米司法省は、Visaによる米フィンテック企業Plaidの買収を阻止するための反トラスト訴訟を起こした。
同省は、Visaがすでにオンライン決済サービス分野で「独占企業」になっているとして、Plaidについて「Visaの独占に立ち向かう」決済プラットフォームを開発する企業だと説明した。
Visaは1月、Plaidを53億ドル(当時のレートで約5800億円)で買収すると発表した。Visaは世界有数の金融サービス企業のひとつだ。
Plaidはフィンテック企業で、顧客が自分の銀行口座と決済アプリを直接結び付けられるオープンプラットフォームを開発した。買収が発表された時点ではPlaidは知名度の高い企業ではなかったものの、Visaは当時、米国に銀行口座を持つ人のうち4分の1がPlaidの技術を利用していると述べていた。
買収が完了した後も、Plaidは独立した企業として事業を続ける予定だった。しかし、この説明は司法省の反トラスト法についての懸念を払しょくするには至らなかったようだ。
米カリフォルニア州北部地区連邦地方裁判所に提出された訴状によると、司法省は、Plaidがすでに米国で「主導的」な金融データアグリゲーション企業となっており、いずれはVisaに対抗し得るネットワークを構築する意向だったと主張している。こうしたネットワークは、消費者が銀行口座の情報を使ってサービス加盟店に直接代金を支払えるようにするもので、その際にデビットカードは必要ない。
訴状では、Visaの最高経営責任者(CEO)であるAlfred Kelly氏がこの買収を、米国における既存のデビット事業への脅威を取り除く「保険契約」と考えていると指摘。同氏が取締役会に買収を承認するよう説得した際、Plaidについて、「独自性を保っても、競合企業に保有されても」、いずれは競合勢力となり、その力はVisaが「利益率の低下を受け入れるか、対抗できるサービスを持てない」ほど強くなるだろうと述べたとしている。
司法省によると、この買収は明らかにオンライン決済の競争を阻害するために計画されたものであり、シャーマン法第2条とクレイトン法第7条に違反しているという。
同省は米国におけるVisaの最大のライバルであるMastercardにも言及しており、VisaがMastercardを排除するような契約を銀行と結んできたことで、真の競争を免れてきたと指摘している。
Visaの広報担当者は米ZDNetに対し、以下のようにコメントした。
「Visaは司法省の主張に強く反対する。VisaによるPlaidの買収を阻止する司法省の試みは、法的に欠陥があり、事実に反している。この動きは、Plaidの事業およびVisaが活動する極めて競争的な決済分野への理解の欠如を示すものだ。VisaとPlaidの組み合わせは、より広範な金融関連サービスを利用したいと考える消費者に大きな恩恵をもたらすことになる。Visaはこの取引(の正当性)について精力的に抗弁する構えだ」
「司法省に説明した通り、Plaidは決済サービス企業ではない。Visaの事業はさまざまな企業と激しく競合しているが、Plaidはその1つではない」
Plaidはコメントを控えた。
この記事は海外Red Ventures発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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