アプリ開発者は、新型Macでアプリを動作させるためにコーディング方法を変えなければならないため、新チップへの移行には多少の困難が伴うかもしれない、とAppleは述べている。その一方で、ウェブブラウザー、さまざまな企業の写真および動画編集ソフトウェア、さらには、人気の高いMicrosoftの「Office」スイートのプログラムなど、ユーザーが使用するソフトウェアの大半は新型Macで最初から機能することを同社は約束している。
変更が加えられる可能性が最も高いのは、ノートブックとデスクトップ用のチップ以外のコンポーネントだ。iPhoneとiPadには、チップ用の冷却ファンがない。新しいMac MiniとMacBook Proにはファンがまだ内蔵されているものの、MacBook Airはファンレスとなった。
だが、こうした変更と、取り外し可能なノートブックとiPadのハイブリッドに関する憶測を除けば、Appleウォッチャーはデザイン変更のアイデアを考え出すのに苦労しているようだ(筆者個人としては、昔のように「MagSafe」磁気充電ケーブルをノートブックで利用できるようにしてほしいと切実に思っている)。
もう1つ、長期的に予想されるのは、こうした種類のモバイルチップにセルラーサービスが統合されることだ。これまで、セルラー無線を内蔵したコンピューターはせいぜいニッチな製品にすぎなかったが、こうした種類のプロセッサーはセルラー無線をサポートできるように設計されている。接続機能を備えたiPadはよく売れているので、接続機能を備えたMacBook Airが登場してもおかしくないだろう。
それがすぐに登場する可能性は低いが、おそらく、通信キャリアはAppleシリコンベースのMacBookに5Gを搭載したいと考えるはずだ。
Intel製のチップから自社開発のチップに切り替えることで、Appleが手に入れるものは、期待されるパフォーマンスと電力効率の向上だけにとどまらない。例えば、自社のソフトウェアをより細かくチューニングして、その特殊なチップと連携させることも可能になるだろう。そして、製造面も管理できるようになる。
「自社の運命、そして製品のパーツをコントロールできるようになれば、コストの節約も可能になる」。Technalysis ResearchのアナリストであるBob O'Donnell氏は、そう述べている。
同氏によると、一般に、チップの価格はノートPCのコストの少なくとも20%を占めるという。Appleがコストを節約して価格を下げることができたら、高すぎる、お金が足りない、といった理由で同社の現在999ドル(税別10万4800円)からのノートブックを敬遠してきた人々を引き込むことができるかもしれない。
それによって、消費者の関心が喚起され、これまで実験的にスマートフォン向けチップをコンピューターで採用してきただけのほかのPCメーカーが真剣になる可能性もある(とはいえ、IDCによると、2019年のPC市場におけるAppleのシェアはわずか7%弱だという)。
Appleのクレジットカードが同社の真の切り札になる可能性があるとするアナリストもいる。Macを24カ月間無利息の分割払いで購入できれば、月々約42ドルでコンピューターを買えるというアイデアで人々を引き付けられるかもしれない。
「Macのユーザーがもっと増えれば、巨大な影響が生じるだろう」(O'Donnell氏)
いずれにせよ、Appleの動きは、iPhoneのチップがいかに強力であるかを世に示し、ひいては、業界が後れをとるまいとデバイスを変える起爆剤となり、大きな影響を与えるはずだ。
10年以上前にMicrosoftの「Windows」ソフトウェア部門を統括したベンチャーキャピタリストのSteven Sinofsky氏は、今回の発表を前に、次のようにツイートしている。「これは『コンピューター』に関して久しぶりに見る重要な発表だ(中略)。本当の衝撃は、これによって生まれる今後の方向性だ」
This is the biggest announcement in “computers” in a long time. It represents a step function/generational change.
— Steven Sinofsky (@stevesi) November 10, 2020
Early on people will focus on the “transition” which is fine, but the real impact is the direction this takes things. So many initiatives coming together. https://t.co/YWyCJubUpg
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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