一般社団法人 不動産テック協会が設立2周年を迎え、11月17日に記念イベントを「グローバルビジネスハブ東京」開催した。新型コロナウイルス感染拡大防止を受け、非対面接客などに乗り出した不動産業界全体の動向を振り返るとともに、2年間の活動について報告した。
不動産テック協会は2018年に設立。現在、リマールエステート 代表取締役社長の赤木正幸氏、リーウェイズ 代表取締役の巻口成憲氏が代表理事を務める。
イベントの開始にあたり巻口氏は「設立から丸2年が経過した。不動産テック協会として、不動産事業者とテクノロジー企業はどうつながっていくのか、そしてプレーヤー同士が連携できるのかといったことを模索、研究してきた。新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、今回はリアルとオンラインの双方でイベントを開催。あわせて100名以上の方に参加いただいた」とコメントした。
記念イベントでは、KPMGの加藤淳哉氏が「DXで変わる不動産会社の資本・業務提携の意義」、至真庵の陶山祐司氏が「不動産テックのポテンシャル〜国富の増大と国際潮流を踏まえた社会的インパクトに向けて〜」をテーマに基調講演を実施した。
加藤氏は、11月に発表されたばかりのニトリによる島忠の買収を例に挙げ、「ニトリによる島忠の買収は、事業を拡大するために同業他社と業務提携するパターン。郊外店を多く展開するニトリにとって、関東圏にフォーカスし、都心の住宅地に店舗を構える島忠は、ニトリの空白領域を埋める役割を果たす。一方で、ニトリは中古住宅再生事業を手掛けるカチタスとの資本業務提携も発表しており、これは”ひねり”のある業務提携。同業他社ではなく、リフォームを手掛けるカチタスに、ニトリは家具、家電、カーテンなどの生活雑貨を提供できる。さらに町の工務店との取引が系列化されているカチタスと組むことでリフォーム資材の提供なども可能。同業とは違うが、ビジネスの商流に関わるところと資本提携することで、Win-Winの形をつくるパターン」と紹介した。
さらに「今後の企業買収はテクノロジー、IT、DXがキーワード。今まで考えなかったような発想で企業同士が提携する可能性がある。発想力が試されてくる」と続けた。
一方、陶山氏はユニコーン企業に対し、持続可能性や共存性を重視する「ゼブラ企業」について解説。「ユニコーンではなくゼブラ。一匹ではなく共生がコンセプト。ゼブラ企業同士が連携しながら盛り上げていく。市場をディスラプトするのではなく、建設的に社会を作る」と、新たな企業の風潮が広まっていることなどについて話した。
記念イベントでは、新たなメンバーとして、米不動産テック企業「Movoto」でCFOを務めた市川紘氏を迎えたことを発表。ビデオメッセージで登場した市川氏は「米国の不動産テックの生の情報を届けたい。業界の最前線にいる日本人として知り得たことを日本の業界に発信し、日本のマーケットに即した進化の仕方を模索する一助になりたい」とコメントを寄せた。
不動産テック協会では、情報流通、物件流通、電子化、業界マップ、不動産金融、海外連携と6つの部会を実施。その取り組みについても話した。業界マップ部会では、6月に第6版として発表した「不動産テックカオスマップ」を作成しているほか、情報流通部会では7月にGeoloniaと共同で、国内の土地や建物等の不動産情報に対して、共通IDの付与に向けた取り組みを開始。2021年4月までに集合住宅不動産にIDを振る動きがあることなどを報告した。
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