広島県は11月26日、デジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一環として取り組んできた「ひろしまサンドボックス」の次のステップとして、デジタル技術を活用したニューノーマルを再定義するアイデアを募集し、実現に向けた実証実験を行うアクセラレーションプログラム「D-EGGS PROJECT(ディーエッグス・プロジェクト)」を開始することを発表した。
ひろしまサンドボックスは、人が集まって創作を繰り返しながら何度も試行錯誤できるAI/IoT実証プラットフォームとして2018年に開始した。農水産業、観光、交通、製造業などの産業分野で複数のプロジェクトが進行しており、各実証実験のプロジェクトで得られたデータを「データカタログサイト」でオープンデータとして公開するなどしている。
今回発表したプロジェクトは、3年目を迎えたひろしまサンドボックスの新たな取り組みとなる。ニューノーマルにおけるさまざまな社会課題を解決し、新しい価値観にフィットするアイデアを全国各地から幅広く募集し、広島県を実証実験フィールドに活用してもらい、事業化することを目指す。応募要項などの詳細はプロジェクトの公式サイトにまとめられている。
実証実験のための必要経費を1件につき最大1300万円支援するほか、広島県外の企業や組織が採択された場合には、広島県での実証実験に必要な交通費、滞在費、オフィス賃料などに対して最大1000万円の実費を補助する「ひろしまオフィスプランニング助成事業『ちょっと広島県』」も併用できる。
発表当日から2021年1月20日まで1次公募を実施し、1月31日に最大100件を選定する。さらに2次審査とパブリック評価を経て、4月中旬に最終選定結果を発表する予定だ。実証実験期間は発表後から10月中旬の計画で、成果発表もする。12月3日から事前相談会も開き、実証実験の間も事務局やメンターがサポートする。
アクセラレーションプログラム自体は長期的な構想に基づいて実施されており、広島県を舞台にしたイノベーション・エコシステムの形成を目指している。アイデアの実現では県内外の人材や企業のマッチングも行いイノベーションを促す。さらに事業全体を強力にサポートするエコシステムパートナーやスポンサー企業の募集も併せて実施する。そのため事務局組織は広島・東京を橋渡しする企業で構成されているという。
創業・シード期のスタートアップに特化したベンチャーキャピタルであるサムライインキュベート、AI・IoTエンジニアコンサルティングを得意とするワクト、広島県に本社がありローカルでのコミュニケーションプラットフォーム構築などを手がける第一エージェンシー(DIA)の3社が、それぞれの特性を生かして、プロジェクト終了後も広島県での事業展開を見込んだ長期的なサポートをする。
同日の記者会見の中では、広島県知事の湯崎英彦氏(※「崎」は「たつさき」が正式表記)がプロジェクトを正式発表した後、サムライインキュベート代表取締役の榊原健太郎氏とワクト取締役兼COOの星山雄史氏の3者によるトークセッションも開かれた。
榊原氏は「さまざまなアイデアを検証してきたサムライインキュベートの実績をもとに、ライフチェンジに挑む人を全力で支援したい」とコメント。9月に開始した、中四国エリアのVCと連携して起業家やスタートアップを支援する「中四国Startup Runway」のネットワークや、米国やイスラエルで起業を支援してきた経験を生かして、事業化から海外進出も視野に手取り足取りサポートするという。
星山氏は広島出身で東京で起業した経験から、シーズの創出やエコシステムの構築をサポートするという。「応募の入口は広く、アイデアはあるがソリューションがない場合はチームを組める相手を紹介することもできる。公募前の相談窓口も用意しており、とにかくアイデアと熱意が事務局に伝わるようにしてほしい」(星山氏)
湯崎氏は「コロナ禍で社会が変化し、ニューノーマルに対応する取り組みは長期的になると考えている。サンドボックスで一緒に何かやりたいなど、応募の動機は何でもかまわない。アイデアから実際に何かがうまれることが重要で、県としてもできるだけコミットする」とコメントした。
榊原氏は「自治体主導でありながら、新しいVCを作るのと同じくらい支援金額が大きいことに驚いた。創業経験がある知事ならではの取り組みではないか」と話し、全国でもこうした支援が拡がってほしいと述べた。
「採択はするが、とにかく何かを信じてやってみようと一歩踏み出した人たちをできるだけ支援する。新しいソリューションを生み出す挑戦者たちが全国から応募してくれることに期待する」と話す湯崎氏をはじめ、サポーターたちのプロジェクトにかける意気込みの強さが印象的なトークセッションとなった。
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