そしてもう1つ、大きな注目を集めているのはやはり携帯料金の引き下げだろう。かねてより携帯料金引き下げを訴えてきた菅氏が9月16日に内閣総理大臣に就任したことで、菅政権下で新たに就任した武田良太総務大臣が早々に料金引き下げに向けた動きを積極化するなど、再び携帯電話料金引き下げに向けた動きが急加速している。
大きく動いた要素の1つは、総務省が10月27日に掲げた「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」で促進すべき取り組みの1つとされている、番号ポータビリティ(MNP)の転出手数料に関してだ。ソフトバンクが10月28日にウェブや電話、店頭すべての手続きにおけるMNP転出手数料無料化を打ち出し、楽天モバイルも11月4日にMNP転出手数料と新規契約時の事務手数料の無料化を発表。ドコモとKDDIはまだ正式な方針は打ち出していないものの、決算説明会でウェブでの転出手数料を無料化する方針を打ち出している。
また乗り換えを容易にするための施策として、アクション・プランでも推進が打ち出されているeSIMに関しても、楽天モバイルがeKYCとeSIMを組み合わせて即日契約できる「AIかんたん本人確認(eKYC)」の提供を打ち出している。KDDIも直接的なeSIMの採用ではないものの、シンガポールのCircles Asia社と提携して新会社を立ち上げ、eSIMに特化したサービスを提供するMVNOを設立することを打ち出しており、eSIMを活用したサービスが今後大きく広まる可能性が出てきた。
そしてもう1つ、最も注目されたのはやはり具体的な料金施策だろう。10月27日には、総務省が携帯電話市場の公正競争促進に向けた「モバイル市場の公正な競争環境の整備に向けたアクション・プラン」を公表。それを受ける形でKDDIとソフトバンクは10月28日に、サブブランドの「UQ mobile」「ワイモバイル」で20GBの高速データ通信量を4000円前後で利用できる「スマホプランV」「シンプル20」を発表している。
KDDIの代表取締役社長である高橋誠氏は、決算説明会で海外の料金プランとの比較を打ち出し、スマホプランVが国際水準より大幅に安いことをアピール。菅氏が携帯料金引き下げを求める根拠の1つとされている、20GBの大容量プランが世界主要都市より高額であることを受けて提供されたプランであることをうかがわせる。
これらプランに対して武田大臣が一定の評価をしていることから、料金を巡る各社の動きは現状ひと段落しているが、気になるのはやはりドコモの動向だ。ドコモは11月16日までTOB期間中ということもあり、まだ明確な料金関連の施策を打ち出していない。決算説明会においても、同社代表取締役社長の吉澤和弘氏は料金関連の質問に明確な回答を控えていた。
それだけにTOB終了後、ドコモがどのような料金施策を打ち出すのかは、各社の料金施策、さらに言えば政府の動向を見据える上でも非常に重要なポイントとなってくるだろう。他の2社と同様、低価格のサブブランドを設立するというのが最も現実的な策と見られているが、サブブランドは他社に顧客が流出するのを阻止する狙いも大きいだけに、顧客基盤が弱いMVNOや楽天モバイルに与える影響は決して小さくない。
だからといって現行の料金プランを引き下げる、あるいは大容量で低価格のプランを新設すすれば、再び大幅な減収減益となる可能性が高く、またKDDI、ソフトバンクも戦略の大幅な練り直しが求められることになるだろう。どのような選択肢を取るにしても市場に与える影響は小さくないだけに、当面はドコモ、さらにいえば完全子会社化したNTTの打つ手が大きな関心を集めることとなりそうだ。
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