シェアサイクルサービス「Charichari(チャリチャリ)」を提供するneuet(ニュート)と電動キックボードのシェアリングサービス「mobby(モビー)」を提供するmobby rideが事業提携し、福岡市を中心に共同でシェアリングモビリティ事業を推進していくことを9月18日に発表した。
Charichariは元メルカリの「メルチャリ」で、2019年7月にneuet代表取締役社長の家本賢太郎氏が運営するクララオンライングループの子会社として事業が引き継がれた。2020年4月にはサービス名称を「Charichari」に変更。シェアサイクル事業としては国内最速で成長しており、名古屋市内と東京の上野〜浅草エリアで事業を展開している。
福岡市内では1月から8月で利用回数が2倍以上に増え、累計ライド数は285万回となった。利用料は税込みで1分4円と手頃で、アプリの使いやすさにもこだわっている。310の駐輪ポートがあり、9割を民間企業との提携で設営している。店舗や住宅、コンビニなど利便性の高い場所が多く、平日や週末に関係なく利用されているという。
「福岡市内は道がフラットで2kmの距離に街がコンパクトにまとまっているなどシェアサイクルと相性が良い。重要な移動インフラになりつつあり、9月から西と南へエリアを拡大し、ポート密度も高めていく。2021年以降は香椎・千早のアイランドシティ方面へも拡張を計画している。コロナウイルスの影響で遅れていた電動アシスト自転車でのサービスについても、2021年春ごろ福岡中心に開始を予定している」(家本氏)
一方のmobbyが展開するシェア型電動キックボードのサービスは、2018年末に福岡市の実証実験フルサポート事業として採択され、福岡市内をはじめ全国各地で体験会を実施してきた。政府が実施する規制のサンドボックス制度を利用した実証実験を九州大学で行ったり、トヨタ自動車九州の工場内でも導入されている。
mobby ride代表取締役社長の日向諒氏は「シェア型電動キックボードは市販品と異なり、車体にIoTやGPSが搭載されている。走行エリアや制限速度を1km単位でコントロールしたり、整備不良の車体を検知してロックしたり、システムによる制御が可能という大きな違いがあり、安全性や運用面でも都市部の移動手段として大きな可能性がある」と語る。
ただし、先進国で電動キックボードが原動機付自転車扱いされているのは日本だけで、欧米と同じような形で電動キックボードのシェアリングサービスを展開するには、道交法の改正が必要となる。そこでまずは特区法の改正に向けて、公道での実証実験をこの10月から福岡市の協力により開始することを予定している。
事業提携を発表したneuetとmobby rideだが、ビジネスでは競合する関係ではないかという声もある。「国内ではまだ一般的ではなく、状況を変えるためにも同じ福岡市でマイクロモビリティを推進する両社が、事業提携するのは自然な流れ」と家本氏は説明する。両社が連携すればユーザーがモビリティを移動の選択肢にする機会も増えると考える。
日向氏も「コンパクトシティ化が進む福岡市では地価が上昇し、駅近に住むのが難しく、交通手段も不足している。そこで公共交通を動脈に我々が毛細血管として移動性高め、短距離移動ニーズを支えるというサービスの本質を追求することでパイを総合的に増やし、マイクロモビリティ事業を全体を成長させたい」と話す。
具体的な協業メリットとしては、ポートの併設や再配置オペレーション、充電などのメンテナンス分担を挙げている。ユーザーを増やすマーケティング活動の推進や運営業務を共同にすることも検討している。さらに、利用データを共同で利活用するなど、新たなビジネスの創出も目指す。
「海外で参入している多くのサービスのほとんどは整備や運用体制で失敗し、撤退も少なくない。アプリを共同にして複数のモビリティをシームレスにして乗り継ぎもできるといった使い勝手を高めることは、市民にとってもメリットになる。こうしたアイデアを実現できるのは福岡だけ。日本初の事例にしていきたい」(家本氏)
今回の提携のタイミングについては、お互いに事業が大きくなり過ぎると提携が難しくなるので、提携するなら本格的にサービスインする前の今しかないと考えたという。「今後のスケジュールもかっちり決めると難しくなる。5年、10年後を見据えつつ、スタートアップならではのスピーディーさで取り組み、まずは福岡に根ざすサービスとして定着させたい」(家本氏)
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