Lunaが成功する可能性があるように思える第一の理由は、そのビジネスモデルだ。初期タイトルは100本用意され、アーリーアクセス期間の月額料金は5.99ドル(約630円)。一方のStadiaは、現在「Stadia Pro」プランで28タイトルの無料ゲームを提供しており、毎月新たな無料ゲームを追加していく。
Lunaのサービスは、Stadiaを大きくしのいでいるように思えるし、重要なことに、新作に対して追加の課金を求めず、料金体系をシンプルに保っている。
おそらくもっと重要なのは、Amazonが自らの役割を把握しているらしいことだ。同社のEntertainment Devices and Services部門のバイスプレジデントを務めるMarc Whitten氏は、Lunaが「Xbox Series X」や「PlayStation 5」の事前予約に必死になるようなユーザーを奪い合うものではないということを、痛感しているように思える。Lunaが目指すのは、テレビゲームの世界に入るハードルを引き下げ、気軽に時間をつぶしたいだけのカジュアルな(あるいはゲームから離れてしまった)ゲーマーなど、より幅広いユーザー層が簡単にその世界に入れる入り口を与えることだという。
そうしたユーザー層にとって、100タイトルのゲームというのはいい狙い目だ。対抗するGame Passも、同じくらいの数のタイトルをそろえている。カジュアルなプレーヤーがプレイしきれる数よりは多く、多彩なラインアップという体裁を整えるには十分な数だ。もっとも、そうした100タイトルで全てのユーザーのニーズに応えられるのか、という疑問は残る。
それでも、ここにチャンスはある。Lunaの発表のタイミングは、これ以上望めないくらいだ。「Xbox Series X/S」やPlayStation 5は発売時の台数が限られるため、手に入れられない人は相当数にのぼるだろう。その買い損ね組が、Lunaのサブスクリプションを試すことは容易に想像がつく。なかでも、「Amazon Prime」を利用していて、Amazonの広範なエコシステムにクレジットカードが既に紐づいている層にとってはハードルが低い。Lunaによって、Amazonは、Googleが失敗したカテゴリーで成功を収めるチャンスが実際にあるのだ。
最低限でも、Stadiaを上回る条件は整っていると思われる。
もちろん、Microsoftと、そのクラウドゲームサービスである「xCloud」は無視できない。ちょうどStadiaやLunaのMicrosoft版に当たり、ノートPCやテレビ、モバイルデバイスに直接ゲームをストリーミングできるサービスだ。米国では2019年の後半にベータ版がリリースされ、2020年9月からXbox Game PassのUltimateプランで正式に利用できるようになった。Xbox本体のユーザー数を超えて契約者数を大きく伸ばそうというMicrosoftの計画の中で重要な役割を担っている。
Microsoft、Google、Amazonはゲームのストリーミングサービスを円滑に進行できるインフラを有しており、この3社の中ではMicrosoftが最もゲーム業界での経験が豊富だ。同社のGamePassには既に1500万人の加入者がいる。
GamePassと競合するLunaやStadiaのようなサービスには厳しい勝負になるかもしれない。AmazonもMicrosoftも同じ市場を狙っているように見える。つまり、大量のサブスクリプションユーザーの獲得を最終目的として、ノートPCやタブレット、スマートフォンなどのモバイルデバイスという戦場で争っているのだ。
Microsoftは明らかに本命だが、AmazonがGoogleの失敗から学び、またAmazon Primeなど既存のサービスに寄せられた顧客からの不満をうまく活用しながらプロジェクトを進めることができたなら、業界2番手の地位を得ることができるかもしれない。もしAmazonの思惑通りに事が進んだとしたら、「ゲーム界のNetflix」の座をめぐる争いはこれまで考えられていたよりも混戦となるかもしれない。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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