バルカンの小国がもたらすフィンテックのイノベーション--クロアチアが台頭した理由

Bojan Stojkovski (Special to ZDNET.com) 翻訳校正: 川村インターナショナル2020年08月28日 07時30分

 アドリア海に面した風光明媚の土地クロアチアは、バルカン半島にある国で、主に観光地として知られている。だが今では、特にデジタル決済を中心としたフィンテック産業の地としても有名になりつつある。

 クロアチアの首都ザグレブに拠点を置くMicroblinkは、2013年創業の研究開発企業だ。当初は海外からの投資が期待できなかったため、創業者の資金が頼みの綱だった。

 だが1年後、同社は最初の大ヒットを飛ばす。「Photomath」という教育アプリで、モバイルデバイスのカメラを使って数学の問題を読み取り、解くことができる。2015年にアプリと同名の「Photomath」という会社を分社化したが、このアプリはその後数年で1億以上のダウンロード数を記録し、600万ドル(約6億3600万円)の投資を確保することになった。

 現在、Microblinkは米国、欧州、東南アジアでもプレゼンスを確立し、同社が開発する人工知能(AI)搭載型のスキャンおよびデータ抽出製品は、1億を超えるエンドユーザーに利用されている。

 Microblinkの主な取引先は銀行やモバイルバンキングのソフトウェアプロバイダーで、その技術は各取引先独自のモバイルアプリに実装されている。

 Microblinkはこの数年で、フィンテック業界からも高い評価を受けるようになってきた。2019年には、Deloitteが発表した、EMEA(欧州、中東、アフリカ)地域の急成長企業500社のひとつに選ばれたほどだ。

 「われわれはフィンテック業界で名を知られるようになった。この業界は当社にとって特別だ。実際、当社の最初の製品『PhotoPay』は、請求書決済を簡略化して業界に大変革をもたらしている」。Microblinkの共同創業者であり最高技術責任者(CTO)を務めるJurica Cerovec氏は、米ZDNetにこう語った。

 同社の成功は、クロアチア国内の他の企業がフィンテック市場へ打って出るための地盤にもなった。

 クロアチアで成功したもうひとつの事例が、ザグレブに拠点を置き、年間3500万ユーロ(約44億円)を売り上げる仮想通貨仲介業者のElectrocoinだ。

 同社が開発した決済サービスでは、小売店が手数料無料で仮想通貨を決済に利用できるようになる。クロアチアの町スヴェタ・ネディェリャで最近このサービスが導入され、市民は公共料金を仮想通貨で支払うことができる。同町は欧州連合(EU)の中でも、いち早くこうした支払いに対応した自治体の1つとなった。

 クロアチアでは、デジタル決済分野の2020年度取引額が21億ドル(約2200億円)にのぼると予測されている。人口わずか400万強というバルカンの小国ながら、そのうち3万人以上が現役で技術専門職に就いており、フィンテック業界におけるその可能性は、いやでも投資家の目にとまるようになってきた。

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