広島県は海と山、瀬戸内の島しょ部といった豊かな自然に恵まれている。「ちょっと広島県」を利用して、県内に滞在しながらビジネスを検討するのに最適な場所として紹介されたのが、広島県尾道市にある「ONOMICHI SHARE(オノミチシェア)」だ。
JR尾道駅から徒歩で行ける尾道市役所のすぐ近くにあり、目の前に瀬戸内ならではの美しい景色が広がるコワーキングスペースは、コンクリートの外観とはうってかわって温かみのあるウッドフロアーと落ち着いたインテリアが並んでいる。ドロップインでの利用も可能で会議室もあり、バーカウンターやロッカー、シャワールームも完備されている。コンシェルジュが常駐する「働」と「遊」が1つになったクリエイティブな環境は、しまなみサイクリングや瀬戸内クルージングなどのサービスもあり、福利厚生も兼ねたサテライトオフィスとしても利用できる。
観光の途中で立ち寄る人も多く、まさしくワーケーションにふさわしい場所だが、設立は2015年1月からとコワーキングスペースとしては早い時期にスタートしている。尾道市と、隣接する福山市の地方創生に取り組むディスカバーリンクせとうちが運営し、仕事の機会を生み出す場としてコロナ前はさまざまなイベントが開催され、南青山にある自由大学初の姉妹校、尾道自由大学のキャンパスとしても利用されている。
統括責任者でコンシェルジュを担当している後藤峻氏は、自身も尾道市への移住者であり、「普段の仕事はもちろんリモートワークの気分転換にもふさわしい場所だと自負しているが、働く目的やヒントを探すのにも適した環境だと考えている」と言う。
「たとえば、D-EGGS PROJECTに応募するアイデアを探すために短期滞在先としてONOMICHI SHAREはぴったり。観光地ならではの課題、隣の島へ移動を含めた交通手段の課題、商店街の再生など周囲を歩いて回るだけでもいろいろなヒントが見つかるはず。現地でのヒアリング先も紹介でき、相談に乗ってくれるパートナーを探すお手伝いすることも検討している」(後藤氏)
地域の課題は、住んでいると普通になってしまい、なかなか気がつきにくいものもある。異なる視点を持つ外部の人間が,実際に滞在することで、新しく生まれるひらめきもありそうだ。著者も1泊2日で滞在したが、古民家やアパートを改造してカフェやオフィスにしたり、夜中の11時から朝の3時だけオープンする古本屋など、新しい働き方にも協力してくれそうな印象があった。そこには仲介役となる後藤氏のような存在が見え隠れする。
尾道に対する関心は明らかに高まっており、後藤氏は相談が増えただけでなく急激に働く場になっているのを感じるという。「コワーキングスペースとしての価値を上げるのはソフトであり、ディレクションが大事だと考えている。誰と誰をつなぐと面白くなるかはいつも意識していて、尾道で働く人たちをつなぐライブ配信番組を立ち上げるなど、いろいろな形で尾道以外の人たちとも出会いの機会が生まれるようチャレンジしている」(後藤氏)
働く場所や働き方に対する考え方が大きく変わろうとしている今、このタイミングで県全体を実証実験フィールドにして支援するという広島県のプロジェクトはぴったりのタイミングだと言えるかもしれない。地域の課題をDXで解決するアイデアがどれだけ集まり、実証につながるのか。うまくいけば全国あるいは世界のモデルになるかもしれない。
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