スマートフォンネイティブが見ている世界

「携帯代が安くなる」--大学生のインスタで広がる「#モバイルプランナー」は友情商法か

 「Instagramのストーリーズでよく見かける、『携帯代安くなります!』というのが怪しくて気になる。昔の友だちから『モバイルプランナーやってるから相談に乗らせて』って連絡がきたけれど、大丈夫なのか」。ある大学生から、そのような相談を受けた。

 「モバイルプランナー Instagram」の検索結果を見れば、一般の人だちがモバイルプランナーをどのように見ているのかわかるだろう。「怪しい」「大学生」「うざい」「仕組み」「なぜ安い」「デメリット」などという検索キーワードで検索されている。モバイルプランナーとは何なのか。なぜこのような投稿が増えているのか、そこに問題はないのだろうか。

広がる「#モバイルプランナー」

 2020年のはじめにAbemaTVでも取り上げられてコメントしたことがあるが、モバイルプランナーはここ数年で広がったものだ。

 多くの場合、携帯電話会社でインターンをしている大学生の友人から、「インターンの勉強のために説明させてほしい」「売りつけたりしないから、説明の練習をさせてほしい」などと連絡がくる。説明だけならと赴くと、「携帯電話料金が安くなるからキャリアを乗り換えないか」と勧められるというわけだ。最近は、「モバイルプランナー」などと名乗ることが多いようだ。

 特徴は、格安SIMではなく、大手キャリアを比較、紹介される例が多い点だ。契約すると、紹介者にはインセンティブが支払われる仕組みとなっている。

 Instagramで「#モバイルプランナー」は約4000件投稿されており、その多くがツーショットで写っている。1人は紹介者であるモバイルプランナー、もう1人が紹介されてキャリアを乗り換えた側だ。2人ともスマホをこちらに向けて、マスク越しにも楽しそうな雰囲気が伝わってくる。中には、代理店で働く社員たちの集合写真らしきものも投稿されている。

 Twitterで「#モバイルプランナー」と検索すると、「携帯代が安くなる」「お話だけでも聞いてみたい方、DMください!」などと投稿している大学生が多数見つかる状態だ。Yahoo!知恵袋でも、「モバイルプランナーは怪しいのか」「信じていいのか」などの投稿が多数投稿されており、勧誘が広まっていること、困惑を抱く人が多いことがよく分かる。

なぜ「友情商法」は成り立つのか?

 この仕事は、仕事探しサイトなどでも募集されていることがある。多くはインターンシップとしてで、「社会人として圧倒的に成長できる」「相手の考えを尊重しつつ自分の考えを発信する力」「バイタリティを持って物事に取り組む力」が身につくなどとうたわれている。

 「これはマルチですか」と冒頭の大学生に聞かれた。マルチ商法とは、商品やサービスの販売員となって利益を得ると同時に、他人を会員になるよう勧誘することで、紹介料が手に入る仕組みのことだ。モバイルプランナーはスマホの乗り換えを勧めるだけで、モバイルプランナーになることを勧誘しているわけではないため、若干異なっている。

 紹介された側にとっては、ただスマホを乗り換えるだけなら携帯代が安くなったり、サービスのガラスフィルムがもらえるなどのメリットさえある。紹介者には手数料が支払われるが、これだけなら通常のビジネスでしかないし、この点のみを見て「問題ない」と断じている人もいる。それにも関わらず、なぜ多くの人が「怪しい」と感じてしまうのだろうか。

 それは、結局は自分の利益のために交友関係や信頼を提供するビジネスモデルであること、勧誘の際に嘘をついて呼び出すことが多いこと、勧誘拡大にSNSを多く利用していることが影響しているのではないか。

 紹介された側は、「乗り換えなくてもいいから拡散に協力して」などと友人に依頼されたり、シェアすると海外旅行に応募できる券やディズニーランドチケットなどが当たるという理由で、このような情報をシェアするようになる。シェアによってこの仕組みを自分の交友関係に広めてしまうわけだ。“友だちだから”という入り口で入る点が「友情商法」と呼ばれることもある。

 勧誘したら友だちにもメリットがある、シェアするだけなら害がないと考えて、参加してしまう大学生は多い。しかし、結局は利益のために交友関係や信頼を提供していること、周囲の信頼や人間関係を壊す可能性が高いことは自覚しておくべきだろう。

 インターンとして働く大学生たちも、「基本給なしで完全歩合制」という例も少なくないという。つまり、「成長」などをちらつかされて、代理店側から格安で使われているのだ。店舗が要らず、人件費も抑えることができる上、SNSで大学生自身が交友関係から顧客候補を集めてくれるのだから広告宣伝費も必要ない。その浮いた部分で、「ディズニーランドチケット」や「ガラスフィルム」などがプレゼントされているのだ。

 コロナ禍で生活に困窮した大学生たちは、SNSで儲け話を探す傾向にある。その結果、持続化給付金不正申請に手を出したり、受け子や出し子などの闇バイトに手を出して逮捕される学生もいる。投資や副業などに興味を持ち、紹介によって手を出す大学生もいる。

 SNSにはさまざまな情報が飛び交っており、たとえ友だちからの紹介だとしても、それだけで信用するのはリスクが高い。周囲の信頼できる大人に相談したり、検索サービスなどで検索して正しい情報を得て、その結果どうなるのかをしっかり考えて判断するようにしてほしい。

高橋暁子

ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。

ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/

Twitter:@akiakatsuki

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