セキュリティ研究者らは、ハッキングされた電光掲示板によって自動運転車を混乱させられるおそれがあることを実証した。これにより自動運転車が急停止したり、より深刻な事態が生じる可能性もあるという。
自動運転は近年急速に進歩しているが、これまで失敗や混乱、事故の発生がなかったわけではない。
車載インテリジェンスが、人間の監視がなくても安全な完全自動の運転技術だと認められるまでにはまだ多くの課題があり、ハイテク企業は自社のプラットフォームの改善にあたり、天候やマッピング、人や他の車などの事故につながる障害物にどのように反応するべきかという問題に注力する傾向がある。
しかし、WIREDの報道によると、上記のいずれとも異なる、肉眼では検知不可能な危険があるかもしれない。
イスラエルのネゲヴ・ベン=グリオン大学の研究者たちが実施した研究によると、いわゆる「幻(phantom)」の映像によって人工知能(AI)を混乱させ、特定の行動をするよう仕向けることができるという。このような映像として、例えば一瞬の光の点灯で電光掲示板上に作り出された「止まれ」の標識などがある。
これにより渋滞だけでなく、深刻な交通事故が引き起こされる可能性があり、ハッカーはほとんど痕跡を残さずにこれを実行できる。運転手には自分のスマート自動車が突然動きを変えた理由が分からないままだ。
研究に携わったセキュリティ研究者のYisroel Mirsky氏は、わずか数フレーム(1フレームは60分の1秒)の間、電光掲示板に光を投射するプロジェクターが、車の「停止や進路変更」を引き起こすかもしれないとWIREDに語った。「誰かの車がただ反応し、その人は理由が分からないということになる」(Mirsky氏)
実験はTeslaの自動運転システム「Autopilot」を搭載する「Telsa Model X」 (HW 2.5およびHW 3)と、「Mobileye 630 Pro」を搭載した車両を用いて実施された。WIREDによると、0.42秒間「止まれ」標識の幻影を表示することで、Teslaのシステムに誤認させることができた。一方、Mobileye 630 Proの方はわずか8分の1秒間幻影を表示するだけで、誤認させることができた。
この実験は路上の自動運転車を混乱させるために、プロジェクターで人間のシルエットをコンマ数秒投射する前回の実験に基づいている。いずれの実験も似たような結果となったが、理屈の上では、電光掲示板は大規模な危害を求めるハッカーにとってより有効となるだろう。
調査結果は11月にオンラインで開催される「ACM Conference on Computer and Communications Security(ACM CCS) 」で発表される。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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