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出前館は「手数料競争には乗らない」--藤井社長に聞く2021年のフードデリバリー戦略

藤井涼 (編集部) 山川晶之 (編集部) 藤川理絵2021年01月03日 16時30分
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 出前館にとって2020年は、LINEへのグループ入りやコロナ禍における加盟店の急増など、大きな転換点の年となった。しかし、水面下では、2021年以降の飛躍に向けたさまざまな準備期間でもあったという。そこで、LINE傘下後の変化やUber Eatsとの棲み分け、「フードデリバリー日常化」に向けた2021年の取り組みなどについて、出前館 代表取締役CEOの藤井英雄氏に聞いた。

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出前館 代表取締役CEOの藤井英雄氏

出前館とLINEが組織的に融合

――まず最初に、2020年3月に出前館はLINEグループから300億円の出資を受けてグループ入りし、6月に藤井氏が代表取締役社長に就任されました。2020年を振り返ってみてどんな年でしたか。

 出前館のLINEグループ入りの話は2019年秋頃から出ていて、当時からLINE側として私が対応していたので、本当に1年が一瞬でしたね。LINEは自治体連携にも力を入れてきましたが、LINE側として自治体とデリバリーの話をする中でも、出前館と提携したいという声はよく出ていました。そういう意味では、出前館の社長にいきなり就任したという感じはあまりなかったです。

 11月に中村会長が退任されたことは、ビッグトピックです。LINE側から50名近くが僕と一緒に出前館に来てくれていますが、LINEが舵取りするということではなく、出前館に上手く融合していけたタイミングで、「予想以上に、藤井・藤原体制がワークしたので、今回の取締役会を機に」という形になり、もっといてほしいという想いはあったものの、会長の気持ち自体は嬉しかったですね。

――組織融合はうまくいったのでしょうか。

 組織が一体化しないと何も進まないじゃないですか。出前館はもともと、配送品質や加盟店への真摯な対応などを、とても大切にしている企業でしたが、その部分とLINEの企画力、開発力、マーケティング力がうまく融合できたと思います。

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 就任から3カ月ほど、10月くらいには手応えがありました。よくありがちな衝突はあまり感じなくて、逆に退職率が下がったのです。組織融合がうまくいくのか、こればかりは受け手側の気持ちもあるので、本当に分からなかったというか、でも結果的にはうまくいってよかったです。中村元会長も(社員と)同じことを想ってくださったんだなと感じました。

――もう少し解像度高く、それぞれの文化の違いや、融合による変化について教えてください。

 出前館は伝統的にトップダウンで営業が強い会社だと思います。僕はLINEが出前館に20%出資していたときに社外取締役として内部を見る機会も多かったのですが、開発には少し課題はあるものの、それを営業力で乗り越えてきた会社だと思っていました。

 LINEは、というかLINE全体は大きすぎて組織のトップによってカルチャーが異なるのですが、僕がやりたかった組織像はボトムアップです。並行的にいろいろなことを考えて動く組織を作りたいですし、権限と責任をセットで渡して自分たちで考えて動いてもらうことを望んでいます。僕も任せる立場として、会社全体として舵取りがおかしくなるようなら軌道修正はするのですが、ちょっとくらい違うなと思っても任せているからには任せ切らないといけないと思っています。

 社風が違う2社ですが、最近の変化としては、もともと出前館にあったトップダウンとLINEのボトムアップのカルチャーがうまく融合して、それぞれの組織で考えて動き出している感覚があります。

――トップダウンによる弊害みたいなものはありませんでしたか。

 組織で1つのオペレーションを行う場合にはトップダウンが効くと思うのですが、いまのように環境の変化が激しく、競合も多く、いままで誰もやっていないことをどんどん進めることが求められる状況で、トップがすべてを決断をしていたらスピードが鈍化してしまいます。

 あと、トップダウンの弊害は、横の連携が減ることです。出前館のビジネスは、ユーザーと加盟店と配送員、3つの車輪が同時にうまく機能しないと取扱高が増えないのですが、ボトムアップの組織カルチャーが融合することで、マーケと営業とデリバリーコンサルティングという3つの組織連携がよりワークするようになったと思います。

「密集地はUber Eats、地方は出前館が強い」

――3月の会見では、Uber Eatsが脅威だという話もありました。出前館とUber Eatsとの差別化も含めて、2020年の勢力図はどう見ていましたか。

 Uber Eatsは、若年層や単身世帯の取り込みがとても強いと認識しています。客単価は低めだけど、注文量が多い。逆に出前館は、もともと“ハレの日”というか、週末に家族で食事をする、友人と集まってパーティをするといった需要から始まっているので、ユーザーもファミリー層が多いです。

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 パーソナライズという点では、Uber Eatsは海外でもいろいろなデータを蓄積されて、1回目の注文に対してどのようなオススメをしたら2回目の注文につながるのかという、アプリとしてのリテンションが非常に強いです。出前館は、まだそこまでのデータ基盤が整備できていないので、その点ではUber Eatsの方がいまのところは圧倒しているのではないかと思います。

 出前館の強みは、自店配送と配送代行のハイブリッドという点で、これは以前から引き続き変わりません。例えば人口5000人ほどの都市にも自店配送する寿司屋が1店舗でもあれば、その街は僕らのサービス領域になります。一方Uber Eatsは配送代行モデルなので、配送員がいない小さな都市には参入しません。出前館ではバイク配送する直営の配送員を雇っていますが、密集地はバイクより自転車の方が効率が良いこともあるため、密集地はUber Eats、地方は出前館が強いといったエリアの棲み分けはあると思います。

――直営だと、アイドルタイムでも時給は発生します。

 アイドルタイムに関しては、直営なので休憩時間も必要になることと、周辺エリアの取扱高を増やすためのポスティングに回っていただいたりしています。

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