世界初のロボットが働くホテルとしてギネスにも認定されている「変なホテル」が、全国で17店舗目となる「変なホテル 奈良」を10月1日に開業する。
関西地区初の「光のホログラム」を活用した非対面式チェックインをはじめ、自動搬送型荷物保管システム「BAGGAGE KEEPER(バゲッジ キーパー)」や、館内すべての水に「ファイテンウォーター」を使用するなど、ニューノーマルに対応する快適なホテルづくりを目指す。
奈良は2017年度の調査でホテル・旅館の客室数が全国最下位だったが、この数年で多くのホテルが進出し、個性を競っている。内覧会に登壇したH.I.S.ホテルホールディングス代表取締役の岩間雄二氏は「変なホテルの“変”とは変わり続けるという意味」だと改めて説明。
「奈良への出店は初となり構想から2年かけてようやく開業できた。奈良という場所には大きなポテンシャルを感じており、世界初の取り組みもしている。集客も含めて一緒に街を発展させたい」とコメントした。
ホテルは近鉄・奈良駅から徒歩数分と駅にほぼ隣接しており、鹿で知られる奈良公園や大仏がある東大寺にも徒歩圏内という好立地にある。古都の歴史と自然を最新のテクノロジーで表現することをテーマにしており、たとえばロビーにはロボットは設置せず、変化する照明で四季折々の自然を表現している。
チェックインは無人だが、カウンターには最新技術「光のホログラム」によるキャラクターがいて操作にあわせてリアクションする。ホテルのマネージャーを担当する増田誠輝氏は、「ロボットをホログラムに変えた理由は入れ替えが自在にできるから。キャラクターは4タイプだが増やすのも可能で、ニーズにあわせて変化し続けるホテルを実現したい」と話す。
世界初の取り組みとしては、オフィス家具メーカーのオカムラが開発した「バゲッジ キーパー」を導入した。空港の自動荷物預け入れ機のようなロッカースペースで、バックヤードの収納も含めた出し入れはすべてロボットが自動で行う。
オカムラ マーケティング本部部長の幾度雄介氏は、「セキュリティ機器として開発する全自動貸金庫シリーズで培ったロボット技術をベースにしており、既存のロッカースペースに対して2倍の収納力がある。荷物の出し入れをスタッフに依頼する必要がなく、非対面なのでお客さまにとっても利用しやすい。導入そのものはコロナ以前から計画されていたが、結果的にスタッフの安全にもつながる設備になった」と説明する。
変なホテルの3店舗で「ファイテンルーム」を設置しているファイテンとも協力し、新しい取り組みとして、ナノテクノロジー技術で開発された「ファイテンウォーター」を全館内で使えるようにした。
ファイテン リノベーションプロジェクトチーム長の石浦康雄氏は、「システムはプールやスイミング施設などで採用された例はあるが、ホテル全体で使用されるのは初めて」と説明。「工場で水を製造するファイテンMETAXウォーターシステムをホテルの地下に設置しているが、飲料水にも使うのは初めてとなるため行政にも協力いただいて実現できた。部屋のテレビでファイテンウォーターをマッサージやケアに使うメソッドも紹介しており、いろいろな使い方でリラックス効果を体験してほしい」と話した。
さらに地域ならではの連携として、奈良で人気のカフェ「ナナツモリ」を運営する青春に1階のレストラン兼カフェのプロデュースを依頼している。天気をテーマにした「お天気パーラー」では朝食メニューが提供されるほか、ここでしか買えないオリジナルのスイーツ「奈良シトロン」を販売する。
こうした新しい取り組みの一方で、基本であるホテルとしての使いやすさにも力を入れている。104ある客室はダブル以上でツインルームを中心に、エキストラベッドやベッドが4つあるフォースルームを設置。部屋のレイアウトはシンプルですっきりしており、ミニ冷蔵庫、電気ポット、加湿空気清浄機などのアメニティはひと通り揃っている。
また、レジャーや観光ユースがメインだが3割程度はビジネスユースを見込んでおり、ダブルの部屋には作業用の広々としたテーブルがあり、大画面のテレビとフロントへの連絡や周辺の情報収集ができるタブレットも設置されている。
多くのホテル業がコロナ禍で方向転換を迫られる中、変なホテルでは創業時から追求してきた変わり続けるための取り組みを加速することで、結果的にニューノーマルにも対応するホテルを実現させた。12月には石川県の小松駅前にも新店舗の開業が予定されており、そこではどのような「変な」取り組みを見せてくれるのかが楽しみだ。
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