ANAの「ドローン輸配送」が存在感を見せた2020年--ドローン専門ライターが振り返る - (page 2)

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ドローンを通じて、社会課題を深く知る

 いま、ドローンが利活用される背景には、日本が抱えるさまざまな社会課題がある。たとえば、ANAがドローン配送を行った離島エリアに目を向けると、少子高齢化によって生活インフラが維持できず、島で暮らしつづけることが困難になりつつある。離島では、1955年から2010年までに人口が6割減った。高齢化率は39%、15歳未満の年少人口は僅か11%だ。離島の約4割で医師が不在、約5割で中学校、高校がない、離島地域の14%で定期航路がない。

出所:国土交通省「島づくりのトリセツ」
出所:国土交通省「島づくりのトリセツ」

 読者の中にも、おじいちゃんおばあちゃんは島に住んでいたという方がいらっしゃるかと思う。そうでない方も、旅先で出会う美しい景観や日々の安全な食をもたらしてくれる「島の暮らし」を守ることに、無関心のままではいけない。五島市の取材で現地を訪れてみて、そう強く感じた。同時に、五島市でドローン関連の起業を検討しているという方にも出会うことができ、ドローンをきっかけに地域が若返る可能性もあると分かった。

五島嵯峨島の港。五島列島は全国的にも豊かな漁場だ
五島嵯峨島の港。五島列島は全国的にも豊かな漁場だ
五島の取材で出会った、市場に出回らず駆除される魚を有効活用することで海を守るという逸品
五島の取材で出会った、市場に出回らず駆除される魚を有効活用することで海を守るという逸品

 離島のほかにも、ドローンの利活用が進むフィールドにはたくさんの社会課題がある。たとえば、ドローン点検が進む背景にある1つが、橋、ダム、道路、港湾施設、下水道など高度経済成長期に建設されたインフラの老朽化だ。また、2020年に加速した脱炭素社会実現に向けた動きも、ドローンとは関わりが深い。将来的に太陽光発電や洋上風力発電など再生エネルギーの比率が上がってくれば、空中ドローンはもちろん水中ドローンを活用した高効率な点検の需要も高まるだろう。

 11月にドコモ・ベンチャーズが出資する米Skydioは、海外初となるオフィスとして日本法人を設立したが、これは日本でインフラメンテナンスサービスを確立し、いずれ同じ社会課題に直面する後進国などでサービス展開するチャンスを掴もうとする動きの1つと考えられる。

米Skydio日本法人設立発表会でのデモ
米Skydio日本法人設立発表会でのデモ

ドローン業界へのキャリアシフト

 2020年末には、米国禁輸対象リスト「エンティティーリスト」にDJIが加えられ、国産ドローンというワードが、測量や点検などの現場の要望に応えられるかどうかはさておき各所で聞かれた。また2021年には操縦ライセンスが創設される見込みで、ドローン業界は大きく揺れながらも“社会実装”に向けて邁進する1年となりそうだ。

 水中ドローンの動きも見逃せない。2020年11月に立ち上がった「海における次世代モビリティに関する産官学協議会」では、ROVやAUVと呼ばれる無人潜水艇や、ASVと呼ばれる無人水上艇の利活用や法整備について検討が始まったのだ。2020年1月、まだ新型コロナウイルス感染拡大が騒がれる前にリアル開催されたCESでの水中ドローン展示に見るとおり、機体性能は産業用途レベルに向上しており、空中ドローンに追随する形でビジネスが立ち上がっていくだろう。

 持続可能な社会という観点では、息の長いプロジェクトもある。海ゴミをドローンなどで検知する取り組みや、無農薬無肥料で環境に優しい米作りをドローンがリモートセンシングでサポートする「ドローン米プロジェクト」は印象的だった。ちなみにこのお米は絶品だった。

 このような中、ドローン業界を牽引する方々や2020年に大手企業から転職した方々にも話を聞くと、年齢や性別、産業や職種に関係なく共通するモチベーションとして、「社会課題を解決したい」「人の役に立ちたい」という回答が返ってくる。5年後には市場規模が約3倍になるといわれエンジニアやセールスなどの人材が求められているドローン業界。

 2021年、キャリアについて立ち止まって考えたいという方はぜひ、ドローンにも目を向けてみてはいかがだろうか。ご自身の関心ある社会課題について深く情報収集する、ドローンのプログラミングを学ぶなどして、新産業の立ち上げを意識し将来的なキャリアシフトに備えることこそ、まさに人生100年時代に求められる「大人の学び直し」だ。

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