2020年からのオフィスを考える--コロナ禍におけるニーズの変化と広がる選択肢 - (page 2)

2019年まで1%未満だったテレワーク

 まず最初に、「2019年までのオフィスに対するニーズやトレンド」について、藤井が井上氏と垣屋氏に質問した。

 井上氏は、スペースマーケットの利用カテゴリ別推移を示し、「パーティ利用が最も多く、ビジネス利用はその次に多かった。パーティ利用は時期による利用変動が大きいが、ビジネスは安定的に需要があると見ていた」と説明した。


 ビジネス利用の内訳を見ると、会議室利用が50%で、次にセミナー・研修、オフサイトミーティングが多い。テレワークはなんと1%未満だったという。井上氏は「2019年は、たとえば海が見える会議室などの非日常空間でディスカッションをするなど、アーリーアダプターと呼ばれる方のオフサイトミーティング利用が増えていた。利用人数別でも、ボリュームゾーンは2名から5名で、50%以上が6名以上利用だった」と振り返る。

 垣屋氏は、「2019年までは、3つのトレンドがあった」と話す。コミュニケーション活性化を目的とした拠点集中、働き方改革におけるイノベーション創出を意識したオフィス改革、それからABW(Active Based Workplace/Working)を呼ばれる、さまざまな行動にパターンに合わせたワークプレイスの設計だ。


 「働き方改革を背景としたオフィスに対するニーズは、2017年から2018年では長時間労働対策を目的とするものが多かったが、2019年になるといかにアウトプットを増やすかという視点が増えてきた」と垣屋氏。モデレーターの藤井は、「フリーアドレスや集中ブースを作るといった動きは、先進的な企業で広がっていた」と相槌を打った。

 2019年までは、「オフィスの中」でいかに行動に最適化した空間を作るかに主眼が置かれており、「オフィスの外」を利用するのは非日常感の演出や一時的な利用であったことが窺える。

コロナ禍で「第三のワークプレイス」と「オフィス面積縮小」へのニーズが顕著に

 次に、本日のメインテーマである「2020年に入ってからのオフィスに対するニーズやトレンド」へと話題は移行。コロナ禍におけるニーズの変化や、両社が取り組んだことについて訊いた。

 スペースマーケットでは、パーティ利用の需要は大きく落ち込んだが、ビジネス利用は底堅いという。コロナ禍におけるニーズの変化として、井上氏は「テレワークの増加、一人利用の増加、地方での利用の増加」を挙げた。ビジネス利用における用途別傾向では、2019年まで1%未満だったテレワークが急増。緊急事態宣言が解除された6月以降、会議やセミナー・研修が増えたためシェア率は低下しているが、テレワーク利用の数は右肩上がりだという。


 井上氏は、「1名利用は、3月には前月比約2倍となり、4月以降はさらにその倍となって急増した。地方の利用は、4月と5月に神奈川県、千葉県、埼玉県のシェア率が急上昇した。都内でも三軒茶屋のある世田谷区や蒲田のある大田区など、ターミナル駅に近い住宅地エリアで利用が増えており、自宅とオフィス以外で仕事をする新たなスタイルが確立されていくと考えている」と語った。

 オカムラでは、2020年以降のフェーズを3つに区切り、オフィスニーズを把握しているという。緊急事態宣言下では、強制的に在宅勤務が開始された形となり、時期未定の案件はピタリと止まってしまったという。緊急事態宣言解除後も、ソーシャルディスタンスを保つために出社制限を行う企業が多く、「いまオフィスニーズとして最も多いのは、アフターコロナを見据えて、オフィスニーズの面積を見直したいというものだ」と垣屋氏は話す。


 また、オカムラ社内で行ったという、フリーアドレスオフィスで着席不可の座席が分かるシートカバーや、飛沫拡散防止用の透明のパネルなど、オフィスにおけるコロナ対策実例も紹介。座席の事前予約制「ホテリング運用」を行うことで、密を確実に避けつつ、万が一感染者が出た場合に周囲に誰がいたかを把握できる仕組みを整えたという。垣屋氏は「既に導入していたoutlookを活用した。従業員に負担をかけないことが重要」と話した。

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