オンラインゲームが人気だ。チャットやボイスチャットに対応しているオンラインゲームは多く、コミュニケーションしながら協力プレイができると子どもたちの間で人気となっている。流行中のオンラインゲームにおける子どもたちの利用実態とリスクについて見ていきたい。
「下手くそ、消えろ」「アホカス死ね」ーー。「フォートナイト」などのボイスチャットができるオンラインゲームで、そんな汚い言葉で罵りながらプレイしている子どもは多い。「子どものそんな姿を見てショックを受けた」という話は、保護者からよく耳にする。
しかし、ゲームは子どもたちにとって大切な場となっているようだ。「話しながら協力プレイすると楽しいし盛り上がる」と、ある男子小学生はいう。「ゲームと関係ない話が多いかな。友だちがプレイしていたらわかるし、待ち合わせして遊ぶこともある」。
6月までコロナ禍で休校が続き、子どもたちは友だちともまともに会えなかった。その時も、「ボイスチャットで友だちと話せることが楽しみだった。何してるとか宿題のこととか何でも話した」そうだ。
GameWithの「コロナ禍におけるゲームプレイ実態調査」(2020年9月)によると、コロナ禍におけるゲームの効果は、「ストレス解消」(66.6%)、「外出自粛中の気分転換」(66.0%)、「友人や家族とのコミュニケーション活性」(40.8%)だった。ゲームは、最早コミュニケーションの場となっているのだ。
「荒野行動」「フォートナイト」などの子どもたちに人気のオンラインゲームは、大抵ボイスチャットできるようになっており、実際に利用されている割合も高い。
小学生を対象としたゲムトレの「ゲームに関するアンケート調査」(2020年6月)によると、小学生が一番遊んでいるゲームタイトルは「フォートナイト」(22.1%)。また、テスティーの「荒野行動に関する調査」(2018年11月)によると、「荒野行動」は10代、20代から高い支持を得ていることがわかる。
「スプラトゥーン」などのゲーム機でプレイするゲームも、ボイスチャットでコミュニケーションされることが多いが、基本的にフレンドとなった相手とのみできるようになっている。
ところが他のプラットフォームでもプレイできるオンラインゲームには、知らない相手とボイスチャットできるものも多い。たとえば「荒野行動」はチーム内メンバーなどとボイスチャットできるが、知らない人とつながれる機能がある。「フォートナイト」も同様だが、やはり知らない人ともボイスチャットできる。
その結果、2019年に続き、2020年9月にもまたオンラインゲームで知り合い、男が小学4年女児を誘拐する事件が起きている。オンラインゲームでボイスチャットしながら協力プレイなどをすると、相手に対して信頼感や好意が芽生えやすくなる。そのため、オンラインゲームをきっかけとした誘拐事件は続いてしまっているのだ。
保護者ができる対策として、「フレンドになったり、ボイスチャットするのは学校の友だちだけ」としている家庭は多い。もともと知っている友だち同士がおしゃべりしながらプレイするだけならば、リスクはほとんどないだろう。
なお、オンラインゲームはさまざまなプラットフォームでプレイできるが、Nintendo Switchの場合「みまもりSwitch」で「ほかの人との自由なコミュニケーション」を制限すればボイスチャットなどが制限できる。また、フォートナイトにはペアレンタルコントロール機能があり、ボイスチャット機能をオフにして制限できるほか、「成人向けの言葉を表示する」をオフにしてテキストチャットの成人向けの言葉を非表示にしたり、「フレンドリクエストを受け取る」をオフにしてフレンドリクエストを拒否する設定にしたりできる。
「知らない人とボイスチャットをしても、個人情報を話さなければ問題ない」と考える人もいるかもしれない。しかし、おしゃべりの中で子どもが個人情報を漏らしてしまうケースは相次いでいる。実際、以下のような話を聞いたことがある。
「『友だちがみんなやっているし無料だから』とねばられて、ゲームをさせている。『知らない人に個人情報は話さないように』と言っておいたのに、気づいたら知らない大人に小学校名や好きな野球チームのことを教えてしまっていた。詳細や住所や名前を教えていたらと思うと怖くなった」
「気づいたら、小学生の子どもが知らない人とボイスチャットをしていた。私や妹が後ろでしゃべると、『うるさい』『身バレする』と怒られる。自分の部屋でプレイさせるとなかなかやめないので、仕方なく居間でさせている」という話もある。
このように、子どもがボイスチャットでゲームをしているときに名前を呼んだことで、実名など身元バレする例は多いそうだ。ある女性が性別を隠してプレイしていたにも関わらず、ボイスチャットから性別がバレてしまい、フレンドなどからしつこい連絡がくるようになったという話を聞いた。
知らない人とボイスチャットをしながら、個人情報を漏らさないことは子どもにとってハードルが高い。このように、オンラインゲームがきっかけで、子どもの間でさまざまな問題が起きている。保護者はそのような実態を知った上で、見守りながら気をつけて使わせてあげてほしい。
高橋暁子
ITジャーナリスト。書籍、雑誌、Webメディア等の記事の執筆、企業等のコンサルタント、講演、セミナー等を手がける。SNS等のウェブサービスや、情報リテラシー教育について詳しい。
元小学校教員。
『スマホ×ソーシャルで儲かる会社に変わる本』『Facebook×Twitterで儲かる会社に変わる本』(共に日本実業出版社)他著書多数。
近著は『ソーシャルメディア中毒 つながりに溺れる人たち』(幻冬舎)。
ブログ:http://akiakatsuki.hatenablog.com/
Twitter:@akiakatsuki
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