はオンライン比率が一気に上がり、外部のいろいろな人にアクセスしやすくなったり、巻き込むことが容易になったというメリットがありました。自分たちのアイデアが本当に世の中に求められているのかの検証や、より大きな事業をスピード感を持ってつくるためにも、外部のスタートアップなどをもっと早期に巻き込んでアイデアをブラッシュアップしていくことで、オンラインの可能性を最大限に生かした事業開発を進めていきたいです。

渡辺氏:状況が許せばですが、発表はリアルで幹部たちにその熱気を感じ取っていただき、勤務地が異なる社内の視聴者はオンラインで都合がつけばぜひ見ていただくなど、リアルとオンラインのよいところを取って進めていく“ハイブリッド”を推進していきたいですね。

事務局のメンバー5名は2020年4月から一度も対面では会っていない。すべてリモートでディスカッションしながらDigiComを実施してきた
事務局のメンバー5名は2020年4月から一度も対面では会っていない。すべてリモートでディスカッションしながらDigiComを実施してきた

CNET Japanでは2月1日からオンラインカンファレンス「CNET Japan Live 2021 〜『常識を再定義』するニュービジネスが前例なき時代を切り拓く〜」を1カ月間(2月1〜26日)にわたり開催中。2月19日のセッションでは、DigiComのキーパーソンであるNTTコミュニケーションズ イノベーションセンター プロデュース部門の斉藤久美子氏や、今回のDemoDayで1〜3位に輝いたチームに登場してもらう予定だ。後半では質疑応答の時間も設けるので、DigiComの取り組みをより深く知りたい方はぜひ参加してほしい。

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