福岡を拠点に脱炭素化社会の実現を目指すCleanTech(クリーンテック)企業のアークエルテクノロジーズは11月5日、AIによるダイナミックプライシングを活用した電力サービス「アークエルエナジー」の提供を開始すると発表した。九州地区からサービスを開始し、順次全国に拡大していく予定だ。
九州地区は、太陽光発電などのクリーンエネルギー導入が進んでおり、季節や時間帯によって電力需要を上回る電気が発電され、電気が余ってしまうことがあるという。その際、太陽光発電の出力を制御する「出力制御」を実施しており、2019年には48日間の出力制御を実施。これにより一般家庭1万世帯の年間電力需要に相当するクリーン電力が余っていることになるという。
アークエルテクノロジーズは、余っているクリーン電力を有効活用し、脱炭素社会の実現を目指すため、アークエルエナジーの提供を開始。ニーズに合わせて、AIを活用し、変動する価格で電力を購入できる「DPプラン(ディープ―プラン)」と、クリーン電力だけを使用し、基本料金無料で使用量に応じて電気料金を支払う「フラットプラン」の2つを用意する。
DPプランは、30分ごとに変動する日本電力卸売市場(JEPX)の価格によって、従量料金部分の電気料金を決定するというもの。サービス料(月1000円)+託送料(電線使用料/kWhあたり固定)+電気料金(kWhあたり変動)の合計が料金になり、一番安い時間帯にEV車や蓄電池に充電することで、毎月の電気料金を抑えられる仕組み。
アークエルテクノロジーズによると、一般的な戸建て3人世帯の電気代に比べ、約35%の節約が可能になるという。アークエルテクノロジーズ 代表取締役の宮脇良二氏は「EV車を持っていなくても契約は可能。オール電化や蓄電池など電気を貯蔵する仕組みを持っている家庭には、お得な料金で提供ができると思っている。30分ごとに変わるJEPXの市場価格をチェックするのは面倒くさい。今回『LINE』による通知機能を取り入れ、電気を使うタイミングの行動変容を起こす」とコメントした。
フラットプランは、使用量に応じた従量課金型でCO2フリーのクリーン電力を利用できるプラン。基本料金は無料になる。一般的な戸建て3人世帯の電気代に比べ、毎月約11%の節約につながる。フラットプランは10月1日、DPプランは11月1日から提供を開始しており、専用サイトからの申込みが可能だ。
宮脇氏は「できるだけ建物ごとに自給自足することが電力供給の理想。しかしどうしても足りなくなる。その時にマーケットを使って安い時間に供給する仕組みを作る。その最適化を実現するのがAI」と説明。アークエルエナジーは2021年春までに3000件の導入を目指す。
同日には合わせてダイナミックプライシングによる電動車の充電シフト実証実験を開始することも発表した。これは、経済産業省の実証事業に採択されたもので、東京大学と共にエッジAI活用形アルゴリズムを開発し、EVやPHVがさらに普及した未来社会に向け、クリーンエネルギーを有効活用した電力供給をどのように実現していくのかを検証する。
2020年9月から九州電力エリアで実証実験を開始し、2021年度以降は全国に拡大していくとのこと。実証実験における利用者への情報通知は、アークエルテクノロジーズが開発を進めるエッジAIとIoTを活用した「充電を最適化するアルゴリズム」をものに実施していく予定。東京大学 先端科学技術研究センター 特任助教の辻真吾氏を中心とした学術指導のもと、開発を進めているという。
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